レベル0の最強剣士~レベルが上がらないスキルを持つ俺、裏ダンジョンに捨てられたが、裏技を発見し気が付いたら世界最強になっていた。

つくも/九十九弐式

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第48話 剣神武闘会 当日

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 その日、フレースヴェルグの闘技場(コロシアム)には多くの人々が集まっていた。

 剣神武闘会は闘技場(コロシアム)で行われる。その日の朝早い時間に参加者の受付をし、すぐにトーナメント表が作られるのだ。

 試合開始は正午を予定している。トーナメントの実施は二日間を予定しており、進行状況によっては延期もありうるそうだ。

「凄い人だな……」

 闘技場(コロシアム)の受付嬢には大勢の人々がいた。皆、闘技者である。そこには数百名程の猛者がいた。雰囲気でわかるのだ。筋肉隆々だったり、大剣を背負っていたり、頬に傷がある者もいる。血の匂いがしていた。

いかにも戦士といった感じの男達がそこに集っていたのである。少数の女性もいたので、男限定というけでもなかったが。

 女性だからと言って闘えないわけではない。確かに筋力などでは男性に及ばない事は多いが、その差を『スキル』で覆せなくもない。LVやステータスの差を覆せるだけの可能性がスキルにはあった。

 闘技者とは別に多くの観戦者がこのコロシアムには来場する予定らしい。確かにこのイベントが国にとって重要な出来事である事は理解できた。それだけ国の収益になる。お金が落とされるのだ。

「うむ、凄い人数だな……」

 バハムートもまた感心していた。ダンジョンに籠っていたバハムートにとっては何気ない日常でも新鮮な事であった。



「……そういえば、バハムートは参加しないのか?」

「我は剣など好かぬ。自分の肉体以上に頼りになる武器はこの世に存在しておらん。それに『剣神』などという肩書は似合わぬ。どこの世界に素手で闘って勝って、『剣神』になる者がおろうか。それに大衆の元、真なる姿を晒すのも問題であろうて」

「……そうか、それもそうだな」

 バハムートの言っている事ももっともであった。

 ――と、その時であった。闘技場の受付で最も顔を合わせたくない人物と姿を現す。そういえばそうだ、クレアも言っていた。『エドも剣神武闘会に出場する予定になっている』と。

「おいおい! ……マジかよっ。他人の空似かと思ったけど、本当にあの兄貴かよ?」

 ソルはこの地上で最も顔を合わせたくない人物と顔を合わせる事になる。顔を合わせたのはあのスキル継承の儀以降、顔を合わせていない義弟のエドである。エドはユグドラシル家の使用人を何人も仕えさせていた。

 その扱いはまるでどこぞの国の王子のようであった。

「エドか……」

「まさか、兄貴と顔を合わせる事になるとは思ってもなかったぜ。てっきり俺は兄貴は野たれ死んでると思ってたからよ。クックック」

「なんだ? ……こやつは?」

 バハムートはエドを睨む。主人(マスター)であるソルを馬鹿にするエドの態度に、バハムートも気分を悪くしているようだった。

「義弟のエドだ。弟を授からなかったから、父が養子に貰ったんだ。俺に何かあった時の為の予備(スペア)にしていたんだと思う。父からすれば」

 そして、実際にその『何か』は起きてしまったというわけだ。この世界の時間軸でいうところの半年前、スキル継承の儀の際に。

「ふーむ……そうか。義弟か……。そうであったのならばこの場で食ってしまうのは些か問題か」

 誰が相手であろうと、この場で食ってしまうのは問題だろう。この場でなくても問題かもしれないが。

「どうしたんだよ? 兄貴。どうやって今まで生き延びてきたんだ? 乞食でもやってきたのか?」

「エド、なんだその口の利き方は。久しぶりに会った義兄に対する口の利き方じゃないだろ」

「黙ってろよ。無能兄貴。今更、兄貴面するんじゃねぇよ! あのスキル継承の儀の時、『レベル0』なんて外れスキルを授かったのが運の尽きだったな。今じゃ、この俺がユグドラシル家の次期当主なんだよ。お前はもう、家を追われた身だ。立場が違うんだよ、立場が。一応は兄弟かもしれねぇけどよ。それだけなんだよ」

