52 / 208
第一章
狙われたのは《ヴィンセント side》①
しおりを挟む
◇◆◇◆
────エーデル公爵と夫人を城の牢屋に放り込んでから、早一ヶ月。
僕はなかなか判明しない『元公爵の取り引き相手』に、苦悩していた。
人相だけでなく、年齢や性別も分からないなんて……困ったね。
これじゃあ、特定出来ないよ。
「分かっている事と言えば、フードを深く被った人物ということくらいか」
『徹底的に身元を隠しているな』と溜め息を零し、僕は自室のソファに腰を下ろした。
テーブルに広げた資料を眺めながら、トントンと指先で膝を叩く。
皇族絡みという時点で厄介なのは分かっていたけど、まさかここまで情報が出てこないとは。
このまま、元公爵や夫人を問い質しても意味がないかもしれないな。
『別の方向から攻めてみるか』と考えていると、突然目の前にローブの男が現れる。
サラリと揺れる紺髪をそのままに、膝をつく彼は静かにお辞儀した。
「当然の訪問、申し訳ございません。至急、ご報告したいことが」
エーデル公爵家の監視兼護衛として派遣した筈のアルマンの登場に、僕は少し驚いた。
『何かトラブルでも起きたのか?』と思案しつつ、スッと目を細める。
「なんだい?」
「エーデル公爵家に────どこからか、暗殺者が送り込まれて来ました」
「!」
ハッと息を呑む僕は、思わずソファから立ち上がった。
普段このように取り乱すことはないのだが、今回はセシリアも関わっているから。
『彼女の身に何かあったら……』と焦りを覚える僕の前で、アルマンは慌てて言葉を紡ぐ。
「エーデル公爵家の方々は全員無事です。暗殺者はこちらでこっそり処分しましたので」
「……生け捕りにはしなかったの?」
「そうしたかったのですが……全員毒を服用して、自害しました」
プロの犯行を匂わせ、アルマンは『申し訳ございません』と頭を下げた。
今後のことを考えるなら、絶対に生け捕りにするべきだったから。
せっかくの情報源をダメにしてしまった、と反省しているのだろう。
「はぁ……もういいよ。エーデル公爵家の面々に内緒で守り抜くとなると、生け捕りは難易度が高かっただろうし」
────エーデル公爵と夫人を城の牢屋に放り込んでから、早一ヶ月。
僕はなかなか判明しない『元公爵の取り引き相手』に、苦悩していた。
人相だけでなく、年齢や性別も分からないなんて……困ったね。
これじゃあ、特定出来ないよ。
「分かっている事と言えば、フードを深く被った人物ということくらいか」
『徹底的に身元を隠しているな』と溜め息を零し、僕は自室のソファに腰を下ろした。
テーブルに広げた資料を眺めながら、トントンと指先で膝を叩く。
皇族絡みという時点で厄介なのは分かっていたけど、まさかここまで情報が出てこないとは。
このまま、元公爵や夫人を問い質しても意味がないかもしれないな。
『別の方向から攻めてみるか』と考えていると、突然目の前にローブの男が現れる。
サラリと揺れる紺髪をそのままに、膝をつく彼は静かにお辞儀した。
「当然の訪問、申し訳ございません。至急、ご報告したいことが」
エーデル公爵家の監視兼護衛として派遣した筈のアルマンの登場に、僕は少し驚いた。
『何かトラブルでも起きたのか?』と思案しつつ、スッと目を細める。
「なんだい?」
「エーデル公爵家に────どこからか、暗殺者が送り込まれて来ました」
「!」
ハッと息を呑む僕は、思わずソファから立ち上がった。
普段このように取り乱すことはないのだが、今回はセシリアも関わっているから。
『彼女の身に何かあったら……』と焦りを覚える僕の前で、アルマンは慌てて言葉を紡ぐ。
「エーデル公爵家の方々は全員無事です。暗殺者はこちらでこっそり処分しましたので」
「……生け捕りにはしなかったの?」
「そうしたかったのですが……全員毒を服用して、自害しました」
プロの犯行を匂わせ、アルマンは『申し訳ございません』と頭を下げた。
今後のことを考えるなら、絶対に生け捕りにするべきだったから。
せっかくの情報源をダメにしてしまった、と反省しているのだろう。
「はぁ……もういいよ。エーデル公爵家の面々に内緒で守り抜くとなると、生け捕りは難易度が高かっただろうし」
127
あなたにおすすめの小説
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。
そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。
たった一つボタンを掛け違えてしまったために、
最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。
主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?
【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
【完結】嫌われ公女が継母になった結果
三矢さくら
恋愛
王国で権勢を誇る大公家の次女アデールは、母である女大公から嫌われて育った。いつか温かい家族を持つことを夢見るアデールに母が命じたのは、悪名高い辺地の子爵家への政略結婚。
わずかな希望を胸に、華やかな王都を後に北の辺境へと向かうアデールを待っていたのは、戦乱と過去の愛憎に囚われ、すれ違いを重ねる冷徹な夫と心を閉ざした継子だった。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
(完結)私より妹を優先する夫
青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。
ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。
ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。
妹ばかり見ている婚約者はもういりません
水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。
自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。
そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。
さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。
◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐
◆小説家になろうにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる