外れスキル【建築】持ちの俺は実家を追放される。辺境で家作りをしていただけなのに、魔王城よりもすごい最強の帝国が出来上がってた

つくも/九十九弐式

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第11話 ミスリル鋼で家を作る

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 北の辺境の荒野に戻った俺達は早速、手に入れたミスリル鉱石を利用して、新しい家を作る事にしたのだ。

「……一体、今度の家はどんな風になるのでしょうか。私、ドキドキしてワクワクします」

 リノアは目を輝かせていた。まるで童女のように。実際の年齢がいくつか知らないが……女性に年齢を聞くのは禁忌(タブー)だ。相手がエルフであるのならば尚更だ。

「待っていろ……今、下準備をするから」

 鋼材というのは……多少複雑なのだ。木材に比べて。木材はそのまま加工し、家を建てる事ができるが。鋼材というのは鉱石から精製しなければならない。ただの鉱石には普通の石が混じっていて、純度が低いのだ。

 俺は【建築(ビルド)】スキルで精製器を作り出す。鉱石を鋼材に変える事ができる巨大な装置のようなものである。

「グラン様……その装置は何なのでしょうか?」

「これは鉱石を鋼材に変える事ができる……特殊な装置だ」

「特殊な装置ですか?」

「まあ、いいから見てろって……」

 俺が精製器に鉱石を入れると、勝手に鋼材が出来上がった。鉱石が鋼材へと変換されたのだ。

「できたぞ……これがミスリル鋼だ!」

 俺は変換されたミスリル鋼材を手に取り、強度や純度を確かめる。問題ない……これなら丈夫な家を建てる事が十分に可能なはずだ。

======================================
 入手アイテム

アイテム名。ミスリル鋼材。×10、鋼よりも硬く、軽い特殊鉄鋼であるミスリル鋼材。建材の他、様々な装備品に使用可能。
======================================

 当然、俺達はこれからこのミスリル鉄鋼を鋼材として利用する。俺は鍛冶師ではない為、武器や防具を作る事は出来ないのだ。やはり人間、出来る事と出来ない事がある。万能ではないのだ。決してこの【建築(ビルド)】スキルは……。

 俺はそのミスリル鋼材を『ビルドカッター』で切断し、加工作業をし始めた。

 そして骨組みができると、建築作業を始めたのである。

「よし! これから建築作業を始めるぞ! 離れて見ていてくれ! リノア!」

「は、はい! わかりました!」

 俺は『ビルドハンマー』を振りかざす。下準備が整い、ついには本格的な建築作業が始まったのだ。

キンコンカンコン!  キンコンカンコン!  キンコンカンコン!  キンコンカンコン!  キンコンカンコン!  キンコンカンコン!  キンコンカンコン!
  キンコンカンコン!  キンコンカンコン!  キンコンカンコン!  キンコンカンコン! キンコンカンコン!  キンコンカンコン!  キンコンカンコン!  キンコンカンコン!  キンコンカンコン!  キンコンカンコン!  キンコンカンコン! キンコンカンコン!  キンコンカンコン!  キンコンカンコン!
  
『ビルドハンマー』の音が鳴り続ける。作業は実に二晩にも渡った。不眠不休の作業の末に、三日目の朝方にはやっとの事で、新しい俺達の家が出来上がる事となる。

 朝日が差し込んでくる。

「できた……」

 三日に渡る、不眠不休の作業……いや、多少は休んではいたが寝ていなかったのは確かだ……にも関わらず、不思議と疲労感はなかった。

 達成感と、それに伴いハイテンションになっているからであろう。そういう時は疲れが吹き飛んでいるのだ。実際のところ疲れはその後、ドット出てくるので、吹き飛んでいるのではなく、誤魔化しているという方が正しいかもしれないが……。

「うっ……ううっ……………………………………………………………………………」

 リノアもまた、付きっきりで俺のケアをしていてくれていたが、俺が眠らせた。家がない為、仕方なく野宿にはなったが……それでもこの前のように台風が襲ってくるわけではないのが不幸中の幸いであった。

「起きろ……リノア。できたぞ。寝るなら家の中で寝てくれ……」

「は……はい。お、おはようございます……グラン様。むにゃ、むにゃ」

 寝ぼけ眼を擦りつつ、リノアは目を覚ました。

「こ、これは、これが私達の新しい住まいなのですか!」

 起きるなり、リノアは目を丸くした。輝くような鋼で出来た、新しい住まい。それがこの新しい家。ミスリルの家(ホーム)だ。我ながら素晴らしい出来である。

「大きさは前と同じくらいだけど、頑丈さが段違いなんだ、見ていろ」

 俺は『ビルドハンマー』を振りかざし、ミスリルの家(ミスリルホーム)を乱暴に殴りつけた。

「えっ!! ええっ!? そんな事してグラン様、本当に大丈夫なんですか!?」

 リノアは大慌てをしていた。

 ガ――――――――――――――――――――ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!

