たとえ、あなたが誰を愛していようとも

あーもんど

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愛する人《アニス side》②

「とりあえず、ビオラ嬢の対応は変えないといけないわね。彼女の反対を押し切って、婚約を白紙に戻すことは出来ないだろうから」

 話を元に戻し、ミモザは悩ましげに眉を顰める。

「どうにかして、説得するしかないけど……こちらの話を聞いてくれるかしら?いや、そもそも何を交渉材料にすればいいの?」

 『やっぱり、慰謝料?』と口にし、ミモザは顎を撫でた。
その横で、僕は首を横に振る。

「恐らく、説得は無理だと思うよ。ビオラは僕を愛しているが故に、婚約破棄を受け入れなかったみたいだから」

 『どれだけ金を積んでも、納得しないだろう』と主張し、僕はソファの背もたれに寄り掛かった。

「正直、モータル公爵夫妻に働き掛ける方がまだ現実的かな。まあ、ビオラに恥を掻かせた僕達のことを相手にしてくれるかどうかは分からないけど」

 とても優しい人達とはいえ、無礼者達にまで心を砕いてくれるとは思えない。
少なくとも、娘の気持ちを無視してまでこちらの願いを聞き入れてくれることはないだろう。

 『家族か他人かだったら、間違いなく前者の方が大事だと思うし』と嘆きつつ、僕は顔を上げる。

「なあ、やっぱりミモザのお父上────フェンネル・グラジオラス・フスティーシア国王陛下に頼るのが確実じゃないか?」

 『大きな権力で無理やり解決する他ないんじゃないか』と考える僕に、ミモザは困ったような顔をした。

「ここがフスティーシア王国ではなくレジデンス帝国である以上、頼れないわ。さすがに他国の貴族の問題へ介入するのは、ご法度でしょうし」

 『帝国からすれば、越権行為でしかないもの』と語り、ミモザは小さく肩を竦める。
国際問題に発展しかねないことを仄めかす彼女の前で、僕は首裏に手を回した。

「せめて、口添えしてもらうことは出来ないのか?」

「難しいと思うわ。たとえ、命令じゃなくて口を出す程度でもかなりのリスクを伴うから」

 そっと目頭を押さえ、ミモザは暗い表情を浮かべる。

「王位継承権もない第三王女の私のために、そこまでするとは思えない」

 自虐気味に……でも淡々と言い切ったミモザに、僕は小さく瞳を揺らした。
こんな風に自分を卑下するのは、初めて見るので。
『いつも明るく振る舞っているから、少し意外だ』と思案しながら、僕は足を組む。

「そうか。じゃあ、結局のところビオラを何とかするしかないんだな」

 場の雰囲気を変えるついでに今後の方針を口にすると、ミモザは背筋を伸ばした。

「ええ。かなり難易度の高いミッションだけど、私達二人ならきっと乗り越えられるわ」

 『頑張りましょう』と意気込むミモザに対し、僕は頷く。

「必ずビオラを片付けて、幸せな未来を手に入れよう」

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