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「あ、あのっ、倉本くん!」
倉本は迷惑そうな目で振り返った。
「何?」
「さっき、あの、助けてくれたの、あ、ありがとう!」
倉本は数秒キョトンとしていた。そして首元を掻き、
「あー、前の席の……誰?」
と言った。
そこからかよと思ってしまったが、確かに、当たり前だ。さっき目が合ったとはいえ、存在感のない僕のことなんか覚えているわけがない。
「あ、前の席の、木田、だよ!」
敬語で話すべきなのかタメでいくべきなのか悩んでしまい、カタコトになる。
「いや、助けてはいない」
「え?」
「俺、お前みたいな弱っちぃの見てると腹立つんだよね」
「……」
「ほらまたそうやって黙るだろ?」
「あ、ごめん……」
「むかつくわ」
「ご、ごめん……」
「……、他になんか用あんの?」
「い、いや、ない、です。ごめんなさい……」
倉本はだるそうにため息をつきながら空き教室に向かっていった。
僕は心の奥底で、ありがとうを伝えることで倉本と仲良くなれる気がしていた。でも実際は、真逆だった。
倉本は僕を嫌っているようだった。また更に苦しくなった。廊下のど真ん中で、僕は一人、立ち尽くしていた。
「倉本ー!久しぶりだよー!」
どこからか聞き慣れた少年のような声が聞こえてきた。声のある方へ体を向けると、そこにはこちらに向かって走ってくる佐藤がいた。
「あ、佐藤……」
僕はなんだか安心して、泣きそうになってしまった。
「倉本、今朝なんで一人で行ったんだよー、寂しかったよ?」
佐藤はそう言うと僕に抱きついた。それがとても温かくて目が潤んでしまった。
「もう、別々のクラスだし、迷惑かなって」
「別々って隣じゃん俺ら!迷惑なわけないじゃん?」
「ごめん……」
「謝んなくていいって!でもほんとに、寂しかったよ」
佐藤は僕の胸元で深呼吸をする。
「てかなんでここに突っ立ってたん?」
「あ……」
僕はさっきまでの情景を思い出し息が詰まりそうになった。
「あ!もしかして、空き教室、分かんなかった?」
佐藤は屈託のない笑みでそう言う。あんな暗い話、今はしたくない。そういうことにしておこう。
「あ、うん。音楽室が分かんなくて」
三年間もこの学校に通っていて今更どの教室がどこにあるのか分からないわけがない。佐藤は僕が嘘をついていると分かっているのか否か、先程と変わらぬ笑顔のまま言う。
「まーなー、音楽室なんてそうそう行かないもんなー!うん、しゃーない!」
佐藤のその笑顔が優しすぎて佐藤の頬に触れた。佐藤は少しびっくりして、すぐにまた笑い始めた。
「木田って急に誘うよなー、えっちぃ」
「あ、いや!そんなつもりじゃ」
焦る僕を見て佐藤は爆笑する。
「俺、新しいクラスで一人だからさー、一緒に行こうよ」
佐藤は本当に優しいなと思う。こんな僕に『一緒に』なんて言葉をくれる。僕をちゃんと僕として向き合ってくれる。そういうところが、だいすきだと思う。
倉本は迷惑そうな目で振り返った。
「何?」
「さっき、あの、助けてくれたの、あ、ありがとう!」
倉本は数秒キョトンとしていた。そして首元を掻き、
「あー、前の席の……誰?」
と言った。
そこからかよと思ってしまったが、確かに、当たり前だ。さっき目が合ったとはいえ、存在感のない僕のことなんか覚えているわけがない。
「あ、前の席の、木田、だよ!」
敬語で話すべきなのかタメでいくべきなのか悩んでしまい、カタコトになる。
「いや、助けてはいない」
「え?」
「俺、お前みたいな弱っちぃの見てると腹立つんだよね」
「……」
「ほらまたそうやって黙るだろ?」
「あ、ごめん……」
「むかつくわ」
「ご、ごめん……」
「……、他になんか用あんの?」
「い、いや、ない、です。ごめんなさい……」
倉本はだるそうにため息をつきながら空き教室に向かっていった。
僕は心の奥底で、ありがとうを伝えることで倉本と仲良くなれる気がしていた。でも実際は、真逆だった。
倉本は僕を嫌っているようだった。また更に苦しくなった。廊下のど真ん中で、僕は一人、立ち尽くしていた。
「倉本ー!久しぶりだよー!」
どこからか聞き慣れた少年のような声が聞こえてきた。声のある方へ体を向けると、そこにはこちらに向かって走ってくる佐藤がいた。
「あ、佐藤……」
僕はなんだか安心して、泣きそうになってしまった。
「倉本、今朝なんで一人で行ったんだよー、寂しかったよ?」
佐藤はそう言うと僕に抱きついた。それがとても温かくて目が潤んでしまった。
「もう、別々のクラスだし、迷惑かなって」
「別々って隣じゃん俺ら!迷惑なわけないじゃん?」
「ごめん……」
「謝んなくていいって!でもほんとに、寂しかったよ」
佐藤は僕の胸元で深呼吸をする。
「てかなんでここに突っ立ってたん?」
「あ……」
僕はさっきまでの情景を思い出し息が詰まりそうになった。
「あ!もしかして、空き教室、分かんなかった?」
佐藤は屈託のない笑みでそう言う。あんな暗い話、今はしたくない。そういうことにしておこう。
「あ、うん。音楽室が分かんなくて」
三年間もこの学校に通っていて今更どの教室がどこにあるのか分からないわけがない。佐藤は僕が嘘をついていると分かっているのか否か、先程と変わらぬ笑顔のまま言う。
「まーなー、音楽室なんてそうそう行かないもんなー!うん、しゃーない!」
佐藤のその笑顔が優しすぎて佐藤の頬に触れた。佐藤は少しびっくりして、すぐにまた笑い始めた。
「木田って急に誘うよなー、えっちぃ」
「あ、いや!そんなつもりじゃ」
焦る僕を見て佐藤は爆笑する。
「俺、新しいクラスで一人だからさー、一緒に行こうよ」
佐藤は本当に優しいなと思う。こんな僕に『一緒に』なんて言葉をくれる。僕をちゃんと僕として向き合ってくれる。そういうところが、だいすきだと思う。
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