 しかし、『ビルドハンマー』で殴りつけても音が響くだけでビクともしなかった。俺の手が痺れたくらいだ。

「なっ!? 大丈夫だったろ? 前の木の家(ウッドホーム)だったら、普通にへこんだり、壊れたりしていたところだ」

「前の家よりも随分と頑丈なんですね……この丈夫さがあれば、前のような台風がやってきても大丈夫でしょうか……」

「多分な……家の中にはベッドが作ってある……そこで少し寝ようか。ふぁぁ……一仕事終わったから眠くなってきた」

「無理をせず眠ってください。グラン様は三日三晩作業をしていたのですから……」

 実際のところは二晩だけの作業ではあるが、似たようなものだ。疲れたのは確かだ。

「それじゃあ……眠らせて貰うよ」

「はい……ゆっくりとお休みください」

 こうして俺は新しくできたミスリルの家でゆっくりと睡眠をとる事になったのである。久しぶりに熟睡する事ができた。やはり、安全な家で眠る事とよく眠れるものだった。

 ◇

「ぐー……ぐー……ぐー……」

「ん? ……」

 しばらくして、俺は目を覚ました。ベッドの隣にはリノアも眠っているではないか。やはり、彼女も眠かったようだ。無理もない。野宿ではいつ襲われるのかもわからないのだ。そんな状態では熟睡などとてもできるものではない。

 その時であった。窓の外にあの時と同じような暗雲が見えたではないか。

「なっ!? あれは台風じゃないか!?」

 俺は一瞬慌てた。だが、すぐに気を取り直す。そうだ……今のミスリルの家は前の家よりもずっと頑丈なのだ。
 安心感は違った。今度の家なら台風が来ても何とかなるはずだ。俺はこのミスリルの家を信じ、再び眠りについたのだ。

 ◇

 チュンチュンチュン。朝だ。朝日が差し込んでくる。そして小鳥の囀る音も聞こえてきた。

 俺は目を覚ます。台風が前のように来ていたが、何事もなかったようだ。

「んんっ……おはようございます。グラン様」

 隣で眠っていたリノアが目を覚ます。

「おはよう……リノア」

「昨日はぐっすりと眠れました……」

「知っているか? リノア。昨日、前みたいに台風が来ていたんだ」

「ええっ!? そうだったのですか! 全然気づかないで、私ずっと眠ってました!」

 リノアは驚いていた。

「……これでもう、台風に怯える必要もないんですね」

「ああ……だからってずっと寝てダラダラしているわけにもいかないけどな、俺達にはまだまだやるべき事が沢山あるんだから」

「そうですね……次は何をしましょうか……」

「次は……そうだな」

 俺はリノアの服を見た。ボロボロの服だ。俺の服も同じだが……。特にリノアの服は目のやり場に困る。ボロボロの服からはリノアの胸が大きく見開かれて、いつ零れ落ちてしまっても不思議ではない程だ。

 それに元王女の彼女がこんなみすぼらしい恰好をしているのはいかがなものか。

 やはり衣食住の最後のひとつである。衣類を何とかするべきだろうか。

「……とりあえずは服を何とかしようか」

「ははっ……そうですね。いつまでもこの恰好のままじゃいけないですよね」

「……でもどうするんですか? 衣類なんて……」

「人里まで降りていくしかないだろう……人間の街までいけば、様々なモノが手に入る。俺では作り出せないような家具や照明道具なんかも手に入れることができるはずだ。俺達の生活はもっと便利になるさ」

 こうして俺達は一度、人里に出向く事にした。人間の国——アークライト。それは俺が追放された国だった。俺が舞い戻ってきた事が実家に知られれば何かと面倒ではあるが……致し方ない。他に衣類などを手に入れる方法はないのだ。それに猪肉ばかりで飽きた。

「でもどうするんですか? 人間の世界には貨幣という制度が存在するのでしょう?」

「ミスリル鋼の余りがある……貴重な金属だから売ればそれなりの金になるさ。その金で買おうじゃないか」

「そうですか……でしたら問題ないですね。では人間の国まで参りましょうか」

「ああ。行こう、リノア」

 こうして俺達は人間の国へと出向くのであった。その国で俺は再び――見たくもなかったあいつの顔に出くわす事になる。

 ――そう、ヘイトとの再会を果たすのであった。こうして俺達は因縁の再会をする事になるのであった。



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