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全て失った10歳の日の出来事
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俺は全てを全てを奪われた。だから全てを取り返してやる。
狂戦士(ベルセルク)として。
その為にどれほどの人間を犠牲にし、踏みにじったとしてもだ。
汚らしい部屋だった。部屋にあったのはプラスチックの弁当箱、ペットボトル、カップラーメン、そういったものに、煙草の吸い殻。ストロング系の缶酎ハイ、缶ビールのゴミ。そういったゴミで部屋中が埋め尽くされている。
照明は暗く、パソコンの画面だけが唯一の明かりとなっていた。年中締め切っているカーテンは今が昼なのか夜なのかすらわからなくさせている。
男の名は木村拓也。最近解散した某アイドルグループのアイドルと同姓同名である。漢字違いではあるが、それは丸被りを避ける為の両親の配慮だったのかもしれない。
だから小中学校の時は「キムタク」と呼ばれる事も多かった。小中学校から肥満体質だった彼は「キムタク」ではなく「デブタク」とか、「ブタタク」と言われることも多かったが。「何が、キムタクだ」
木村拓也はそう嘆く。自分はアイドルでも何でもなかった。30代の孤独な中年でしかも無職である。当然独身であり、それどころか友達すらいない、孤独な存在だ。
所謂ニートと言われる存在かもしれないが、ニートには年齢制限がある。34才という上限があるのだ。その34才の年齢制限すらもはや引っかかる年かもしれない。
何年も閉じこもり、誰からも誕生日を祝って貰っていない為、現在では年齢はわからない。 33か、34、か35か。一年や二年違っても何も代わらないだろう、別に。誕生日を祝う人など一人としていないのだから。
高校中退後引きこもりとなった彼は同じような生活をしている。代わったのは酒と煙草を覚え、余計丸々と肥太った事だ。
引きこもりになったきっかけはよくあるいじめが原因であったが、その後立ち直ろうともしなかったのは彼の家庭環境故のものだろう。両親は彼に甘く、また彼自身も自分に甘かった。同じような時間がただ流れていくだけだった。そうしていくうちに社会復帰する為の機会を失い、気力も失っていった。
「さて、トイレ、トイレ」
流石にトイレだけは行かなければならない拓也は立ち上がる。引きこもりの中には更に上、あるいは下のグレードの人間もいて、トイレすらいかずに小便をペットボトルでする存在もいるらしい。大便はどうするんだとも思うが。
「うっ!」
拓也が立ち上がった時の事だった。
「うっ! 胸が! 胸が苦しい!」
恐らくは急性の心不全であったのだろう。
「だっ! だれかっ! だれかっ!」
日頃の不健康と不衛生が祟ったのと、引きこもり家族以外の関係を絶っていたのも影響した。すぐに病院に行ければ助かったかもしれないが、彼には助けてくれるような存在は一人としていなかったのである。
こうして木村拓也は病死した。人間は存外あっさりと死んでしまうものだ。
意識を取り戻した時、俺ーー木村拓也は美人の女、恐らくは俺よりもずっと若いだろう。20代前半の外人の女の乳房を吸っていたのだ。
そしてその様子を見ている、20代と思しき若い男もいた。二人とも身なりがいい。着飾っている事から帰属か王族と察する事が出来た。
そしてもう一人、そんな俺を見ている人物がいた。3才~4才ほどの可愛い女の子である。 女の子は目を輝かせて俺を見ていた。今は原石でもあるが、磨けばすぐに光る宝石だ。将来はとんでもない美少女に成長する事が容易に推察できた。何せ遺伝子が良いのである。美男美女から生まれた彼女が美少女になる事は自明の理だった。
「可愛い……」
「ティファ……この子があなたの弟よ」
「名前はなんていうの?」
「名前はノヴァよ」
「可愛い……ノヴァ」
ティファと呼ばれた少女は俺の頬を撫でる。状況を推察すると、俺は美男美女から生まれ、しかもその二人は貴族か王族だろう。
