30 / 67
叱責③
「ミモザ・バシリス・フスティーシア王女殿下を────スヴィエート神聖国の教皇聖下のところへ、嫁がせてはいただけませんか?」
結婚させて遠くにやりたい意向を示すと、フェンネル国王陛下は僅かに目を見開いた。
「理由を聞いても、いいかね?」
「私的なことで申し訳ないんですが、ミモザ王女殿下が私の婚約者を取ってしまわないか少し不安で」
胸元を握り締め、私はそっと目を伏せる。
「というのも、先日行われた建国記念パーティーで婚約者がミモザ王女殿下のことを愛していると宣言したのです」
「!」
まだ婚約破棄の騒動について知らなかったのか、フェンネル国王陛下は動揺を示した。
あの一件からあまり日も経っていないし、ここは他国だから事情を把握出来てなくてもおかしくない。
それに、ミモザ・バシリス・フスティーシアの方で手を打って情報の拡散を防いでいるのかもしれないわ。
『あの一件が広まっても、困るだけだものね』と考えつつ、私は話を続ける。
「それだけなら婚約者の一方的な片思いと思えたのですが、今日の騒動を通してミモザ王女殿下も少なからず彼に関心を寄せていることが分かり……」
『ある程度親密な関係でなければ、直談判などしないでしょうし』と話し、私は視線を上げた。
「だから、ミモザ王女殿下が誰かと結ばれてくれれば安心出来るかな?と」
「なるほど。では、結婚相手は別に教皇聖下じゃなくてもよいのだな?」
『要するに遠方へ飛ばせばいいのだろう?』と問い、フェンネル国王陛下は譲歩を求める。
その理由は至って、簡単。
この婚姻にメリットがない、と感じているからだ。
スヴィエート神聖国は周辺国に比べると圧倒的に弱く、小さく、貧しいため。
『どうせなら、もっと良いところに嫁がせたい』という本音が透けて見える彼を前に、私は姿勢を正す。
「ええ。ですが────フスティーシア王国、スヴィエート神聖国、それからモータル公爵家の利益を考えると教皇聖下が適任かと」
「利益?」
反射的に聞き返すフェンネル国王陛下は、怪訝そうな表情を浮かべた。
『この婚姻に得など、あるのか?』と不思議そうにしている彼の前で、私はスッと目を細める。
「はい、実は神聖国にいい鉱山が見つかったようでして」
「!?」
ハッとしたように息を呑むフェンネル国王陛下に対し、私はこう言葉を付け足した。
「珍しい鉱石を大量に採掘出来るそうです」
「それは誠か!」
勢いよく身を乗り出し、フェンネル国王陛下はこちらを凝視する。
明らかに目の色が変わった彼を前に、私はゆるりと口角を上げた。
「信頼出来る筋から得た情報なので、間違いないかと」
『少なくとも、私はこの話を信じています』と強気に出ると、フェンネル国王陛下は表情を硬くする。
一応、こちらの言い分を真実として受け止める気になったらしい。
「ならば、教皇聖下との結婚も悪くないな」
結婚させて遠くにやりたい意向を示すと、フェンネル国王陛下は僅かに目を見開いた。
「理由を聞いても、いいかね?」
「私的なことで申し訳ないんですが、ミモザ王女殿下が私の婚約者を取ってしまわないか少し不安で」
胸元を握り締め、私はそっと目を伏せる。
「というのも、先日行われた建国記念パーティーで婚約者がミモザ王女殿下のことを愛していると宣言したのです」
「!」
まだ婚約破棄の騒動について知らなかったのか、フェンネル国王陛下は動揺を示した。
あの一件からあまり日も経っていないし、ここは他国だから事情を把握出来てなくてもおかしくない。
それに、ミモザ・バシリス・フスティーシアの方で手を打って情報の拡散を防いでいるのかもしれないわ。
『あの一件が広まっても、困るだけだものね』と考えつつ、私は話を続ける。
「それだけなら婚約者の一方的な片思いと思えたのですが、今日の騒動を通してミモザ王女殿下も少なからず彼に関心を寄せていることが分かり……」
『ある程度親密な関係でなければ、直談判などしないでしょうし』と話し、私は視線を上げた。
「だから、ミモザ王女殿下が誰かと結ばれてくれれば安心出来るかな?と」
「なるほど。では、結婚相手は別に教皇聖下じゃなくてもよいのだな?」
『要するに遠方へ飛ばせばいいのだろう?』と問い、フェンネル国王陛下は譲歩を求める。
その理由は至って、簡単。
この婚姻にメリットがない、と感じているからだ。
スヴィエート神聖国は周辺国に比べると圧倒的に弱く、小さく、貧しいため。
『どうせなら、もっと良いところに嫁がせたい』という本音が透けて見える彼を前に、私は姿勢を正す。
「ええ。ですが────フスティーシア王国、スヴィエート神聖国、それからモータル公爵家の利益を考えると教皇聖下が適任かと」
「利益?」
反射的に聞き返すフェンネル国王陛下は、怪訝そうな表情を浮かべた。
『この婚姻に得など、あるのか?』と不思議そうにしている彼の前で、私はスッと目を細める。
「はい、実は神聖国にいい鉱山が見つかったようでして」
「!?」
ハッとしたように息を呑むフェンネル国王陛下に対し、私はこう言葉を付け足した。
「珍しい鉱石を大量に採掘出来るそうです」
「それは誠か!」
勢いよく身を乗り出し、フェンネル国王陛下はこちらを凝視する。
明らかに目の色が変わった彼を前に、私はゆるりと口角を上げた。
「信頼出来る筋から得た情報なので、間違いないかと」
『少なくとも、私はこの話を信じています』と強気に出ると、フェンネル国王陛下は表情を硬くする。
一応、こちらの言い分を真実として受け止める気になったらしい。
「ならば、教皇聖下との結婚も悪くないな」
あなたにおすすめの小説
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
さようなら、私の愛したあなた。
希猫 ゆうみ
恋愛
オースルンド伯爵家の令嬢カタリーナは、幼馴染であるロヴネル伯爵家の令息ステファンを心から愛していた。いつか結婚するものと信じて生きてきた。
ところが、ステファンは爵位継承と同時にカールシュテイン侯爵家の令嬢ロヴィーサとの婚約を発表。
「君の恋心には気づいていた。だが、私は違うんだ。さようなら、カタリーナ」
ステファンとの未来を失い茫然自失のカタリーナに接近してきたのは、社交界で知り合ったドグラス。
ドグラスは王族に連なるノルディーン公爵の末子でありマルムフォーシュ伯爵でもある超上流貴族だったが、不埒な噂の絶えない人物だった。
「あなたと遊ぶほど落ちぶれてはいません」
凛とした態度を崩さないカタリーナに、ドグラスがある秘密を打ち明ける。
なんとドグラスは王家の密偵であり、偽装として遊び人のように振舞っているのだという。
「俺に協力してくれたら、ロヴィーサ嬢の真実を教えてあげよう」
こうして密偵助手となったカタリーナは、幾つかの真実に触れながら本当の愛に辿り着く。
知らぬが花
鳥柄ささみ
恋愛
「ライラ・アーデ嬢。申し訳ないが、キミとの婚約は破棄させてもらう」
もう何度目かわからないやりとりにライラはショックを受けるも、その場では大人しく受け入れる。
これでもう婚約破棄と婚約解消あわせて十回目。
ライラは自分に非があるのではと自分を責めるも、「お義姉様は何も悪くありません。相手の見る目がないのです」と義弟であるディークハルトにいつも慰められ、支えられていた。
いつもライラに親身になって肯定し、そばにいてくれるディークハルト。
けれど、ある日突然ディークハルトの訃報が入ってくる。
大切な義弟を失い、泣き崩れて塞ぎ込むライラ。
そんなライラがやっと立ち直ってきて一年後、とある人物から縁談の話がやってくるのだった。
裏切りの街 ~すれ違う心~
緑谷めい
恋愛
エマは裏切られた。付き合って1年になる恋人リュカにだ。ある日、リュカとのデート中、街の裏通りに突然一人置き去りにされたエマ。リュカはエマを囮にした。彼は騎士としての手柄欲しさにエマを利用したのだ。※ 全5話完結予定
ソウシソウアイ?
野草こたつ/ロクヨミノ
恋愛
政略結婚をすることになったオデット。
その相手は初恋の人であり、同時にオデットの姉アンネリースに想いを寄せる騎士団の上司、ランヴァルド・アーノルト伯爵。
拒否に拒否を重ねたが強制的に結婚が決まり、
諦めにも似た気持ちで嫁いだオデットだが……。
最愛の人に裏切られ死んだ私ですが、人生をやり直します〜今度は【真実の愛】を探し、元婚約者の後悔を笑って見届ける〜
腐ったバナナ
恋愛
愛する婚約者アラン王子に裏切られ、非業の死を遂げた公爵令嬢エステル。
「二度と誰も愛さない」と誓った瞬間、【死に戻り】を果たし、愛の感情を失った冷徹な復讐者として覚醒する。
エステルの標的は、自分を裏切った元婚約者と仲間たち。彼女は未来の知識を武器に、王国の影の支配者ノア宰相と接触。「私の知性を利用し、絶対的な庇護を」と、大胆な契約結婚を持ちかける。