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第二章
貧民街②
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「ちゃんと覚えている」
『無闇に暴れるつもりはない』と主張し、ルパート殿下は腕を組む。
事前の打ち合わせ通り動くことを示す彼の前で、ヴィンセントは少しばかり表情を和らげた。
かと思えば、前を向く。
そして、郊外のある方向へ進むと、不意に足を止めた。
「恐らく、彼女の言っていた所はこの辺りだと思うよ」
すぐそこにある防壁を一瞥し、ヴィンセントは周囲を見回す。
すると、アイリスやルパート殿下もつられて視線をさまよわせた。
「お母様は郊外に一番近い木の根元と言っていたけど……」
「案外、木が多いな」
今にも枯れてしまいそうなものや既に伐採されたものも含めて二十を越える候補に、私達は目眩を覚える。
最悪の場合、全ての根元を掘り起こさないといけないため。
『とんでもない重労働になりそう……』と思い悩む中、アイリスはとある木の根元へ足を運んだ。
防壁にピッタリくっつく形で生えるソレを前に、彼女は
「多分、これだと思う」
と、呟いた。
既に伐採されて木目を晒すソレをまじまじと見つめ、アイリスは土へ手を伸ばす。
恐らく、掘り起こすつもりなのだろう。
「手伝おう」
ルパート殿下は素早くアイリスの隣に回り、腰を下ろした。
かと思えば、汚れることも厭わず素手で木の根元を掘る。
黙々と土を掻き分ける彼の前で、ヴィンセントはこちらへ手を差し伸べた。
「じゃあ、僕達は見張りでもしようか」
『この現場を誰かに見られる訳にはいかない』と主張するヴィンセントに、私は目を剥く。
別に役割分担に驚いている訳じゃない。
ただ、アイリスの行動を容認しているのが信じられないだけだ。
いつもなら、『勝手に話を進めないで』と制止しているだろうから。
アイリスの勘を信じているのかしら?それとも、単に見当がつかないから任せているだけ?
『場所の特定は難しそうだものね』と思案しつつ、私はヴィンセントの手を取る。
「ええ、そうしましょう」
────と、返事してから数十分。
私は周辺の警戒に当たり、こちらへ来そうな人を見つける度ヴィンセントへ報告していた。
さすがに女一人で、貧民街の住民へ接触するのは危ないため。
追い払う役はヴィンセントに一任している。
と言っても、手荒な真似は一切していないが。
ただ、軽く声を掛けて遠くへ行くよう誘導しているだけ。
『あっちで炊き出しやっているよ』とか、『この先で野犬が出たから、気をつけて』とか言って。
そろそろ、アイリス達は木の根元を掘り起こした頃かしら?
『素手とはいえ、もう大分作業が進んでいる筈』と思い、私は後ろを振り向いた。
と同時に、アイリスが顔を上げる。
「────あった!」
『無闇に暴れるつもりはない』と主張し、ルパート殿下は腕を組む。
事前の打ち合わせ通り動くことを示す彼の前で、ヴィンセントは少しばかり表情を和らげた。
かと思えば、前を向く。
そして、郊外のある方向へ進むと、不意に足を止めた。
「恐らく、彼女の言っていた所はこの辺りだと思うよ」
すぐそこにある防壁を一瞥し、ヴィンセントは周囲を見回す。
すると、アイリスやルパート殿下もつられて視線をさまよわせた。
「お母様は郊外に一番近い木の根元と言っていたけど……」
「案外、木が多いな」
今にも枯れてしまいそうなものや既に伐採されたものも含めて二十を越える候補に、私達は目眩を覚える。
最悪の場合、全ての根元を掘り起こさないといけないため。
『とんでもない重労働になりそう……』と思い悩む中、アイリスはとある木の根元へ足を運んだ。
防壁にピッタリくっつく形で生えるソレを前に、彼女は
「多分、これだと思う」
と、呟いた。
既に伐採されて木目を晒すソレをまじまじと見つめ、アイリスは土へ手を伸ばす。
恐らく、掘り起こすつもりなのだろう。
「手伝おう」
ルパート殿下は素早くアイリスの隣に回り、腰を下ろした。
かと思えば、汚れることも厭わず素手で木の根元を掘る。
黙々と土を掻き分ける彼の前で、ヴィンセントはこちらへ手を差し伸べた。
「じゃあ、僕達は見張りでもしようか」
『この現場を誰かに見られる訳にはいかない』と主張するヴィンセントに、私は目を剥く。
別に役割分担に驚いている訳じゃない。
ただ、アイリスの行動を容認しているのが信じられないだけだ。
いつもなら、『勝手に話を進めないで』と制止しているだろうから。
アイリスの勘を信じているのかしら?それとも、単に見当がつかないから任せているだけ?
『場所の特定は難しそうだものね』と思案しつつ、私はヴィンセントの手を取る。
「ええ、そうしましょう」
────と、返事してから数十分。
私は周辺の警戒に当たり、こちらへ来そうな人を見つける度ヴィンセントへ報告していた。
さすがに女一人で、貧民街の住民へ接触するのは危ないため。
追い払う役はヴィンセントに一任している。
と言っても、手荒な真似は一切していないが。
ただ、軽く声を掛けて遠くへ行くよう誘導しているだけ。
『あっちで炊き出しやっているよ』とか、『この先で野犬が出たから、気をつけて』とか言って。
そろそろ、アイリス達は木の根元を掘り起こした頃かしら?
『素手とはいえ、もう大分作業が進んでいる筈』と思い、私は後ろを振り向いた。
と同時に、アイリスが顔を上げる。
「────あった!」
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