レベル0の最強剣士~レベルが上がらないスキルを持つ俺、裏ダンジョンに捨てられたが、裏技を発見し気が付いたら世界最強になっていた。

つくも/九十九弐式

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第65話  手のひら返し

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「……もはや認めるより他にない。わしの間違いに」

「ん?」

 ソルの父であるカイがステージに身を乗り出してきた。何かに取りつかれたような目をしている。その目にはもはや、エドの事など眼中になかった。

「ソルよ! 見事な剣技であった! そなたの剣技はエドワードを上回っている!」

「お、義父(おやじ)……」

 エドは信じられないものを見ているかのようだった。

「わしの間違いを全面的に認めよう! ソルよ! 貴様こそ我がユグドラシル家を受け継ぐに相応しい! 流石は我が息子だ! 元々、養子(スペア)など必要なかった!  ソルよ! 我がユグドラシル家に戻ってくる事を許す! そなたこそ家督を継ぐに相応しい逸材だ!」

「な、何を言っているんだよ! 義父(おやじ)……家督を継ぐのは俺じゃ、そんな……『レベル0』なんて外れスキル持ちに、家督を継がせるのかよ。そんなんじゃ話が違うじゃないか!」

 エドは愕然としていた。

「黙れ! この無能が! 貴様の剣をソルは凌駕しておる! そんな事もわからないのか! 貴様のような無能に継がせる家督などない! ユグドラシル家を受け継ぐのに相応しいのはソルだ! ソルよ! わしの手を取れ! 父の手を! もはや養子(エドワード)などいらん! わしには貴様さえいればよいのだ!」

 この期に及んで、父――カイは手のひらを返してきた。エドワードを見捨てて、ソルを世継ぎにしようと企んだのである。露骨な手のひら返しだった。

 ――だが、そんな手のひら返しを認めるソルではなかった。

「お父様……あの時、俺を裏ダンジョンと呼ばれる『ゲヘナ』に捨てた事は今ではある意味感謝しています。あの頃の弱かった俺……何もなかった俺に比べて、ダンジョンで生き残っていく中で、少しは強くなれた気がします」

 周囲からすれば『少し』どころではないと言いたかった。

「ですが、それでもあなたは俺を無能だと判断して、抹殺しようとした事実は俺には許せません。あなたは息子である俺を、外れスキルを持った無能だと。ユグドラシル家を継ぐに相応しくない人間だと。利用価値がないと判断して処分しようとしたんです。その行いは当主としては正しかったのかもしれませんが、血の通った父としてとても正しい事だとは思えません。あなたのやった事は間違っています!」

 ソルは熱く語った。実父に対して。そしてその実父がした行いに対して。流石に温厚であまり感情を表に出さないソルでも怒りのような感情を表に出さざるを得なかった。その言葉は震えていた。怒りの感情が滲み出ていた。

「ぜ、全面的にわしの非を認めよう! だ、だがなっ! ソル! こんな養子(スペア)より貴様の方がユグドラシル家に必要なのは事実なのだ! い、いや、世界がお前を必要としている! ど、どうかソルよ! 戻ってきてはくれぬかっ! この父の下に!」

 それでも尚、カイはしつこく食い下がる。

「戻れません、お父様……俺はあなたの下には」

「な、なんと! くっ……なぜ戻らぬ! なぜ戻らぬのだ! ソル!」

「お、俺みたいな養子(スペア)は必要ないだと……俺が兄貴に劣るっていうのか! この『レベル0』の無能相手に! 俺が劣るって!」

 エドは怒りのまま振舞った。

「くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 エドは素手であるにも関わらず、ソルに殴り掛かってきた。無謀だ。

「ぐおっ!」

 ソルはエドの直情的な拳に対して、カウンターの要領で拳を合わせた。エドが吹き飛んだ。

 そして昏倒した。あっさりと勝負は終わったのだ。

『決まったぁ! なんと、最後は拳闘(ボクシング)で勝負が決着しました! エドワード選手の意識がなくなった事でソル選手の勝利が決まりました! 決勝に進出するのはソル選手になります!』

 ソルはステージを降りていく。父であるカイはソルの信用だけでなく、エドの信用も失った。ソルを呼び戻すことに失敗したカイは茫然としていた様子だ。

「……ふむ。勝ったな。お疲れであった。主人(マスター)よ」

「ああ……なんとかな」

「これで残るは決勝戦だけだな」

「出なきゃならないのかな? ……一応目的は達成できた」

 ソルの目的のひとつ。それはエドの優勝を邪魔する事だ。それはクレアの願いでもあった。ソルの闘いをクレアは見ていただろう。これでクレアがエドに好き放題される心配はなくなったのだ。

「馬鹿者。優勝すれば賞金も手に入るし、あの聖剣だって手に入る。その上、『剣神』の称号だって。そなたに欲はないのか?」

 欲がないわけじゃない。それに多少の資金が必要なのは今までの事で身に染みた。これからもクレアの世話になるわけにもいかない。ヒモのような依存生活をいつまでも続けるわけにもいかないのだ。

 その為にはやはり資金はいる。多少なり。

「それはそうだけど、準優勝ってだけでもそれなりの賞金は貰えるはずだよ。それで十分じゃないか」

「欲のない奴だの……それに優勝する目的はそれだけではない。あの銀髪の男がいるだろう?」

「銀髪の男?」

 予選から要注意だと見ていた、銀髪の剣士——確か、名をレイと言ったか。

「奴から良くない雰囲気が出ている。あやつ、普通の人間ではないぞ。何か良からぬ事を考えているかもしれない。奴の手に聖剣レーヴァテインが渡ったら危険だ。奴は災いを起こすかもしれぬ」

「……そうなのか」

 バハムートが言うならばそうなのだろう。世界の平和を乱す者。世界に危機を巻き起こす者。そういった存在がバハムートにはわかるそうだ。

「だったら、あのレイって剣士に優勝させるわけにもいかないよな」

「うむ。その意気だ。奴は恐らく決勝まで上がってくる。決勝で相まみえる事となろう」

 バハムートはそう言っていた。そしてその通り、銀髪剣士レイは準決勝を勝利し、決勝にまで上がってきたのである。

 決勝戦の相手は決まった。決勝戦は今まで以上の闘い以上に波乱の予感がしていた。

 そしてついに決勝戦が行われる事となる。
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