私に成り代わって嫁ごうとした妹ですが、即行で婚約者にバレました

あーもんど

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第一章

核心をつく①

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「うん、やっぱり────君、セシリアじゃないよね?」

 冷めた目でセシリアたるアイリスを見下ろし、ヴィンセントはここぞとばかりに指摘した。
その途端、父達はハッと息を呑むものの……直ぐさま、こう切り返す。

「な、何を仰るのですか……!?彼女は歷とした我が家の長女セシリア・リゼ・エーデルです!」

「確かにいつもと少し様子は、違うかもしれませんが……!」

「も、もう……!ヴィンセントったら、またジョークを言っているの……?」

「いや、僕は大真面目だけど」

 引き攣った笑みを見せるセシリアたるアイリスに、ヴィンセントは冷たく言い放った。
顔面蒼白になる彼女の前で、彼はおもむろに腕を組む。

「前から、おかしいとは思っていたんだ。セシリアらしくない言動ばかりだったし、僕とお揃いのピアスだって身につけなくなった」

「「「!?」」」

 『そんなものが!?』と驚愕し、父達は顔を見合わせる。
どうやら、彼らは私の容姿や服装に全く関心を持っていなかったらしい。
『あのピアスなら、基本毎日つけていたんだけど』と苦笑する中、父は僅かに身を乗り出した。

「そ、それは心境の変化というもので……!とにかく、この子はセシリアで間違いないんだ!」

「うん、そうだね。体は・・セシリアで間違いないと思うよ」

「なら……!」

「でも、中身は・・・違う。どちらかと言うと、僕の知っているセシリアは今そこに居るアイリス嬢に近い」

 ここぞとばかりに畳み掛け、ヴィンセントはゆっくりとこちらへ歩み寄ってきた。
ほんの少しだけ、表情を和らげながら。
『会いたかったよ』と視線だけで伝えてくる彼に、私は頬を緩める。
と同時に、トントンと自身の喉をつついた。

「それは一回目の合図で理解しているよ」

 食事前の動作を話題に出し、ヴィンセントは『大丈夫だからね』と笑う。
ここで全ての決着をつけるつもりなのか、実に堂々としていた。
これから始まる逆転劇を思い浮かべ辟易していると、彼はロジャー皇帝陛下に目を向ける。

「陛下、僕はセシリアとアイリス嬢の中身が入れ替わっているのではないかと疑っています」

「ほう。それはまた突拍子もないことを……とはいえ、セシリア嬢の変化は些か顕著すぎる。ただの心境の変化で片付けるには、あまりに妙だ」

 最初からヴィンセントの味方であっただろうロジャー皇帝陛下は、少しばかり中立の姿勢を崩す。
『小公爵の言うことには一理ある』と考える彼の前で、父は勢いよく立ち上がった。

「お、お待ちください!陛下!まさか、子供の戯言を真に受けているのですか!」

「確かにセシリアの言動はおかしかったかもしれませんが、中身が入れ替わっているなんて……!有り得ません!」

 半ば喚き散らすような形で反論し、継母は目を吊り上げた。
自分の築き上げてきたものが壊れそうで、危機感を抱いているのだろう。
さすがの彼女でも、今回の件がバレたら不味いことくらいは理解している筈だから。
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