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第一章
神聖力①
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◇◆◇◆
アイリスがルパート殿下の講義を受けるようになってから、早二週間。
彼女は剣と鞭を自在に操り、ルパート殿下と普通に手合わせ出来るレベルまで登り詰めていた。
と言っても、詰め込み教育で実践重視のためまだ欠けている部分は多いが。
それでも、脅威の成長スピードである。
先日、様子を見に来たヴィンセントも驚いていた。
この調子なら、暗殺者の一人や二人くらい簡単に倒せそうね。
もちろん、そういう状況にならないのが一番だけど。
『やっぱり、実践と実戦じゃ違うだろうし』と考えつつ、私は書斎に設置した黒板を一瞥する。
と同時に、前を向いた。
席へ着いているアイリスを見据え、パンッと手を叩く。
「それじゃあ、今日は神聖力について説明していくわね」
ルパート殿下の都合によりお休みとなった体術の講義を埋めるため、私は教鞭を執った。
チョーク片手に黒板へ向き直り、必要な情報を書き記していく。
「神聖力は魔力と同じくらい有名なエネルギーで、主に神様へ仕える神官達が使っているの。何故か分かる?」
「神様に関係する力だから?」
『神聖力と言うくらいだし』と答えるアイリスに、私は小さく首を縦に振った。
「正解よ。神聖力は神様より与えられし力で、祈りによって得られるの。だから、基本的に誰でも力を得ることが出来るのだけど、かなり一生懸命祈らないとダメ。それこそ、一日中祈祷室に籠るくらいの勢いでね」
かなりの努力と忍耐が必要であることを示し、私は黒板に二つの丸を描いた。
一方を神聖力の総量とし、もう一方を魔力の最大量と記載する。
「あと、神聖力は魔力と違って消費しても回復出来ないの。また祈って、その分を補わなきゃいけないってこと」
「面倒臭そうね」
消耗系の力だと知るなり少しばかり眉を顰め、アイリスは『割に合わないじゃない』と溜め息を零す。
本当の意味で力が身につく訳じゃない神聖力の在り方に、不満を抱いているようだ。
『訓練して体を鍛えた方が、よっぽどいい』と述べる彼女の前で、私は苦笑を漏らす。
「まあ、普通はそう感じるわよね。だから、よっぽど信心深い人じゃないと手に入らない力なのよ。ところで、アイリスは神様に祈りを捧げたことって……」
「ない」
「だと思ったわ。でも、一応使い方と用途について教えておくわね」
『どこかで役に立つかもしれないから』と言い、私は黒板へ文章を書き込んでいく。
「神聖力で出来ることは、主に治癒と防御と浄化の三つ。治癒はその名の通り、傷を癒せることね。次に防御についてだけど、これは結界を張れることだと思ってくれればいいわ。最後に浄化。これは作物の成長を促したり、汚れたものを綺麗にしたりすることが出来るみたい」
『どれも使い手によって、効力はまちまちだけど』と補足しつつ、私は一旦チョークを置いた。
と同時に、後ろの方を振り返る。
「それで使い方についてだけど、具体的に何をどうしたいのか想像しながら祈るだけとのことよ」
神官より直接聞いた話を思い返し、私は『無詠唱で使えるなんて凄いわよね』と肩を竦めた。
魔法じゃ、こうはならないから。
『精霊語の内容から、どんな魔法を使うかバレることもあるし』と思案していると、アイリスがふとペンを置く。
「ふ~ん?じゃあ────」
アイリスがルパート殿下の講義を受けるようになってから、早二週間。
彼女は剣と鞭を自在に操り、ルパート殿下と普通に手合わせ出来るレベルまで登り詰めていた。
と言っても、詰め込み教育で実践重視のためまだ欠けている部分は多いが。
それでも、脅威の成長スピードである。
先日、様子を見に来たヴィンセントも驚いていた。
この調子なら、暗殺者の一人や二人くらい簡単に倒せそうね。
もちろん、そういう状況にならないのが一番だけど。
『やっぱり、実践と実戦じゃ違うだろうし』と考えつつ、私は書斎に設置した黒板を一瞥する。
と同時に、前を向いた。
席へ着いているアイリスを見据え、パンッと手を叩く。
「それじゃあ、今日は神聖力について説明していくわね」
ルパート殿下の都合によりお休みとなった体術の講義を埋めるため、私は教鞭を執った。
チョーク片手に黒板へ向き直り、必要な情報を書き記していく。
「神聖力は魔力と同じくらい有名なエネルギーで、主に神様へ仕える神官達が使っているの。何故か分かる?」
「神様に関係する力だから?」
『神聖力と言うくらいだし』と答えるアイリスに、私は小さく首を縦に振った。
「正解よ。神聖力は神様より与えられし力で、祈りによって得られるの。だから、基本的に誰でも力を得ることが出来るのだけど、かなり一生懸命祈らないとダメ。それこそ、一日中祈祷室に籠るくらいの勢いでね」
かなりの努力と忍耐が必要であることを示し、私は黒板に二つの丸を描いた。
一方を神聖力の総量とし、もう一方を魔力の最大量と記載する。
「あと、神聖力は魔力と違って消費しても回復出来ないの。また祈って、その分を補わなきゃいけないってこと」
「面倒臭そうね」
消耗系の力だと知るなり少しばかり眉を顰め、アイリスは『割に合わないじゃない』と溜め息を零す。
本当の意味で力が身につく訳じゃない神聖力の在り方に、不満を抱いているようだ。
『訓練して体を鍛えた方が、よっぽどいい』と述べる彼女の前で、私は苦笑を漏らす。
「まあ、普通はそう感じるわよね。だから、よっぽど信心深い人じゃないと手に入らない力なのよ。ところで、アイリスは神様に祈りを捧げたことって……」
「ない」
「だと思ったわ。でも、一応使い方と用途について教えておくわね」
『どこかで役に立つかもしれないから』と言い、私は黒板へ文章を書き込んでいく。
「神聖力で出来ることは、主に治癒と防御と浄化の三つ。治癒はその名の通り、傷を癒せることね。次に防御についてだけど、これは結界を張れることだと思ってくれればいいわ。最後に浄化。これは作物の成長を促したり、汚れたものを綺麗にしたりすることが出来るみたい」
『どれも使い手によって、効力はまちまちだけど』と補足しつつ、私は一旦チョークを置いた。
と同時に、後ろの方を振り返る。
「それで使い方についてだけど、具体的に何をどうしたいのか想像しながら祈るだけとのことよ」
神官より直接聞いた話を思い返し、私は『無詠唱で使えるなんて凄いわよね』と肩を竦めた。
魔法じゃ、こうはならないから。
『精霊語の内容から、どんな魔法を使うかバレることもあるし』と思案していると、アイリスがふとペンを置く。
「ふ~ん?じゃあ────」
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