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第72話 クレアの申し出
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「一体、どうされたのですか? 国王陛下」
場所を応接室に移し、ソル達は国王から話を聞く事になったのである。
「うむ……実はだな。先ほど、使いの者から伝聞があっての」
「何かあったのですか?」
「それはソル殿の実家でもあるユグドラシル家で起こった出来事についてであった」
「どうかしたのですか? 僕の実家であるユグドラシル家に何かあったのですか?」
父の手によって、追い出されたとはいえ、ユグドラシル家は自分にとっての実家であったのは間違いない。他人事ではないのだ。それなりに思い入れがある。その実家に何かあったのかと思うと、気が気ではなかった。
「心して聞いてくれ。理由はわからないが、ソル殿の弟のエドワード殿が乱心を起こしたらしい。彼の手によって、ユグドラシル家の人々は殺害されていったそうだ」
「……な、なんですって? エドワードがどうして。という事はつまり、お父様も」
ソルは表情を曇らせた。確かに自分を捨てた憎き相手とはいえ、血の通った父でもあるのだ。その父がエドワードに殺されたと聞けば、当然のように少なくないショックを受ける。
「ああ……そのようだ。なぜだか、わからぬ。なぜ、エドワード殿がそのような事をしたのか、理解に苦しむ」
「ふむ……あの時、主人(マスター)と対戦した弟か。流石に突然、人を殺すような人間とは思えなんだな。確かに嫌味な印象を受けたが、快楽殺人者だったというわけでもなかろうて。怒りに身を任せた突発的な殺人だったとしても、殺すのはせいぜい一人程度だろう。皆殺しにするなど、余程強い殺意がなければやらぬ事だ」
バハムートは語りだす。
「何かわかるのか? バハムート?」
「大会の決勝で魔族がいたであろう。魔人の男だ。あの男が怪しかろうて。主人(マスター)に敗北を喫したあの弟は相当に兄を憎んだであろう。殺したい程に。そういった負の感情を持った人間は利用しやすい。そやつは悪魔に魅入られたのだ。そして悪魔に魂を売った。そんなところだろうな」
「エドが……そんな事を」
「恐らくではあるが、あの弟は再びそなたの目の前に姿を現す。覚悟しておくがいい。前のようにはいかないだろう。悪魔に魂を売った代価として、相応の力を得ているだろうからな」
ユグドラシル家の人々をエドが皆殺しにしたというニュースに、ソルはショックを受けていた。だが、落ち込んでばかりもいられなかった。エドは完全に敵になったのだ。いつ襲撃してくるかもわからない。もしかしたら今、この瞬間にでも襲ってくるかもしれない。
もはやおちおち寝ている事すら困難だ。闘技場での試合などではない。今度エドと闘う機会があったとしたら、その時行われるのは本当の殺し合いだ。ルールなどない。どんな卑怯な手だって相手は使ってくるだろう。それが戦場というもの。本気の殺し合いだ。
「あの魔族は天界に攻め入ると言っていた。その次は人間種だと。人間は弱いからの……目の敵にしている天使を滅ぼしたら、次は人間というわけだ。そして、そやつの口ぶりからすればその時はそう遠くはない様子」
「そんな事はさせない。させるわけにはいかない。そんな事、絶対に」
ソルは心に強く誓った。
「うむ……だが、具体的にどうするか、ではあるが。まずは情報を集めようかの。魔族が何を企んでいるかを調べなければどうしたらいいかもわからない。天使を滅ぼすとはいっても、天使はそれほど脆弱な種族ではない。魔族に対抗しうる位には強力な種族だ。そして攻め入ろうにも天界は天の上にある。空を飛ぶか、世界樹を登らない限りはたどり着く事ができない難所にある。その天界にいる天使をどうやって滅ぼすというのだろうか」
バハムートは考えていた。ただの大飯ぐらいだとしか最近思っていなかったが、珍しく理知的な事を言っているバハムートにソルは驚いた。やはりバハムートは戦闘面以外でもいなくてはならない人材だと認識した。
「わかった……当面は情報収集をするんだな」
「うむ……そうしようかの」
そうなると居ても立ってもいられなくなった。
「ま、待て。行くのか、ソル殿よ」
「はい……お世話になりました。国王陛下……それじゃあ、クレア、元気でな」
ソルとバハムートは王城を出ようとする。
「待ってっ!」
しかし、ソルはクレアに呼び止められた。
「クレア……どうしたんだ?」
「私も連れて行って」
「なんで王女であるクレアが……危険だ。これから行われるのは剣神武闘会のようなルールのある闘いじゃない。本物の戦場なんだ。命の安全なんて保障できないんだぞ。そんな戦場に王女であるクレアがなぜ」
「そんな事はわかってる……だけど、私もソルの力になりたいの。その為に私はきっと、ソルからこの聖剣レーヴァテインを授かったんだと思う。私の剣はただの稽古事じゃない。こういった時の為に振るう為にあると思う。世界の為に、私の剣はきっと力になる。だから、行かせて、お父様」
「しかし、クレア……お前は王女だ。そして、私の娘だ。そんな危険なところに、父として行かせられるわけがないだろう」
しかし、父は抵抗した。
「お、お父様っ! どうしても行かせて欲しいの……」
「ダメだ。クレア。認められない。国王として、何より父として。娘を命の危機にさらすなどできるものか」
国王は抵抗した。
「わかったわ……お父様」
