私に成り代わって嫁ごうとした妹ですが、即行で婚約者にバレました

あーもんど

文字の大きさ
93 / 208
第一章

走馬灯《アナスタシア side》②

しおりを挟む
「生に執着するだけの化け物だな、私は」

 自嘲気味に吐き捨てたその言葉は、実に的を射ていて────それから十数年、私はただ死なないために悪事を働いてきた。
どんな汚れ仕事も、屈辱も、痛みも甘んじて受け入れ……神殿の暗部としての人生を歩む。
特に不満などはなかったが……ひたすら、虚しかった。

 ────私は何で生きているんだろう?

 そんな疑問が何度も脳裏を過ぎる中、私は神殿の上層部に呼び出される。
そこで、告げられたのは

「アナスタシア、君にはこれからローガン・アンディ・エーデルに近づいてもらう」

 という、新たな任務の内容だった。
『またしても色仕掛けか』と落胆しつつ、私は必要な情報だけ貰って任務へ取り掛かる。
今回は長期になるとのことだったので、気合いを入れて臨んだが……ローガンの陥落は早かった。

 しかも、ラッキーなことに住居など諸々手配してくれたため、少しの間神殿と距離を置くことに成功。
まあ、定期的に訪問してくるので逃亡は難しいが。
それでも、こうして羽を伸ばして過ごせるのは実に十数年ぶりだった。
『お貴族さまさまね』と思いつつ、私はしばらくローガンの愛人を演じ続ける。
そんな時────妊娠が発覚した。

 最近、なんだか体の調子が悪いと思ったら……。

「どうしよう?堕胎薬は準備に時間か掛かるって、言うし……」

 『任務遂行に支障が……』と悩み、私は口元を押さえる。
何とも言えない倦怠感と吐き気に耐えながら、蹲った。

 妊娠したと知ったら、ローガンはもう会ってくれないかもしれない……相続や後継などの問題で、愛人との子供を疎む貴族は多いから。
厄介事を嫌って捨てられでもしたら、神殿の上層部になんと言われるか……。
いや、ただ文句を言われるだけならまだいい……最悪なのは、役立たずの烙印を押されて処分されること。

「とにかく、妊娠のことは隠し通してさっさと堕胎しないと」

 『私の命が懸かっている』と決心し、ローガンの訪問や神官の監視を何とかやり過ごした。
誰にもバレないよう細心の注意を払う中、ようやく堕胎薬が届けられる。

「これでやっと解放される」

 ホッと息を吐き出して瓶の蓋に手を掛けると────トクンッと、私のものじゃない小さな鼓動が聞こえた……ような気がした。

「き、気のせい……気のせいだから」

 半ば自分に言い聞かせるようにして呟き、私は蓋を開ける。
すると、また小さな鼓動がお腹から伝わってくる。
その瞬間────私は考えるよりも先に、堕胎薬を投げ捨てていた。
パリンッと音を立てて割れるソレを前に、私はお腹を抱え込む。

「そう、よね……生きたい、わよね……うん……」

 我が子の意志を……願いを感じ取り、私は大粒の涙を流した。
自分でもよく分からないが、色んな感情が一気に溢れてきて……十数年ぶりに声を上げて、わんわん泣く。

「わ、たしも……私も貴方を産みたい……産みたいよ……」
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

(完結)私より妹を優先する夫

青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。 ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。 ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

【完結】嫌われ公女が継母になった結果

三矢さくら
恋愛
王国で権勢を誇る大公家の次女アデールは、母である女大公から嫌われて育った。いつか温かい家族を持つことを夢見るアデールに母が命じたのは、悪名高い辺地の子爵家への政略結婚。 わずかな希望を胸に、華やかな王都を後に北の辺境へと向かうアデールを待っていたのは、戦乱と過去の愛憎に囚われ、すれ違いを重ねる冷徹な夫と心を閉ざした継子だった。

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

妹が公爵夫人になりたいようなので、譲ることにします。

夢草 蝶
恋愛
 シスターナが帰宅すると、婚約者と妹のキスシーンに遭遇した。  どうやら、妹はシスターナが公爵夫人になることが気に入らないらしい。  すると、シスターナは快く妹に婚約者の座を譲ると言って──  本編とおまけの二話構成の予定です。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

処理中です...