私に成り代わって嫁ごうとした妹ですが、即行で婚約者にバレました

あーもんど

文字の大きさ
56 / 208
第一章

魔法の講義③

しおりを挟む
「結局、家族としての情を捨て切れなかったのよね」

 『いつかは分かってくれると信じていた』と語り、虚しい気持ちを吐き出した。
────と、ここで妹の手から丸い光が飛び出す。
どうやら、守護精霊の属性は珍しい無属性……もっと正確に言うと、光属性だったらしい。

「そう。お姉様は本当に優しいのね。私だったら、迷わず全てを吹き飛ばしていたわ」

「ふふふっ。貴方なら、確かにやりそうね」

 最近、大分丸くなった……というか我慢を覚え始めたとはいえ、アイリスの本質は変わらない。
物事をシンプルに捉え、事実を事実として受け取る直情型だ。
良くも悪くも、サッパリしている性格と言えるだろう。

「ところで、家宝の魔法はどういう原理で発動しているの?魔力を魔法に変えられる存在って、守護精霊しか居ないのよね?」

 話題を変えるためか、それともふと気になったのか、アイリスは疑問をぶつけてきた。
と同時に、光の玉が消える。

「もしかして────あの家宝は守護精霊なの?」

「半分正解よ」

 アイリスの鋭い指摘に目を細めつつ、私は両腕を組む。

「私も詳しいことは知らないのだけど、エーデル公爵家やクライン公爵家の家宝は守護精霊と人間……ご先祖様の血を媒介にして、作ったものらしいの」

「ふ~ん。だから、その家の血を引いている人しか使えないの?」

「そういうこと。ちなみに家宝の魔法の正式名称は、血統魔法よ」

 『まあ、そのままの意味ね』と苦笑し、私はポケットから懐中時計を取り出す。

 アイリスの守護精霊の属性も分かったことだし、一旦休憩を挟みましょうか。
今日は本当に天気がいいから、あまり長く外に居ると体調を崩しそうだわ。

 ────と判断し、アイリスを引き連れて中に戻るとヴィンセントを発見した。
どうやら、私達に用があるらしい。

 事前の連絡もなしに訪問してくることもそうだけど、アイリスの同席を求めてくるなんて珍しいわね。
普段は『セシリアと二人きりがいい』と言って、聞かないのに。

 『これは確実に何かある』と確信しながら、私は一先ず応接室へヴィンセントを案内した。
一度部屋に戻って着替えてから戻ると、既にアイリスの姿もある。
お互い無言で紅茶を飲んでいる二人に、私は苦笑を漏らした。
『相変わらず、仲が悪いわね』と思いつつ、ヴィンセントの隣へ腰を下ろす。

「それで、話って何かしら?」

 このあとまだ講義があるため早速本題を切り出すと、ヴィンセントは少しばかり表情を硬くした。
どことなく張り詰めたような空気を放ち、正面に座るアイリスを見つめる。

「単刀直入に言うね────何者かにアイリス嬢の命を狙われている」

「「!?」」

 ハッとして息を呑む私達に、ヴィンセントはこれまでの経緯いきさつを説明した。
かと思えば、不意に頭を下げる。

「エーデル公爵家を守るためとはいえ、勝手に人を配置してごめん」

「ううん、気にしないで。まあ、これからは事前に言ってくれると助かるけど」

 『突然だとビックリしちゃうから』と述べる私に、ヴィンセントはコクリと頷く。

「分かった。じゃあ、早速なんだけど────これからもその部下をここに置いてもいいかな?」
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて

奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】 ※ヒロインがアンハッピーエンドです。  痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。  爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。  執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。  だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。  ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。  広場を埋め尽くす、人。  ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。  この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。  そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。  わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。  国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。  今日は、二人の婚姻の日だったはず。  婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。  王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。 『ごめんなさい』  歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。  無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。

婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。

パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

処理中です...