そして、将来美人になる事が確定の姉までいるという事だった。
少しの時間が経つ。そのうちに状況がもう少しばかりわかってきた事があった。
俺の生まれた家系は国王の家系らしい。ロレンシアという名の国。大国ではなく、小国ではあるが間違いなく王家に生まれたという事は間違いがなかった。
なんという人生イージーモードなのだ。生まれが違うとこうまで人生は違うのか。俺は生まれた時からちやほやされ、美男美女の両親に育てられながら、優しい美少女の姉、ティファと一緒に暮らしていた。魔法の英才教育を受けたり、美少年として生まれた為、よく同級生から告白をされたりしていた。生まれが違うというだけで、こうまで人生は充実した幸せなものなのか、その時俺は第二の人生に充実感を感じていた。
それは俺が10歳になった時の事だった。ティファが13歳になる。
「ノヴァ……一緒にお風呂に入りましょう」
それは毎度の事だった。姉であるティファは弟である風呂に誘った。
13歳といったらまだ子供の年齢である。かつての日本社会ならそうであるが、日本でも大昔、江戸時代とかそういったレベルとなると、普通に10代の前半でも子供を産んで育てたりしていたので十分大人と言える年齢なのかもしれない。時代が代われば定義も異なってくる。
13歳でも色々であり、発育の良いタイプとそうでないタイプがいる。ティファは前者だった。膨らんだ胸はもう大人と言っても差し違えがなく、秘処には薄らとではあるが毛が生えている。既に男からすれば十分に性的対象の範囲内に入る程の魅力を持っていた。
しかし、彼女は俺の内面が成熟した大人のものとは知らない。無邪気な彼女には俺はただの可愛い弟なのだ。その立場を利用し、彼女のあられもない姿を見ていると思うと、俺もまた多少なり罪悪感にはかられる。
「どうしたのノヴァ?」
不思議そうにティファは聞く。
「べ、別に何でもないよ。ティファ姉さん」
「そう、だったらいいけど」
彼女はぷるんぷるんと無邪気に大人のように発育したそのおっぱいを揺らしていた。
「もしかしてノヴァ」
俺の背中を流しつつ、ティファ姉さんは言う。
「私の裸みて、おちんちんおっきくなっちゃったの?」
「ぶっ!?」
俺は思わず唾を吐く。
「な、なんで?」
「男の人は興奮するとおちんちんがおっきくなるって学校で習ったもの」
「……そうなんだ」
ティファ姉さんはそう言う。異世界でも性教育は行われるようだった。
「それで、おっきくなったおちんちんを」
ティファ姉さんは自分の股を指す。
「ここに刺して、白い液体を出されると子供が出来るらしいよ」
ティファ姉さんは言った。
「ねー。ノヴァ」
「……なに?」
「私と子供、作ってみる?」
「ぶっ!?」
再度の唾吐きを俺はした。
「なんてね。冗談だよ。だって姉弟でそういう事しちゃだめらしいよ。なんでかわからないけど。血が濃くなるとか」
異世界でもやはり近親相姦は禁止(タブー)のようだった。危なかった。
本気だったらどうすれば良かったのか。
「子供を作る時はお姉ちゃん以外に好きな人しなさい」
「わかってるよ」
俺はそう言った。
生まれ変わった俺は充実した異世界ライフを送っていた。このまま一生、ここで何事もなく生涯を遂げると思っていた。成長したら国王になり、妃を娶り、子供を作り、国の為に仕事をする、父のような人生を歩むと思っていた。大きくなったら姉であるティファもどこかの国の王子にでも嫁入りにいく事だろう。
そんな幸せな人生を俺は歩めると思っていた。そう、あの時が来るまでは。
ロレンシアは大陸ユグドラシルの西の端っこ、沿岸地帯にある小国だった。その大陸ユグドラシルの真ん中あたりに大国があった。大国の名はドモニア。大国ドモニアは海岸資源の対立を理由にロレンシアに攻め入ってきた。
ロレンシアは小国ではあるが、例えば孤島の所有権を持っている。そうなるとそこから数百キロの範囲は自国の領海だとして主張できる権利があるようだった。