クレアはすんなりと引き下がった。それはもう呆気ない程に。違和感を覚えるソルであったが、バハムートと二人で王城を出る事にしたのだ。
そしてクレアとはあっさりする程、すぐに再会を果たすことになる。
場所を応接室に移し、ソル達は国王から話を聞く事になったのである。
「うむ……実はだな。先ほど、使いの者から伝聞があっての」
「何かあったのですか?」
「それはソル殿の実家でもあるユグドラシル家で起こった出来事についてであった」
「どうかしたのですか? 僕の実家であるユグドラシル家に何かあったのですか?」
父の手によって、追い出されたとはいえ、ユグドラシル家は自分にとっての実家であったのは間違いない。他人事ではないのだ。それなりに思い入れがある。その実家に何かあったのかと思うと、気が気ではなかった。
「心して聞いてくれ。理由はわからないが、ソル殿の弟のエドワード殿が乱心を起こしたらしい。彼の手によって、ユグドラシル家の人々は殺害されていったそうだ」
「……な、なんですって? エドワードがどうして。という事はつまり、お父様も」
ソルは表情を曇らせた。確かに自分を捨てた憎き相手とはいえ、血の通った父でもあるのだ。その父がエドワードに殺されたと聞けば、当然のように少なくないショックを受ける。
「ああ……そのようだ。なぜだか、わからぬ。なぜ、エドワード殿がそのような事をしたのか、理解に苦しむ」
「ふむ……あの時、主人(マスター)と対戦した弟か。流石に突然、人を殺すような人間とは思えなんだな。確かに嫌味な印象を受けたが、快楽殺人者だったというわけでもなかろうて。怒りに身を任せた突発的な殺人だったとしても、殺すのはせいぜい一人程度だろう。皆殺しにするなど、余程強い殺意がなければやらぬ事だ」
バハムートは語りだす。
「何かわかるのか? バハムート?」
「大会の決勝で魔族がいたであろう。魔人の男だ。あの男が怪しかろうて。主人(マスター)に敗北を喫したあの弟は相当に兄を憎んだであろう。殺したい程に。そういった負の感情を持った人間は利用しやすい。そやつは悪魔に魅入られたのだ。そして悪魔に魂を売った。そんなところだろうな」
「エドが……そんな事を」
「恐らくではあるが、あの弟は再びそなたの目の前に姿を現す。覚悟しておくがいい。前のようにはいかないだろう。悪魔に魂を売った代価として、相応の力を得ているだろうからな」
ユグドラシル家の人々をエドが皆殺しにしたというニュースに、ソルはショックを受けていた。だが、落ち込んでばかりもいられなかった。エドは完全に敵になったのだ。いつ襲撃してくるかもわからない。もしかしたら今、この瞬間にでも襲ってくるかもしれない。
もはやおちおち寝ている事すら困難だ。闘技場での試合などではない。今度エドと闘う機会があったとしたら、その時行われるのは本当の殺し合いだ。ルールなどない。どんな卑怯な手だって相手は使ってくるだろう。それが戦場というもの。本気の殺し合いだ。
「あの魔族は天界に攻め入ると言っていた。その次は人間種だと。人間は弱いからの……目の敵にしている天使を滅ぼしたら、次は人間というわけだ。そして、そやつの口ぶりからすればその時はそう遠くはない様子」
「そんな事はさせない。させるわけにはいかない。そんな事、絶対に」
ソルは心に強く誓った。
「うむ……だが、具体的にどうするか、ではあるが。まずは情報を集めようかの。魔族が何を企んでいるかを調べなければどうしたらいいかもわからない。天使を滅ぼすとはいっても、天使はそれほど脆弱な種族ではない。魔族に対抗しうる位には強力な種族だ。そして攻め入ろうにも天界は天の上にある。空を飛ぶか、世界樹を登らない限りはたどり着く事ができない難所にある。その天界にいる天使をどうやって滅ぼすというのだろうか」
バハムートは考えていた。ただの大飯ぐらいだとしか最近思っていなかったが、珍しく理知的な事を言っているバハムートにソルは驚いた。やはりバハムートは戦闘面以外でもいなくてはならない人材だと認識した。
「わかった……当面は情報収集をするんだな」
「うむ……そうしようかの」
そうなると居ても立ってもいられなくなった。
「ま、待て。行くのか、ソル殿よ」
「はい……お世話になりました。国王陛下……それじゃあ、クレア、元気でな」
ソルとバハムートは王城を出ようとする。
「待ってっ!」
しかし、ソルはクレアに呼び止められた。
「クレア……どうしたんだ?」
「私も連れて行って」
「なんで王女であるクレアが……危険だ。これから行われるのは剣神武闘会のようなルールのある闘いじゃない。本物の戦場なんだ。命の安全なんて保障できないんだぞ。そんな戦場に王女であるクレアがなぜ」
「そんな事はわかってる……だけど、私もソルの力になりたいの。その為に私はきっと、ソルからこの聖剣レーヴァテインを授かったんだと思う。私の剣はただの稽古事じゃない。こういった時の為に振るう為にあると思う。世界の為に、私の剣はきっと力になる。だから、行かせて、お父様」
「しかし、クレア……お前は王女だ。そして、私の娘だ。そんな危険なところに、父として行かせられるわけがないだろう」
しかし、父は抵抗した。
「お、お父様っ! どうしても行かせて欲しいの……」
「ダメだ。クレア。認められない。国王として、何より父として。娘を命の危機にさらすなどできるものか」
国王は抵抗した。
「わかったわ……お父様」
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