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第一章
身を守る術③
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「じゃあ、あとのことは任せました。私は少し離れた場所から、見ていますので」
『せめて、初回くらいは傍に居た方がいいだろう』との判断で、私は見学を決め込む。
数歩後ろに下がる私の前で、ルパート殿下は早速講義を始めた。
かと思えば、説明もほどほどに実践へ移る。
『とにかく、掛かってこい』と示す彼を前に、アイリスは一瞬の躊躇いもなく拳を繰り出した。
か、仮にも相手は第三皇子なのに……アイリスは本当に容赦ないというか、なんというか。
『見ているこっちがヒヤヒヤする』と身震いする中、アイリスは次々と攻撃を仕掛けていく。
が、ルパート殿下には当たらない。
さすがは戦場経験者とでも言うべきか、アイリスの動きを全て見切り、回避していた。
それも、ほんの僅かな動きで。
「もっと脇を締めろ。それから、全身を使え。お前の武器は拳と蹴りだけか?」
的確なアドバイスを与えながら、ルパート殿下は素早くアイリスの背後に回る。
と同時に、首を軽く掴んだ。
「こうなった時、どうする?考える時間はないぞ。相手はお前に反撃する暇など与えず、首を絞めるなり動脈を切るなりするからな」
『ほら、早く動け』と言い放ち、ルパート殿下は少しばかり手に力を込めた。
その瞬間、アイリスは肘を打ち込むものの……案の定、避けられる。
「及第点ではあるが、なかなかいい動きだ。だが、女である以上力では男に敵わない。だから、狙うなら急所だ。さっきのシチュエーションだと、目が一番いいな。素手じゃ、心臓や首筋などの急所は狙えないし」
「はい」
思ったより本格的……というか実践的なやり方に気を良くしたのか、アイリスは素直に従う姿勢を見せた。
表情も普段より、活き活きして見える。
そして、何より────
「────着実に上達しているな」
そう言って、私の隣に立ったのは祖父であるフランシス・ジェフ・エーデルだった。
どうやら、休憩ついでに様子を見に来てくれたらしい。
祖父もちょっと心配だったのだろう。
「ええ。前々から運動神経のいい子だとは思っていましたが、まさかここまでとは……」
ルパート殿下のアドバイスを全て吸収しているアイリスに、私はスッと目を細める。
礼儀作法やマナーの講義からやれば出来る子であることは分かっていたものの、正直こんなに優秀だとは思ってなかった。
『体術を習わせたのは正解だったかも』と思案する中、祖父はゆるりと口角を上げる。
「何か武器を持たせてみるのも、いいかもしれんな。簡単な護身術を教える程度じゃ、満足せんだろう────師も弟子も」
明らかに楽しんでいる様子のルパート殿下とアイリスを見つめ、祖父は『こりゃ、化けるぞ』と呟いた。
かと思えば、踵を返す。
どうやら、そろそろ仕事に戻るようだ。
「アイリスに合う武器は剣と鞭だな。そんな気がする」
「では、とりあえずその二つを用意しておきます」
「ああ」
『予算案はこちらで組んでおく』と言い残し、祖父は建物の中へ戻って行った。
さて、ヴィンセントに頼んでいい鍛冶師を紹介してもらわなくちゃ。
『せめて、初回くらいは傍に居た方がいいだろう』との判断で、私は見学を決め込む。
数歩後ろに下がる私の前で、ルパート殿下は早速講義を始めた。
かと思えば、説明もほどほどに実践へ移る。
『とにかく、掛かってこい』と示す彼を前に、アイリスは一瞬の躊躇いもなく拳を繰り出した。
か、仮にも相手は第三皇子なのに……アイリスは本当に容赦ないというか、なんというか。
『見ているこっちがヒヤヒヤする』と身震いする中、アイリスは次々と攻撃を仕掛けていく。
が、ルパート殿下には当たらない。
さすがは戦場経験者とでも言うべきか、アイリスの動きを全て見切り、回避していた。
それも、ほんの僅かな動きで。
「もっと脇を締めろ。それから、全身を使え。お前の武器は拳と蹴りだけか?」
的確なアドバイスを与えながら、ルパート殿下は素早くアイリスの背後に回る。
と同時に、首を軽く掴んだ。
「こうなった時、どうする?考える時間はないぞ。相手はお前に反撃する暇など与えず、首を絞めるなり動脈を切るなりするからな」
『ほら、早く動け』と言い放ち、ルパート殿下は少しばかり手に力を込めた。
その瞬間、アイリスは肘を打ち込むものの……案の定、避けられる。
「及第点ではあるが、なかなかいい動きだ。だが、女である以上力では男に敵わない。だから、狙うなら急所だ。さっきのシチュエーションだと、目が一番いいな。素手じゃ、心臓や首筋などの急所は狙えないし」
「はい」
思ったより本格的……というか実践的なやり方に気を良くしたのか、アイリスは素直に従う姿勢を見せた。
表情も普段より、活き活きして見える。
そして、何より────
「────着実に上達しているな」
そう言って、私の隣に立ったのは祖父であるフランシス・ジェフ・エーデルだった。
どうやら、休憩ついでに様子を見に来てくれたらしい。
祖父もちょっと心配だったのだろう。
「ええ。前々から運動神経のいい子だとは思っていましたが、まさかここまでとは……」
ルパート殿下のアドバイスを全て吸収しているアイリスに、私はスッと目を細める。
礼儀作法やマナーの講義からやれば出来る子であることは分かっていたものの、正直こんなに優秀だとは思ってなかった。
『体術を習わせたのは正解だったかも』と思案する中、祖父はゆるりと口角を上げる。
「何か武器を持たせてみるのも、いいかもしれんな。簡単な護身術を教える程度じゃ、満足せんだろう────師も弟子も」
明らかに楽しんでいる様子のルパート殿下とアイリスを見つめ、祖父は『こりゃ、化けるぞ』と呟いた。
かと思えば、踵を返す。
どうやら、そろそろ仕事に戻るようだ。
「アイリスに合う武器は剣と鞭だな。そんな気がする」
「では、とりあえずその二つを用意しておきます」
「ああ」
『予算案はこちらで組んでおく』と言い残し、祖父は建物の中へ戻って行った。
さて、ヴィンセントに頼んでいい鍛冶師を紹介してもらわなくちゃ。
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