そしてその海域にレアメタルや鉱山、古代に沈没した海賊船、などなど様々な利権が絡んでいるらしい。
大国ドモニアはロレンシアに侵略戦争をしかけてきた。目的はそういった利権を手に入れる事でもあったが、それだけではなかった。彼らは血に飢えた狼のような存在だった。そういった大義名分を元に、侵略戦争をするのが何よりも愉しみだったのである。
それはある日の事だった。
日常が一変する。国に現れた幾多もの兵士が国民を殺害していった。男は殺し、女にはレイプをし始める。奴隷として売買をしやすい子供は捕らえたりもした。
まさしく地獄絵図だ。家は燃やされ、そこら中に死体が散見される。そして悲鳴が響き、銃声も響いた。
大国ドモニアの侵略戦争により作り出された光景である。
侵略の間の手はすぐに王城の方にも押し寄せてきた。
父ーーアレン。それから母エミリアは俺達を逃がそうとする。
「二人とも! 逃げるんだ!」
国王である父アレンはそう言う。
子供である俺達に出来る事など何もない。
「はぁ! はぁ! はぁ!」
二人して逃げる。
「子供が逃げたぞ! 捕まえろ!」
兵士達が追いかけてくる。子供二人の足だ、いつまでも逃げ切れるはずもない。
そんな時だった。
「あっ」
ティファ姉が躓いた。一秒を争うこの事態の中では致命的な事だった。
「子供が転んだぞ! 逃がすな!」
兵士が追ってくる。
「ティファ姉!」
「ノヴァ! 逃げて!」
ティファは叫ぶ。
このままでは共倒れだ。絶対にそうなる。今の俺に何が出来る、子供の俺に。
「ティファ姉! 絶対! 絶対助けにくる!」
俺はそう叫んだ。
その時、俺は知らなかったんだ。前の人生で何も手にした事のない人生だったから。
何かを手にするという事は、何かを失う可能性がある事を示すんだ。
得たものは絶対でもないし、永遠でもない。
俺はその日、この異世界で手に入れたものを全て失った。
不幸中の幸いなのか、ティファ姉を見捨てた事で俺は逃げ延びる事に成功をした。
ティファ姉が囮のような役割を果たしたのだった。
それは俺ノヴァ・ロレンシアとなった俺が10歳の事だった。
狂戦士(ベルセルク)として。
その為にどれほどの人間を犠牲にし、踏みにじったとしてもだ。
汚らしい部屋だった。部屋にあったのはプラスチックの弁当箱、ペットボトル、カップラーメン、そういったものに、煙草の吸い殻。ストロング系の缶酎ハイ、缶ビールのゴミ。そういったゴミで部屋中が埋め尽くされている。
照明は暗く、パソコンの画面だけが唯一の明かりとなっていた。年中締め切っているカーテンは今が昼なのか夜なのかすらわからなくさせている。
男の名は木村拓也。最近解散した某アイドルグループのアイドルと同姓同名である。漢字違いではあるが、それは丸被りを避ける為の両親の配慮だったのかもしれない。
だから小中学校の時は「キムタク」と呼ばれる事も多かった。小中学校から肥満体質だった彼は「キムタク」ではなく「デブタク」とか、「ブタタク」と言われることも多かったが。「何が、キムタクだ」
木村拓也はそう嘆く。自分はアイドルでも何でもなかった。30代の孤独な中年でしかも無職である。当然独身であり、それどころか友達すらいない、孤独な存在だ。
所謂ニートと言われる存在かもしれないが、ニートには年齢制限がある。34才という上限があるのだ。その34才の年齢制限すらもはや引っかかる年かもしれない。
何年も閉じこもり、誰からも誕生日を祝って貰っていない為、現在では年齢はわからない。 33か、34、か35か。一年や二年違っても何も代わらないだろう、別に。誕生日を祝う人など一人としていないのだから。
高校中退後引きこもりとなった彼は同じような生活をしている。代わったのは酒と煙草を覚え、余計丸々と肥太った事だ。
引きこもりになったきっかけはよくあるいじめが原因であったが、その後立ち直ろうともしなかったのは彼の家庭環境故のものだろう。両親は彼に甘く、また彼自身も自分に甘かった。同じような時間がただ流れていくだけだった。そうしていくうちに社会復帰する為の機会を失い、気力も失っていった。
