駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜

あーもんど

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本編

兄弟の絆《フェリクス side》③

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「多分、君が────ラニット公爵の弟だからだよ」

 ウィンクしてそう答えるシャノン皇太子殿下に、僕は大きく瞳を揺らした。
思わぬ意見に衝撃を受けてしまって。

「えっ?たった、それだけで?」

「ああ」

「僕は実の弟でもないのに?」

 血縁関係がないことを指摘すると、シャノン皇太子殿下はおもむろに自身の顎を撫でた。

「恐らく、公爵にとって血が繋がっているかどうかはあんまり重要じゃなかったんだよ。大事なのは、君と過ごした時間や思い出。あとは戸籍かな?一応、書類上は君達兄弟だから」

「いや、それは表面的なもので……」

「表面的でも、何でも────公爵にとって、君は弟という存在なんだよ。少なくとも、彼はそう判断したから君を守り、助け、受け入れた」

 『この結果が、何より公爵の気持ちを物語っている』と述べ、シャノン皇太子殿下は真っ直ぐこちらを見据える。
どこか凛とした表情を浮かべながら。
思わず怯んでしまう僕を前に、彼は不意に目元を和らげた。

「まあ、あくまでラニット公爵がクライアントならの話だけどね」

 『本当のところは分からないよ』と言い、シャノン皇太子殿下はとぼける。
────と、ここで離れた場所に居た護衛が

「そろそろお時間です、シャノン皇太子殿下」

 と、声を掛けた。
ゆっくりとこちらへ向かってくる護衛達を前に、シャノン皇太子殿下は少しばかり目を剥く。

「おっと、もう時間切れみたいだね」

 『残念』と肩を竦め、シャノン皇太子殿下は後ろで手を組んだ。

「では、失礼するよ。雑談に付き合ってくれて、ありがとう」

 ふわりと柔らかく微笑んで小さく手を振り、シャノン皇太子殿下は踵を返す。
あっという間に遠ざかっていく足音を前に、僕は天井を見上げた。

 シャノン皇太子殿下の話は正直、信じられない……けど、もしそうなら────

「────いい弟になろう、これからは」

 『この恩に報いるためにも』と考え、僕は表情を引き締める。
と同時に、自身の手のひらを見つめた。

 もちろん、今更仲良し兄弟ごっこが出来るとは思っていない。
過去の失態を取り返せるとも。
だけど、今の僕に出来る最大の償いはそれしかないから。

 強く手を握り締め、僕は今後のことに目を向ける。
これまでの行いを反省しながら。
『許される日はきっと来ないだろうけど、それでも変わろう』と心に決め、僕は顔を上げた。
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