サンカヨウ

東雲

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「どこ行ってたん?」

振り向くと武田がいた。僕は少し驚いてしまい「えっ」と声を漏らしてしまう。

「倉本とどこ行ってたん?保健室じゃないよな?」
そう言う武田の顔はニヤついていた。
「あ、えっと……」
「俺の推測からすると……屋上?」
武田は上を指しその指先をクルクルと回した。
「……」
「推測ってか、見ちゃったんだよね。木田くんがそこから出てくるところ」
「そ、そうなんだ……」
「倉本は?なんで一緒じゃないの?」
「えっと……」

「なあ、あいつ、正直だるいだろ」
武田はケラケラ笑った。
「だってあいつ、わがままだし口悪いし、俺らに興味示さねーし」
まるで冗談というような顔で笑っていたが、多分この言葉は本音だ。言葉に棘があった。当事者じゃない僕ですらも少し痛くなってしまうくらい鋭い棘だった。

「えっと、そ、それで」
「うーんだから、大丈夫だった?もしかして木田くんに向かって「死ね」なんて言ったんじゃないかって心配でさ」
「い、いや、そんなのはなかったよ」
「ふーん。木田くんは倉本のこと好き?」
「す、好き……?えっと……」
「まあ、本音は言いにくいわな!ちなみに俺はちょー嫌い」

知らなかった。武田が倉本のこと嫌いだなんて。常に一緒にいて、笑って倉本に話しかけていた。とても楽しそうだと思っていた。ちょー嫌い、だったのか……。じゃあなんであんなに楽しいそうに一緒にいられるんだ……?

「俺、モテたいからさ!あいつ顔はいいから一緒にいるだけで女の子に話しかけられちゃうのよ~」
武田は僕を仲間だと認識したのかさっきまでとは少し違う笑顔でそう言う。

「……」
「このことは皆に内緒にしてくれよ~木田くん」
武田はそう言うと僕と肩を組もうと腕を伸ばしてきた。


「木田!もうすぐ時間だよ!急がないと」
武田の後ろから声がしたので背伸びをして見てみる。佐藤がいた。何も知らないというような笑顔でこちらを見ている。

「あ、う、うん」
頷いてはみたものの正直何の時間が迫っているのか分からなかった。放課後に急ぐような予定を入れることはないので完全なる空返事であった。

「なんだ木田くん、予定あったんか~」
「あ、う、うん……」
武田の方を見て頷くと武田は僕に近寄り耳元で呟いた。
「俺は明日からも仲良くしとくけど、変な目で見るなよ」
僕は黙って首を縦に動かす。武田の肩越しに見る佐藤の顔は怒っているようだった。やっぱり何かしら用事を入れていたのだろう。僕は焦りながらリュックを背負う。

「じゃあね、木田くん」
武田はそう言うとヒラヒラと軽く手を振った。


「なあ!さっきの、何っ?」
玄関を出ると佐藤はゆっくり歩きながらそう叫ぶ。

「それより、なにか急ぎの用事があるんじゃ……」
「嘘だよ!木田が困ってる感じだったからテキトーに言ったの!」
「そうだったんだ……ありがとう」
佐藤はあの場を丸く収めようとそんな嘘をついてくれたのだと気づき優しく微笑む。しかし佐藤はやはりまだ怒っていた。

「あれは、確か、武田だよな?倉本とよく一緒にいる」
「あ、う、うん。よく知ってるね」
「何をされたの?」
「あ、いや、倉本くんとどこ行ってたんだ?って、聞かれただけ、だよ」

先程の会話、全てを佐藤に話すのはなにか違うと思い、冒頭部分だけを要約して話す。
「ふーん」
「ふ、ふーんって……」
「で?倉本とは?どこ行ってたん?」
佐藤はこちらを睨むといつもより少し低い声でそう言った。

「ほ、保健室に行けって、先生に言われて。顔色が悪いから……」
「それで何であいつも着いてくるんだよ」
「付き添いで、後ろの席だからかな、一緒に行けって……」
「で?保健室行ったの?それにしては倉本戻ってくんの遅いように感じたけど?」

佐藤は少し面倒くさい人間であるかのように僕に質問攻めをしてきた。しかし僕も弁明する必要があると踏んだのでひとつひとつ真面目に答える。

「ううん、倉本くんが屋上の方に行ったから、僕も、着いて行った」
「なんでっ?あそこの階段、立ち入り禁止だよね?」
「だめなのは分かってたけど、正直僕もあそこが気になってて……」
「だからって何で倉本なんかと……」
「ほんとだね、なんでだろう……」
「他人事すぎんだろ……」

佐藤はそう言うとため息をつく。僕は佐藤の質問攻めにより自分の行動のありえなさを再認識する。

「木田は何もされてないん?」
「あ、うん。倉本くん、屋上ついた瞬間寝たよ」
「なんなんだよ、あいつ」
「休みたかったのかな」
ははは、と笑ってみる。佐藤はチラッと僕の方を見ると大きく息を吸う。

「今回は木田も悪いからな?本当、もう、俺、心配なんだよ!」
佐藤は一息でそこまで言うと僕の腕をグーで軽く殴った。「いてっ」そう言うと佐藤は「痛くない!」ともう二、三度殴ってきた。

 佐藤は僕を心配して怒ってくれる人でもあった。それに気づき嬉しくなる。帰り道、ムスッとしている佐藤とは裏腹に僕は夕方のまだ涼しい風のように爽やかな気持ちであった。


 この日からまたいつもと変わらない日々が始まり、僕は佐藤と仲良くしていた。武田も、倉本と仲良くしている、ようだった。僕はいつか武田が痺れを斬らすのではないかとドキドキしていたがそんなことも無く、僕たちは夏休みへと入っていった。
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