「さて、トイレ、トイレ」
流石にトイレだけは行かなければならない拓也は立ち上がる。引きこもりの中には更に上、あるいは下のグレードの人間もいて、トイレすらいかずに小便をペットボトルでする存在もいるらしい。大便はどうするんだとも思うが。
「うっ!」
拓也が立ち上がった時の事だった。
「うっ! 胸が! 胸が苦しい!」
恐らくは急性の心不全であったのだろう。
「だっ! だれかっ! だれかっ!」
日頃の不健康と不衛生が祟ったのと、引きこもり家族以外の関係を絶っていたのも影響した。すぐに病院に行ければ助かったかもしれないが、彼には助けてくれるような存在は一人としていなかったのである。
こうして木村拓也は病死した。人間は存外あっさりと死んでしまうものだ。
意識を取り戻した時、俺ーー木村拓也は美人の女、恐らくは俺よりもずっと若いだろう。20代前半の外人の女の乳房を吸っていたのだ。
そしてその様子を見ている、20代と思しき若い男もいた。二人とも身なりがいい。着飾っている事から帰属か王族と察する事が出来た。
そしてもう一人、そんな俺を見ている人物がいた。3才~4才ほどの可愛い女の子である。 女の子は目を輝かせて俺を見ていた。今は原石でもあるが、磨けばすぐに光る宝石だ。将来はとんでもない美少女に成長する事が容易に推察できた。何せ遺伝子が良いのである。美男美女から生まれた彼女が美少女になる事は自明の理だった。
「可愛い……」
「ティファ……この子があなたの弟よ」
「名前はなんていうの?」
「名前はノヴァよ」
「可愛い……ノヴァ」
ティファと呼ばれた少女は俺の頬を撫でる。状況を推察すると、俺は美男美女から生まれ、しかもその二人は貴族か王族だろう。
そして、将来美人になる事が確定の姉までいるという事だった。
少しの時間が経つ。そのうちに状況がもう少しばかりわかってきた事があった。
俺の生まれた家系は国王の家系らしい。ロレンシアという名の国。大国ではなく、小国ではあるが間違いなく王家に生まれたという事は間違いがなかった。
なんという人生イージーモードなのだ。生まれが違うとこうまで人生は違うのか。俺は生まれた時からちやほやされ、美男美女の両親に育てられながら、優しい美少女の姉、ティファと一緒に暮らしていた。魔法の英才教育を受けたり、美少年として生まれた為、よく同級生から告白をされたりしていた。生まれが違うというだけで、こうまで人生は充実した幸せなものなのか、その時俺は第二の人生に充実感を感じていた。
それは俺が10歳になった時の事だった。ティファが13歳になる。
「ノヴァ……一緒にお風呂に入りましょう」
それは毎度の事だった。姉であるティファは弟である風呂に誘った。
13歳といったらまだ子供の年齢である。かつての日本社会ならそうであるが、日本でも大昔、江戸時代とかそういったレベルとなると、普通に10代の前半でも子供を産んで育てたりしていたので十分大人と言える年齢なのかもしれない。時代が代われば定義も異なってくる。
13歳でも色々であり、発育の良いタイプとそうでないタイプがいる。ティファは前者だった。膨らんだ胸はもう大人と言っても差し違えがなく、秘処には薄らとではあるが毛が生えている。既に男からすれば十分に性的対象の範囲内に入る程の魅力を持っていた。
しかし、彼女は俺の内面が成熟した大人のものとは知らない。無邪気な彼女には俺はただの可愛い弟なのだ。その立場を利用し、彼女のあられもない姿を見ていると思うと、俺もまた多少なり罪悪感にはかられる。
「どうしたのノヴァ?」
不思議そうにティファは聞く。
「べ、別に何でもないよ。ティファ姉さん」
「そう、だったらいいけど」
彼女はぷるんぷるんと無邪気に大人のように発育したそのおっぱいを揺らしていた。
「もしかしてノヴァ」
俺の背中を流しつつ、ティファ姉さんは言う。
「私の裸みて、おちんちんおっきくなっちゃったの?」
