55 / 208
第一章
魔法の講義②
しおりを挟む
「ただ、守護精霊にも出来ないことはたくさんあるから、何でも願いを叶えてくれるような存在じゃないわよ。属性に当てはまらないことは基本出来ないし……」
「属性って?」
「あぁ、その説明がまだだったわね。属性というのは、精霊の持つ元素のこと。主に火水風土の四つあって、ソレに当てはまる魔法しか使えないわ。簡単に言うと、火属性の精霊が水を生み出したり風を起こしたりすることは出来ないってこと」
『守護精霊とて、万能じゃないんだ』と教えると、アイリスは納得したように頷く。
と同時に、チラリとこちらを見た。
「じゃあ、お姉様の守護精霊の属性は火?」
「そうよ」
「他にはないの?」
「ないわ。基本、守護精霊は一つの属性しか持ち合わせていないし。あぁ、でもたまに守護精霊を複数体従えている魔導師は居るわね」
『それで複数の属性を使えることはある』と説明し、私は小脇に抱えた本を胸あたりまで持ち上げる。
「説明はここら辺にして、実践へ移りましょうか」
「いいけど、私の守護精霊の属性は何なのか分かっているの?」
「分からないわ。だからこそ、実際に試してみるの。百聞は一見にしかずと言うでしょう?」
各属性の簡単な魔法が載った本を差し出し、私は『ほら、唱えてみて』と促す。
アイリスはまだ精霊語を習っていないが、きちんと読み方も書いてあるため問題ないだろう。
『分かった』と言って素直に本を受け取る彼女は、パラパラと本のページを捲った。
「ねぇ、お姉様。一つ聞きたいことがあるんだけど」
「何?」
『まだ説明していないことがあったか?』なんて思いながら、私は話の先を促す。
すると、アイリスは控えめにこちらを見つめた。
「どうして、入れ替わりの時────魔法を使って、抵抗しなかったの?」
『あの炎を使えば、逃げられたかもしれないのに』と零し、アイリスは一つ目の呪文を唱える。
が、不発。
『そう上手くはいかないか』と切り替えて次のページを捲る彼女の前で、私はそっと目を伏せた。
「炎なんて使ったら、危ないからよ。最悪、死人が出ていたかもしれないし……」
一酸化中毒や火傷の危険性を示唆し、私はギュッと手を握り締める。
と同時に、大きく息を吐いた。
「というのは建前で、本音は────さすがのお父様もそこまでしないだろう、と信じたかったからよ。あと、突然のことで動揺してしまい、咄嗟に動けなかったのもあるわね」
『家宝が出てきた時は本当に驚いたから』と肩を竦め、私は空を見上げる。
今も城で厳しい尋問を受けているであろう、父の姿を思い浮かべながら。
「結局、家族としての情を捨て切れなかったのよね」
「属性って?」
「あぁ、その説明がまだだったわね。属性というのは、精霊の持つ元素のこと。主に火水風土の四つあって、ソレに当てはまる魔法しか使えないわ。簡単に言うと、火属性の精霊が水を生み出したり風を起こしたりすることは出来ないってこと」
『守護精霊とて、万能じゃないんだ』と教えると、アイリスは納得したように頷く。
と同時に、チラリとこちらを見た。
「じゃあ、お姉様の守護精霊の属性は火?」
「そうよ」
「他にはないの?」
「ないわ。基本、守護精霊は一つの属性しか持ち合わせていないし。あぁ、でもたまに守護精霊を複数体従えている魔導師は居るわね」
『それで複数の属性を使えることはある』と説明し、私は小脇に抱えた本を胸あたりまで持ち上げる。
「説明はここら辺にして、実践へ移りましょうか」
「いいけど、私の守護精霊の属性は何なのか分かっているの?」
「分からないわ。だからこそ、実際に試してみるの。百聞は一見にしかずと言うでしょう?」
各属性の簡単な魔法が載った本を差し出し、私は『ほら、唱えてみて』と促す。
アイリスはまだ精霊語を習っていないが、きちんと読み方も書いてあるため問題ないだろう。
『分かった』と言って素直に本を受け取る彼女は、パラパラと本のページを捲った。
「ねぇ、お姉様。一つ聞きたいことがあるんだけど」
「何?」
『まだ説明していないことがあったか?』なんて思いながら、私は話の先を促す。
すると、アイリスは控えめにこちらを見つめた。
「どうして、入れ替わりの時────魔法を使って、抵抗しなかったの?」
『あの炎を使えば、逃げられたかもしれないのに』と零し、アイリスは一つ目の呪文を唱える。
が、不発。
『そう上手くはいかないか』と切り替えて次のページを捲る彼女の前で、私はそっと目を伏せた。
「炎なんて使ったら、危ないからよ。最悪、死人が出ていたかもしれないし……」
一酸化中毒や火傷の危険性を示唆し、私はギュッと手を握り締める。
と同時に、大きく息を吐いた。
「というのは建前で、本音は────さすがのお父様もそこまでしないだろう、と信じたかったからよ。あと、突然のことで動揺してしまい、咄嗟に動けなかったのもあるわね」
『家宝が出てきた時は本当に驚いたから』と肩を竦め、私は空を見上げる。
今も城で厳しい尋問を受けているであろう、父の姿を思い浮かべながら。
「結局、家族としての情を捨て切れなかったのよね」
100
あなたにおすすめの小説
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。
そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。
たった一つボタンを掛け違えてしまったために、
最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。
主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~
ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。
そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。
シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。
ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。
それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。
それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。
なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた――
☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆
☆全文字はだいたい14万文字になっています☆
☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆
偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて
奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】
※ヒロインがアンハッピーエンドです。
痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。
爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。
執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。
だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。
ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。
広場を埋め尽くす、人。
ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。
この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。
そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。
わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。
国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。
今日は、二人の婚姻の日だったはず。
婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。
王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。
『ごめんなさい』
歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。
無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。
婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。
パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。
【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる