駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜

あーもんど

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本編

私の決断③

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「ですが、どうも違和感しかありません。なので、事件の真相を教えていただけませんか?」

 『もちろん、他言はしません』と述べ、私はここだけの話として明かしてくれるよう願った。
が、夫は頑として首を縦に振らず……

「それは出来ない」

 と、突っぱねる。
取り付く島もない即答ぶりに、私は小さく肩を落とした。

 まあ、そう簡単に教えてくれる訳ないわよね。
夫婦とはいえ、まだ出会ってから一年も経っていないし。

 『なので、こうなることは一応想定していた』と思案しながら、私は姿勢を正す。

「では、これだけでも答えてください────前公爵夫妻を殺めたのは、本当に旦那様なんですか?」

 『はい』なら、高い確率でフェリクス様の言い分が正しいことになる。
でも、『いいえ』なら……。

 ギュッと胸元を握り締め、私は速くなる鼓動を鎮める。
この場に張り詰めたような空気が流れる中、夫はただ一言

「────違う」

 と、述べた。
その瞬間、私の中にあった不安は霧散する。まるで、最初から何もなかったみたいに。

「それだけ聞けたら、充分です。ありがとうございました」

 肩の力を抜いて少しばかり表情を和らげ、私は深々と頭を下げた。
どこか、晴れやかな気分になりながら。

 迷いが吹っ切れたわ。私は────これから先も、旦那様と一緒に居る。離婚はしない。

 『もう揺るがない』と心に決め、私はスッと目を細める。
と同時に、夫が怪訝そうな表情を浮かべた。

「……私の言葉を信じるのか?」

 『根拠も何もないんだぞ?』と言い、夫は額に手を当てる。
理解出来ない、とでも言うように。
赤い瞳に困惑を滲ませる彼の前で、私は小さく肩を竦めた。

「信じますよ。だって、旦那様は嘘をつかないじゃないですか。少なくとも、私に対しては」

 ずっと誠実で居てくれたことを指摘し、私は柔らかく微笑んだ。
すると、夫は僅かに目を見開いた。
が、直ぐに元へ戻る。

「たかだか数ヶ月の付き合いだというのに、もうそこまで私を信用しているなんて、おかしな女だ」

 フッと笑みを漏らし、夫は私の横を通り過ぎる。
恐らく、本邸へ戻るのだろう。
『私もそろそろ、部屋に帰ろうかな』と考えていると、夫は不意に

レイチェル・・・・・

 と、名を呼んだ。
これまでずっとフルネームか、『貴様』呼ばわりだったのに。
ビックリして思わず振り向く私に、夫は手を差し伸べる。

「何をしている?早く行くぞ」

 途中まで送ってくれるつもりなのか、夫はエスコートを申し出た。
相変わらず行動の読めない彼を前に、私はパチパチと瞬きを繰り返す。
でも、特に断る理由もないので

「はい」

 と、応じた。
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