「ぶっ!?」
俺は思わず唾を吐く。
「な、なんで?」
「男の人は興奮するとおちんちんがおっきくなるって学校で習ったもの」
「……そうなんだ」
ティファ姉さんはそう言う。異世界でも性教育は行われるようだった。
「それで、おっきくなったおちんちんを」
ティファ姉さんは自分の股を指す。
「ここに刺して、白い液体を出されると子供が出来るらしいよ」
ティファ姉さんは言った。
「ねー。ノヴァ」
「……なに?」
「私と子供、作ってみる?」
「ぶっ!?」
再度の唾吐きを俺はした。
「なんてね。冗談だよ。だって姉弟でそういう事しちゃだめらしいよ。なんでかわからないけど。血が濃くなるとか」
異世界でもやはり近親相姦は禁止(タブー)のようだった。危なかった。
本気だったらどうすれば良かったのか。
「子供を作る時はお姉ちゃん以外に好きな人しなさい」
「わかってるよ」
俺はそう言った。
生まれ変わった俺は充実した異世界ライフを送っていた。このまま一生、ここで何事もなく生涯を遂げると思っていた。成長したら国王になり、妃を娶り、子供を作り、国の為に仕事をする、父のような人生を歩むと思っていた。大きくなったら姉であるティファもどこかの国の王子にでも嫁入りにいく事だろう。
そんな幸せな人生を俺は歩めると思っていた。そう、あの時が来るまでは。
ロレンシアは大陸ユグドラシルの西の端っこ、沿岸地帯にある小国だった。その大陸ユグドラシルの真ん中あたりに大国があった。大国の名はドモニア。大国ドモニアは海岸資源の対立を理由にロレンシアに攻め入ってきた。
ロレンシアは小国ではあるが、例えば孤島の所有権を持っている。そうなるとそこから数百キロの範囲は自国の領海だとして主張できる権利があるようだった。
そしてその海域にレアメタルや鉱山、古代に沈没した海賊船、などなど様々な利権が絡んでいるらしい。
大国ドモニアはロレンシアに侵略戦争をしかけてきた。目的はそういった利権を手に入れる事でもあったが、それだけではなかった。彼らは血に飢えた狼のような存在だった。そういった大義名分を元に、侵略戦争をするのが何よりも愉しみだったのである。
それはある日の事だった。
日常が一変する。国に現れた幾多もの兵士が国民を殺害していった。男は殺し、女にはレイプをし始める。奴隷として売買をしやすい子供は捕らえたりもした。
まさしく地獄絵図だ。家は燃やされ、そこら中に死体が散見される。そして悲鳴が響き、銃声も響いた。
大国ドモニアの侵略戦争により作り出された光景である。
侵略の間の手はすぐに王城の方にも押し寄せてきた。
父ーーアレン。それから母エミリアは俺達を逃がそうとする。
「二人とも! 逃げるんだ!」
国王である父アレンはそう言う。
子供である俺達に出来る事など何もない。
「はぁ! はぁ! はぁ!」
二人して逃げる。
「子供が逃げたぞ! 捕まえろ!」
兵士達が追いかけてくる。子供二人の足だ、いつまでも逃げ切れるはずもない。
そんな時だった。
「あっ」
ティファ姉が躓いた。一秒を争うこの事態の中では致命的な事だった。
「子供が転んだぞ! 逃がすな!」
兵士が追ってくる。
「ティファ姉!」
「ノヴァ! 逃げて!」
ティファは叫ぶ。
このままでは共倒れだ。絶対にそうなる。今の俺に何が出来る、子供の俺に。
「ティファ姉! 絶対! 絶対助けにくる!」
俺はそう叫んだ。
その時、俺は知らなかったんだ。前の人生で何も手にした事のない人生だったから。
何かを手にするという事は、何かを失う可能性がある事を示すんだ。
得たものは絶対でもないし、永遠でもない。
俺はその日、この異世界で手に入れたものを全て失った。
不幸中の幸いなのか、ティファ姉を見捨てた事で俺は逃げ延びる事に成功をした。
ティファ姉が囮のような役割を果たしたのだった。
それは俺ノヴァ・ロレンシアとなった俺が10歳の事だった。
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