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第一章
アイリスの本音②
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「だから、お姉様────私に色んなことを教えて。もう講義をサボらないし、癇癪も……極力起こさないようにする」
ロジャー皇帝陛下と話して何やらいい影響を受けたのか、それとも自分自身で色々考えてみたのか……アイリスはこちらの想定よりずっと理知的で大人だった。
自分のやるべき事を見据え、きちんと目標を立てている。
もうワガママ放題で、駄々を捏ねるだけの子供じゃなかった。
この結論を出すまでに、きっと様々な葛藤があった筈。
それを全て乗り越えて、アイリスは今ここに居るんだ。
『この子はきっともっと成長する』と確信しながら、私は頬を緩めた。
「分かったわ。学ぶための機会と教材は手配してあげる。でも、これだけは覚えておいて」
袖口を掴むアイリスの手に自身の手を重ね、私は柔らかく微笑む。
「────焦らなくていい」
今すぐ何でも出来るようになる必要はないのだと……自分のペースでいいのだと言い聞かせ、アイリスの頭を撫でた。
この子は放っておいたら、暴走しそうだから。
「エーデル公爵家のことは私に任せて、勉強に専念しなさい。最悪、私が正式に当主の座を得て切り盛りするから。アイリスは自分のやりたいことを……」
「セシリア」
『やりたいことをやって』と続ける筈だった言葉は、ヴィンセントによって遮られた。
何やら怒っている様子の彼は、異様なまでにニコニコと笑う。
「僕がアイリス嬢の解放に手を貸したのは、彼女にエーデル公爵家を任せるためだ。次期当主となるか、優秀な婿を取るかは任せるけど……セシリアを当主として据えるのは、許さない。もし、そうなったら僕……」
そこで一度言葉を切ると、ヴィンセントは顔を両手で覆い隠した。
「泣いちゃうよ。僕はセシリアが居ないと、ダメなんだから」
『捨てないでよ』と言い、ヴィンセントは背中を丸めて俯く。
そのせいか、いつもより小さく見えた。
基本、貴族家の当主同士の結婚は認められない。
権力の一点集中を避けるために。
また、両家の後継者をどうするかなどの問題もあるため。
だから、私がエーデル公爵家の当主となれば必然的にヴィンセントとの婚約はなしになるだろう。
「わ、分かったわ。当主にはならない。でも、アイリスが家を切り盛り出来るようになるまでは、面倒を見ないといけないわ」
ロジャー皇帝陛下と話して何やらいい影響を受けたのか、それとも自分自身で色々考えてみたのか……アイリスはこちらの想定よりずっと理知的で大人だった。
自分のやるべき事を見据え、きちんと目標を立てている。
もうワガママ放題で、駄々を捏ねるだけの子供じゃなかった。
この結論を出すまでに、きっと様々な葛藤があった筈。
それを全て乗り越えて、アイリスは今ここに居るんだ。
『この子はきっともっと成長する』と確信しながら、私は頬を緩めた。
「分かったわ。学ぶための機会と教材は手配してあげる。でも、これだけは覚えておいて」
袖口を掴むアイリスの手に自身の手を重ね、私は柔らかく微笑む。
「────焦らなくていい」
今すぐ何でも出来るようになる必要はないのだと……自分のペースでいいのだと言い聞かせ、アイリスの頭を撫でた。
この子は放っておいたら、暴走しそうだから。
「エーデル公爵家のことは私に任せて、勉強に専念しなさい。最悪、私が正式に当主の座を得て切り盛りするから。アイリスは自分のやりたいことを……」
「セシリア」
『やりたいことをやって』と続ける筈だった言葉は、ヴィンセントによって遮られた。
何やら怒っている様子の彼は、異様なまでにニコニコと笑う。
「僕がアイリス嬢の解放に手を貸したのは、彼女にエーデル公爵家を任せるためだ。次期当主となるか、優秀な婿を取るかは任せるけど……セシリアを当主として据えるのは、許さない。もし、そうなったら僕……」
そこで一度言葉を切ると、ヴィンセントは顔を両手で覆い隠した。
「泣いちゃうよ。僕はセシリアが居ないと、ダメなんだから」
『捨てないでよ』と言い、ヴィンセントは背中を丸めて俯く。
そのせいか、いつもより小さく見えた。
基本、貴族家の当主同士の結婚は認められない。
権力の一点集中を避けるために。
また、両家の後継者をどうするかなどの問題もあるため。
だから、私がエーデル公爵家の当主となれば必然的にヴィンセントとの婚約はなしになるだろう。
「わ、分かったわ。当主にはならない。でも、アイリスが家を切り盛り出来るようになるまでは、面倒を見ないといけないわ」
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