私に成り代わって嫁ごうとした妹ですが、即行で婚約者にバレました

あーもんど

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第一章

第二皇子の嫌味②

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「あー……狩猟大会の運営を任されている、マーティン・エド・イセリアルだ。お前達、今日はよく来てくれた」

 気怠げな様子で挨拶を切り出し、マーティン殿下はおもむろに腕を組む。

「今回の狩猟大会では、珍しい動物も何匹か放っているから高得点を目指して頑張ってくれ。まあ、目の付けどころの悪い奴らではそんなの見分けすらつかないだろうが」

 これでもかというほど敵意を剥き出しにするマーティン殿下は、あからさまな嫌味を零した。
お前達の目は節穴だ、と……君主選びを間違えたんだ、と。
『分かりやすい挑発ね』と苦笑いする中、マーティン殿下の挨拶は終わり、開会式も幕を閉じる。

「さて、僕達もさっさと準備して森に入ろうか」

 黒の騎士服に身を包むヴィンセントは、“混沌を律する剣”と普通の剣を腰に差し、ニッコリ笑った。
準備万端であることをアピールする彼の前で、アイリスは我が家の紋章が入ったマントを羽織る。

「ええ、行きましょう」

 初めての狩りに心躍らせているのか、アイリスは若干声を弾ませた。
心做しか、瞳も輝いているように見える。
『やる気に満ち溢れているわね』と肩を竦める中、ルパート殿下が剣片手に現れた。

「準備はいいか?」

「「はい」」

「では、行こう」

 ゾロゾロと森の中に入っていく各派閥の令息達を見据え、ルパート殿下は歩き出す。
今回の会場はそこまで広くない上、障害物が多いため馬を置いていくようだ。
森に向かって真っ直ぐ進んでいく彼に、ヴィンセントとアイリスもついていく。

「ルパート殿下、ヴィンセント、アイリスどうかお気をつけて」

「ああ。アイリス嬢は必ず無傷で返す」

「セシリアこそ、気をつけてね。他の派閥から、何か言われても無視するんだよ?」

「お姉様、私もっと強くなって帰ってくるわ。楽しみにしていて」

 思い思いの言葉を投げ掛け、三人は森の中へ足を踏み入れた。
かと思えば、直ぐに姿は見えなくなる。
『この森は本当に鬱蒼としているからなぁ』と思案しつつ、私はエーデル公爵家のテントへ戻った。
ソファとテーブルの置かれた空間を前に、私は腕を組む。

 さて、これからどうしようかしら?
通常は他家のご令嬢を呼んでお茶したり、警備中の騎士達を労ったりするのだけど……今の立場を考えると、ちょっとね。
無理に交流の場を広げても、得られるものは何もなさそう。

「大人しく、テントに引きこもるべきかしらね」

 たとえ、他の派閥からアクションを起こされても我が家は公爵家なので、ある程度スルー出来る。
それこそ、皇族でも来ない限りは……

「────セシリアお嬢様、第一皇子殿下と第二皇子殿下がお越しです」

 嗚呼、なんてことなの……。

 一瞬にして引きこもり計画は実行不可能となり、私は内心頭を抱える。
『しかも、二人同時になんて……』と項垂れ、目頭を押さえた。

 どちらを先にお通しするかによって、今後の流れが変わってくる……。
エレン殿下を先に通せば、当然マーティン殿下はお怒りになるだろうし……だからと言って、マーティン殿下を先に通せば、エレン殿下との共闘は難しくなるかもしれない。
つい先程、『第二皇子派を共に倒しましょう』と誘ったくせにマーティン殿下を優先するなんて、不信感しか与えないもの。

 『どうしよう……?』と困り果てる私は、チラリと出入り口の方を振り返る。

「斯くなる上は────」
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