 エドは完全にソルの事を見下していた。

「どっちの立場が上で下かなんて、わざわざ言うまでの事もねぇだろ? え? 『レベル0』の無能野郎がよ」

「こやつ……調子に乗るのもいい加減にせいよ! 今すぐその腹に風穴を空けてくれるわ!」

「よせ、騒ぎを起こすなバハムート」

 ソルはバハムートを制した。ソルは冷静だった。今ここで傷害行為でも起こしたら、剣神武闘会に出場できない可能性があった。それではクレアの願いを叶えられない。

 場外で事を起こすわけにはいかなかったのだ。決着をつけるのは闘技場の上でつければいい。

「それで、まさか。兄貴はこの剣神武闘会に出るつもりなのか? それとも観戦するつもりが、早く来すぎちまったってところか? どっちなんだよ?」

「勿論、俺は剣神武闘会に出るつもりだ」

「へへへっ。マジかよ。これは面白い事を聞いたぜ。できれば兄貴と当たりたいもんだな。それも一回戦によ。それ以上になると、兄貴はボロ負けして、残ってないだろうからよ! くっはっは!」

「ぐっ! この小僧めっ!」

 バハムートは憤るがソルの事情を汲み取り、何とか堪えていた。

「それじゃあなっ。兄貴。せいぜい、死なないように頑張れよっ」

 エドはそう言い残し去っていった。

「……むかつく奴だの。あいつは」

「そうだな……その通りだ。だが、あいつには固有スキルである『久遠の剣聖』がある。この半年間どれほど実力を磨いてきたかはわからないが、侮れない相手ではあるはずだ」

 ソルは分析する。

「ふむ……確かに人間にしてはまあまあ、やる方だと我も感じていた。……他にやりそうに感じるのは、あそこの女と――」

 遠くには仮面をつけ、マントを着た少女がいた。腰には剣を携えている。

(……というか、あれはクレアだな)

 認識を誤魔化す魔道具(アーティファクト)を身に着けているようだが、それでも幼馴染であるソルの感覚は誤魔化しきれなかった。恋情などには疎いのだが、こういう時は聡かったりする。

 策は二つに増えたと言っていたのは、やはり自分の手でエドの優勝を邪魔するつもりだったのだろう。

「それから……あそこの男くらいのものだな」

 バハムートは指を指す。そこには銀髪の男がいた。色白の美青年だ。女性人気が高そうな剣士だった。

「……それくらいのものだ。後は似たり寄ったりの雑魚ばかりだ」

「へっ! さっきから随分と舐めた口を聞いてくれるじゃねぇか! そこの嬢ちゃんよ!」

 大男の戦士が現れた。筋肉隆々だ。体重はゆうに200キロを超えている事だろう。

「なんだ? 貴様は?」

「へっ! 俺の事を知らねぇのか! 俺はこのフレースヴェルグ、いや! この大陸『アースガルズ』でも最強の戦士である! ロドリゲス様だ!」

 大男は名乗った。ロドリゲスというらしい。

「ふむ……それがどうした?」

「似たり寄ったりの雑魚だと!? 優勝するのはこの俺様——ロドリゲスに決まっているんだよ! 坊主がこの大会に出るんだろ? もし俺様と当たったらコテンパンにしてやるから、見ていろよ。ケッケッケ」

 ロドリゲスはその場を去っていった。

「……あいつは雑魚だな。話にならん」

「よせ、バハムート、蒸し返すな」

「それではこれより受付を開始します。一列に並んでください」

 どうやら受付の時間が来たようだ。
 武闘会関係者に言われ、闘技者は一列に並び自分の順番を待ち始めた。順番が来るのを待ち、注意事項を説明された末に記名をさせられる。

 この後、10時頃にトーナメント表が掲示される。今は早朝6時頃だから、大体4時間後の事だ。それから2時間後の正午から第一試合が始まるというスケジュールだった。

 いよいよ、闘いの火蓋が切られる事となる。受付の段階で既に、苛烈な闘いの予感がしていた。

  トーナメント発表の後、ついに剣士達が火花を散らす事になる。
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