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第二章
貧民街③
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「────あった!」
土埃に塗れた小さな箱を持ち上げ、アイリスは歓喜とも安堵とも取れる表情を浮かべた。
すると、横からルパート殿下が手を伸ばす。
「とりあえず、中身を確認しろ。まだこちらの探していたもの、と決まった訳じゃない」
『手紙を視認するまでは、気を抜くな』と言い、ルパート殿下は箱についた土や泥を手で払った。
早く蓋を開けるよう促す彼の前で、アイリスはスッと目を細める。
「はい、そうですね。でも────これはきっとお母様のものだと思います」
確信を持った様子でそう断言し、アイリスは箱の蓋に手を掛けた。
かと思えば、ゆっくりと持ち上げる。
「ほら、やっぱり」
露わになった箱の中身を見つめ、アイリスは僅かに頬を緩めた。
と同時に、こちらを向く。
「お姉様、ヴィンセント様、無事に手紙を発見しました。引き上げましょう」
────その言葉を合図に、私達は帰る支度を整えて貧民街を後にした。
無論、掘り起こした土は全て元に戻している。
痕跡を残したって、いいことはないから。
『おかげで、土だらけになっちゃったけど』と思いつつ、エーテル公爵家の屋敷へ帰還。
改めて、箱の中身を確認した。
「入っていたのは、一通の手紙だけか」
客室のテーブルに置いた継母の遺品を見やり、ヴィンセントは顎に手を当てる。
どうするか、迷うように。
多分、継母の遺書とも言える代物を第三者が勝手に改めていいのか分からないのだろう。
でも、だからと言って重要な情報が書き記されている可能性の高いソレを放置する訳にもいかない。
「アイリス嬢、良ければこの手紙を読み上げてくれるかい?」
『もし、辛いなら代わるけど』と述べるヴィンセントに、アイリスは小さく首を横に振る。
箱に入った手紙をじっと眺めながら。
「私が読んでいいのなら、是非」
神殿からの襲撃の重要資料という意味合いが強いからか、アイリスは控えめに応じた。
アメジストの瞳に悲嘆と歓喜を滲ませつつ、手紙を手に取る。
と同時に、封を切った。
「それでは、始めます」
土埃に塗れた小さな箱を持ち上げ、アイリスは歓喜とも安堵とも取れる表情を浮かべた。
すると、横からルパート殿下が手を伸ばす。
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『手紙を視認するまでは、気を抜くな』と言い、ルパート殿下は箱についた土や泥を手で払った。
早く蓋を開けるよう促す彼の前で、アイリスはスッと目を細める。
「はい、そうですね。でも────これはきっとお母様のものだと思います」
確信を持った様子でそう断言し、アイリスは箱の蓋に手を掛けた。
かと思えば、ゆっくりと持ち上げる。
「ほら、やっぱり」
露わになった箱の中身を見つめ、アイリスは僅かに頬を緩めた。
と同時に、こちらを向く。
「お姉様、ヴィンセント様、無事に手紙を発見しました。引き上げましょう」
────その言葉を合図に、私達は帰る支度を整えて貧民街を後にした。
無論、掘り起こした土は全て元に戻している。
痕跡を残したって、いいことはないから。
『おかげで、土だらけになっちゃったけど』と思いつつ、エーテル公爵家の屋敷へ帰還。
改めて、箱の中身を確認した。
「入っていたのは、一通の手紙だけか」
客室のテーブルに置いた継母の遺品を見やり、ヴィンセントは顎に手を当てる。
どうするか、迷うように。
多分、継母の遺書とも言える代物を第三者が勝手に改めていいのか分からないのだろう。
でも、だからと言って重要な情報が書き記されている可能性の高いソレを放置する訳にもいかない。
「アイリス嬢、良ければこの手紙を読み上げてくれるかい?」
『もし、辛いなら代わるけど』と述べるヴィンセントに、アイリスは小さく首を横に振る。
箱に入った手紙をじっと眺めながら。
「私が読んでいいのなら、是非」
神殿からの襲撃の重要資料という意味合いが強いからか、アイリスは控えめに応じた。
アメジストの瞳に悲嘆と歓喜を滲ませつつ、手紙を手に取る。
と同時に、封を切った。
「それでは、始めます」
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