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第一章 その魔女はコーンスープが苦手
大勝負 開幕
しおりを挟む一晩が経過して、俺の足りない頭で考えた告白大作戦はこうだ。
まず残り三日の内どこかを休みにする。できるなら二日がいいが、おそらくそれは無理だろう。
出勤するとちょうど受付に居たアルカに声をかける。
「随分急だね。当日休みは流石に厳しいんだけど……。明日だけなら休めるっぽいよ?」
やはりか。だが、休みさえ取れればそれでいい。
となれば今日は普通に魔女の元を訪れて、告白の日に合わせて遊ぶ約束を取り付けよう。
そして明日は休みを取って魔石を探し、明後日にマドカちゃんとやらの元へ。こちらは最初にシエルのとこへ来いと言われたから、本来魔女と訓練をしている間の時間をそこに充てるとしよう。
「わかりました。それじゃあ明日は休みをいただきますね」
アルカにそうお願いすると、彼女は不思議そうな顔で言う。
「いいけどさ。何するの?」
何するの?と聞かれたらそれへの返答はもう告白以外の何物でもないのだが。
「……最終決戦、みたいな」
「は?」
ぼかして伝えたら冷たい目を向けれたので、俺はその場を逃げ出した。
だって教えたら絶対弄られるもんな。逃げることは悪手じゃないはずだ。
★
もはや見慣れた通勤路となったこの道。
よく考えたらまだ一週間程度のことだったが、これまでの人生で一番濃い一週間だったな。
一週間で魔女とかかわりを持って、魔女の真実を知って、魔女を好きになって……。
元大神官の知り合いや、プレゼント選びが得意な探偵といった知り合い。
そして恋愛相談に乗ってくれるイケメンの友人。
思い返せば色んな人と関わったものだ。
これまでだけでなくこれからも、こんな濃い一週間はないのかもな。
いや、告白が成功して、一緒に冒険できるようになったらそれもまた違ってくるのか?
「とにかく、最善を尽くせるようにしよう」
魔女の城が見える頃には、既に覚悟はできていた。
いつものようにドアをノックすると、今日も見慣れた白が顔をのぞかせる。
「おはよ。今日も配達ありがとう」
「どういたしまして。あのさ、ちょっと聞いてくれないか?」
なるべく。できる限りの自然体でそう声をかけると、彼女は外に持っていくのであろう菓子やら水筒を用意する手を止めてこちらを向く。
「えっと、三日後に巡回期がくるだろ?白竜に願い事すると叶うっていうし、それに……」
なんだかんだ言って理由付けを始めてしまった俺だったが。
「荷物置いてから話したら?」
なんていう珍しいラトナからの突っ込みにどうにか我を取り戻す。
言われた通り木箱を傍らに置いて、今度こそしっかりと誘うのだ。
「すまん、取り乱した。率直に言おう。三日後の夜、一緒に白竜を見よう」
「え、うん。私も誘おうとしてたけど……。なんか変じゃない?話し方」
何て言って笑う彼女に動揺しかけるが、太ももをつねってその気持ちを誤魔化す。
たしかに口調も声色も違和感はあったが、スルーしてほしいのだ。
「変じゃない。それと、明日は休みで明後日はすぐに帰るんだけど、訓練は休んでてもいいからな?」
「え、来れないの?」
「色々とあってさ……」
「そっか、分かった……。訓練はちゃんとしておくから」
「怪我はしないようにな?」
「うん。色々、頑張ってね?」
ラトナに言われるんなら、そりゃあ頑張れるだろうさ。
来れないことを伝えたときにした悲しそうな顔。その分を取り返せるくらい、当日は驚かせて見せようじゃないか!
その日は、いつもよりも訓練は控えめで、雑談やカードゲームなんかをして過ごした。
ラトナが見せる笑顔や、喜んだり落ち込んだりする仕草。その一つ一つを見るたびに、俺の中で何かが震えていた。
相手を好きだって自覚した時のコミュニケーションが、これほどまでに苦しいものだとは知らなかった。
さて。仕事の終了報告をし終わったのが大体午後六時頃。
そろそろ仕事終わりの労働者たちで街が賑わいだすだろうといった時刻に、前々から目をつけていた冒険者用の道具屋へと向かう。
明日は一日を全てダンジョン攻略に使いたいから、今のうちに傷薬やら光玉やらを買っておきたいのだ。壁に埋まった魔石をほるのにピッケルなんかも持っていこうか。
ずっと入りたかった道具屋だし、憧れていた冒険準備だったから、扉を潜った瞬間テンションは最高潮に達する。来たかったなら勝手に来いと思われるかもしれないが、買う当てもないのに入るのは気が引けたのだ。
「いらっしゃい」
店の奥にあるカウンターからは気だるげな男の声が。
そちらを見れば熊を連想させる獣人族の男が。獣人の男は基本獣寄りだから年齢が見抜きにくいのだが、幾つくらいなのだろう。
今は買うものを見繕うか……。
傷薬として価格安めのポーションを三本。目くらまし用の光玉を五個。ピッケル一本。それらを合わせて4000ミリスで購入した。
「迷宮か?噂だと「リエラの地下迷路」で活性化が起きているようだが、飛行系に対応できるか?」
カウンターで店主はそんな情報をくれる。
リエラの地下迷路と言えばここら辺では有名な方のダンジョンだが、生息するモンスターの大半が翼をもつという厄介な特性のあるダンジョンだ。
当然こちらの武器はエストックだし、魔法も使えないので飛行系モンスターへの対応策はない。
深部まで進まないのなら一体程度はどうとでもなるだろうが、複数はさばけないだろう。
それを伝えると、店主は店の傍らから金属製の筒のようなものを持ってくる。
「なんですか?これ」
そう聞くと彼は得意げな顔で応える。
「開発中の対空武器だ。火薬で細かい金属片を飛ばす道具なんだが。今なら本体二千の弾は十発五百で売ろう」
「威力はどのくらいです?」
「片手くらいならズタボロよ」
細かい金属片が肉を切り裂く様子を想像して鳥肌が立つ。
魔法にもそういった類のものがあるのは知っているが、よく今まで開発されなかったな。
「まあ、反動がえげつないから、連発はお勧めできないがな」
そういうことか……。
でも、魔法のない俺には必要だろう。
「じゃあ、本体と弾を一セットください」
「わかった。二千五百な」
最初こそ気だるげだったが、まんまと新商品まで買わされてしまった。案外商売上手だったな……。
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