サンカヨウ

東雲

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 目を覚ますとカーテンが開いていて空は少し明るかった。僕は数秒、空を眺めながら時が止まったかのように静止する。そしてハッとしスマホの画面をタップする。そこには止められなかったアラームの通知と六時二十三分の文字が並んでいた。

「え、え!朝?」
まだ寝ぼけている僕の脳は空の明るさとその時間が夕方のものだと勘違いしたがっているようだった。

しかし現実はそう甘くない。やっぱり翌日の朝なのだ。
 僕は急いで部屋を出ると階段を駆け下り、風呂場へ向かった。そして乱暴にジャージと下着を脱ぎ捨てるとシャワーを浴びる。

 僕が家を出るのは七時半頃。残り一時間もない。全ての行動をいつもの二倍速で行う。五分程でお風呂をあがると身体を雑に拭き下着のみ着てドライヤーをかける。

 僕の焦る音で目覚めてしまったのだろうか、姉の千夏が眠そうに洗面所に来る。
「朝からうるさいわー」
「あ、ごめん、寝落ちてて」
「ちょどいて、顔洗う」

 千夏は僕と違って気が強い人だ。だから僕は彼女に負けてしまうことが多々ある。今もドライヤーをしている僕を気にすることなく「どけどけ」と腕を押す。髪の毛はまだ完全に乾ききってなかったが、半分は乾いていたので黙ってドライヤーのコンセントを外す。

千夏は「チッ」と小さく舌打ちをすると棚から乱雑にタオルを取りだし顔を洗いだす。僕はその後ろでくしゃくしゃに置いてあるジャージを着てリビングへ向かう。

 「あ、おはよ~」
母はコーヒーを一口飲むと僕に気づいて声をかける。
「おはよう、ごめん昨日寝落ちてたみたいで夕飯食べれなかった」
「ふふ、疲れたのね。昨日のカレー、盛ってあるけど食べる?」
母はそう言うと冷蔵庫からカレーライスが盛られている皿を取り出す。
「あ、うん、食べる」
僕の返答を聞いて母はその皿を電子レンジの中に入れる。僕は冷蔵庫から牛乳を取り出すとコップに注ぐ。それをテーブルの上に置くといつもの席に座る。
 
  いつもの席とは窓側の右の方だ。誰かに決められたわけではないが僕は小さい頃からこの席で食事をしている。

「わあ、もう七時十分だわ、悠人急いで!」
時計を見ると長針が二の上を通り過ぎようとしていた。登校まで残り二十分弱。

僕は電子レンジから温め途中のカレーライスを取りだし小走りでテーブルへ持って行く。「いただきます」早口でそう言うと慌ただしく口へ運ぶ。すぐに食べ終えるとまた洗面所へ向かい歯磨きをする。千夏は僕が最後の一口を食べている時に朝食をとり始めていた。

  歯磨きをしながら自分の部屋へ向かい、制服に着替える。リュックに必要な持ち物を詰め一階に降りる。うがいをし、リュックを背負い「行ってきます!」と叫んだ。すると母はリビングから「待って!」と言うと小走りでこちらへ向かってきた。

「弁当!忘れてるよ」
お弁当の入っている小さなバッグを僕に渡してきた。
「あ、忘れてた……ありがとう」
「うん、気をつけて、行ってらっしゃい!」
「……うん!行ってきます!」
僕はそう言うと玄関のドアを開け、佐藤の家へ走る。

 佐藤は既に家のドアの前で待っていた。僕の足音に気づき、こちらを見ると目を開いて笑った。
「おはよー!木田、遅刻~」
「ご、ごめん……!起きたら六時半で……」
「もしかして、さっき風呂入った?」
佐藤はそう言うと僕の髪の毛に鼻を近づける。

「めっちゃいい匂い」
「わ、ち、近いな……」
僕はそう言うと佐藤から少し身体を離す。佐藤はそれに少しムスッとして「あ!急がないと!」と走り出す。僕はそれを「わ!ま、待ってよ!」と追いかける。

  僕たちは無事に学校へ到着すると僕のクラスの前で「またね」と手を振り各々の教室へと向かって行った。
 今日もやっぱり倉本に怯えていたが何をされるでもなく安定した一日が終わった。
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