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第一章
混沌を律する剣②
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「我が家がどうなってもいいのか!?少なからず、お前にも被害は及ぶんだぞ!?」
『今ならまだ間に合う!』と説得する父に、私は全く心を動かされなかった。
だって、そんなの覚悟の上だから。
「お父様、私は貴族です。民のため、国のために動くのは当然でしょう。保身のために悪を見過ごすなど、出来る訳がありません。その結果、己の地位や名誉を貶めることになったとしても、私は貴族としての義務と責任を果たします」
一切言い淀むことなく宣言し、私はロジャー皇帝陛下へ向き直った。
『おい……!』と喚く声がまだ耳に届くものの、気にせず口を開く。
「詳細は省きますが、私は父ローガン・アンディ・エーデルによって妹アイリス・レーナ・エーデルと中身を入れ替えられました」
「ふむ。それは大体分かっておるが、どうやって入れ替えられたんだ?」
『方法は何だ?』と問うロジャー皇帝陛下に、私はスッと目を細めた。
「────我が家の家宝“均衡を司りし杖”の力によるものです」
「ほう?エーデル公爵家の家宝は失われた筈だが……」
おもむろに顎を撫で、ロジャー皇帝陛下は僅かに身を乗り出す。
ヴィンセントの方から、事のあらましは聞いている筈だが……今ここで全てをハッキリさせたいのだろう。
『皇室としても一大事だものね』と思いつつ、私は返答を口にする。
「詳しいことは私にもよく分かりませんが、父が“均衡を司りし杖”を所持しているのは確かです」
「で、デタラメを言うな!セシリア!大体、どこに杖があると言うのだ!?」
『調べてみるか!?』と強気に出て、父は両手を広げた。
見つからない自信があるのだろう。でも────
「お忘れですか?お父様。出発前、私から声を奪い、続けざまに杖の形状を変えたことを」
────こっちはもう全部知っている。
というか、目の前で見せられた。悠々と“均衡を司りし杖”の能力を使う場面を。
きっと、お父様は『どうせ、話せないんだから』と油断していたんでしょうね。
「ヴィンセント、お父様のカフスボタンを狙って」
「任せて」
まだ解除された状態の“混沌を律する剣”を構え、ヴィンセントはニッコリと微笑んだ。
かと思えば、父のカフスボタン目掛けて剣を投げる。
“混沌を律する剣”の能力は、触れるだけでも発動するから。
むしろ、さっきみたいに詠唱して使う方が稀。
『多分、分かりやすくするためにああしたんだろうな』と考える中、剣は見事カフスボタンに当たる。
と言っても、ちょっと掠った程度だけど。でも、それで充分。
『今ならまだ間に合う!』と説得する父に、私は全く心を動かされなかった。
だって、そんなの覚悟の上だから。
「お父様、私は貴族です。民のため、国のために動くのは当然でしょう。保身のために悪を見過ごすなど、出来る訳がありません。その結果、己の地位や名誉を貶めることになったとしても、私は貴族としての義務と責任を果たします」
一切言い淀むことなく宣言し、私はロジャー皇帝陛下へ向き直った。
『おい……!』と喚く声がまだ耳に届くものの、気にせず口を開く。
「詳細は省きますが、私は父ローガン・アンディ・エーデルによって妹アイリス・レーナ・エーデルと中身を入れ替えられました」
「ふむ。それは大体分かっておるが、どうやって入れ替えられたんだ?」
『方法は何だ?』と問うロジャー皇帝陛下に、私はスッと目を細めた。
「────我が家の家宝“均衡を司りし杖”の力によるものです」
「ほう?エーデル公爵家の家宝は失われた筈だが……」
おもむろに顎を撫で、ロジャー皇帝陛下は僅かに身を乗り出す。
ヴィンセントの方から、事のあらましは聞いている筈だが……今ここで全てをハッキリさせたいのだろう。
『皇室としても一大事だものね』と思いつつ、私は返答を口にする。
「詳しいことは私にもよく分かりませんが、父が“均衡を司りし杖”を所持しているのは確かです」
「で、デタラメを言うな!セシリア!大体、どこに杖があると言うのだ!?」
『調べてみるか!?』と強気に出て、父は両手を広げた。
見つからない自信があるのだろう。でも────
「お忘れですか?お父様。出発前、私から声を奪い、続けざまに杖の形状を変えたことを」
────こっちはもう全部知っている。
というか、目の前で見せられた。悠々と“均衡を司りし杖”の能力を使う場面を。
きっと、お父様は『どうせ、話せないんだから』と油断していたんでしょうね。
「ヴィンセント、お父様のカフスボタンを狙って」
「任せて」
まだ解除された状態の“混沌を律する剣”を構え、ヴィンセントはニッコリと微笑んだ。
かと思えば、父のカフスボタン目掛けて剣を投げる。
“混沌を律する剣”の能力は、触れるだけでも発動するから。
むしろ、さっきみたいに詠唱して使う方が稀。
『多分、分かりやすくするためにああしたんだろうな』と考える中、剣は見事カフスボタンに当たる。
と言っても、ちょっと掠った程度だけど。でも、それで充分。
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