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第二章
神殿からの接触③
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「では、行きましょうか」
────という言葉を合図に、私とアイリスは一階へ降りた。
本当は祖父も連れて来たかったのだが……事情聴取のため帝都に来ているという建前のため、あまり人前に出せないのだ。
その代わり、彼にはヴィンセント達への連絡を頼んである。
『今頃、伝書鳩を飛ばしている頃だろう』と思いつつ、私はアイリスと共に応接室を訪れる。
と同時に、軽くお辞儀した。
「お待たせしました」
「いえいえ、お気になさらないでください。突然訪問したこちらが、悪いのですから」
『応対していただけただけでも、有り難い』と言い、神殿の者は席を立った。
かと思えば、優雅に一礼する。
「自分は神官のゲレルと申します。以後お見知りおきを」
白いローブに身を包む茶髪の男性は、とても感じのいい人に見えた。
少なくとも、『こちらの腹の中を探ってやろう』という嫌らしさは感じない。
とはいえ、油断大敵ね。上手く猫を被っているだけかもしれないから。
『信用しちゃダメ』と自分に言い聞かせ、私はゲレル神官の方へ向き直る。
「これはご丁寧にどうも。私はセシリア・リゼ・エーデルと言います。こちらは妹のアイリス・レーナ・エーデル」
「初めまして」
アイリスは極力いつも通り振る舞い、平静を貫く。
思ったよりちゃんと感情を隠せている彼女を前に、私は内心安堵した。
『神官を見た途端、不機嫌になったらどうしようかと思ったわ』と思いつつ、部屋の奥へ足を運ぶ。
「どうぞ、お掛けになってください」
相手に着席を勧めてから、私はアイリスと一緒に三人掛けのソファへ腰を下ろした。
すると、ゲレル神官も椅子に座る。
「セシリア様、アイリス様。この度は本当にご愁傷様でした。アナスタシア様のご冥福をお祈りいたします」
おもむろに両手を組み、ゲレル神官はオレンジの瞳に悲嘆を滲ませた。
本気で継母の死を悔やんでいるように見える彼の前で、私とアイリスは顔を見合わせる。
これも演技なのか?と困惑しながら。
「えっと、恐れ入ります」
「お心遣い、ありがとうございます」
一先ず無難な返事に留める私達に対し、ゲレル神官はそっと眉尻を下げた。
かと思えば、少しばかり身を乗り出す。
「それで、あの……アナスタシア様の死について、話しておきたいことがあるのですが」
おずおずといった様子で片手を上げ、ゲレル神官はこちらの反応を窺った。
『もし、今聞きたくないなら出直します』と述べる彼を前に、私とアイリスは表情を引き締める。
やはり目的はこちらに探りを入れることか、と確信して。
『礼儀正しい態度は、こちらを油断させる罠』と考えつつ、私達は
「何でしょう?」
「遠慮なく、仰ってください」
と、話の先を促した。
何を言われても動じぬよう心を落ち着ける私とアイリスの前で、ゲレル神官は表情を硬くする。
と同時に、真っ直ぐこちらを見つめた。
「アナスタシア様のお命を奪ったのは────神殿の暗部の人間です」
「「!?」」
私とアイリスはハッと大きく息を呑み、固まった。
だって、まさか神殿の人間が犯行を自供するなんて思わなかったから。
『探りを入れる』にしては、あまりにも大胆……というか、直球すぎる。
これで、もし私達が真実を知らなかったら余計な問題を増やすだけよ?
それなのに、何故……。
相手の真意が掴めず、私は視線をさまよわせた。
どこを見たって、その答えは見つからないだろうに。
「驚くのも、無理ありません。ただ、これは事実です。信じてください」
────という言葉を合図に、私とアイリスは一階へ降りた。
本当は祖父も連れて来たかったのだが……事情聴取のため帝都に来ているという建前のため、あまり人前に出せないのだ。
その代わり、彼にはヴィンセント達への連絡を頼んである。
『今頃、伝書鳩を飛ばしている頃だろう』と思いつつ、私はアイリスと共に応接室を訪れる。
と同時に、軽くお辞儀した。
「お待たせしました」
「いえいえ、お気になさらないでください。突然訪問したこちらが、悪いのですから」
『応対していただけただけでも、有り難い』と言い、神殿の者は席を立った。
かと思えば、優雅に一礼する。
「自分は神官のゲレルと申します。以後お見知りおきを」
白いローブに身を包む茶髪の男性は、とても感じのいい人に見えた。
少なくとも、『こちらの腹の中を探ってやろう』という嫌らしさは感じない。
とはいえ、油断大敵ね。上手く猫を被っているだけかもしれないから。
『信用しちゃダメ』と自分に言い聞かせ、私はゲレル神官の方へ向き直る。
「これはご丁寧にどうも。私はセシリア・リゼ・エーデルと言います。こちらは妹のアイリス・レーナ・エーデル」
「初めまして」
アイリスは極力いつも通り振る舞い、平静を貫く。
思ったよりちゃんと感情を隠せている彼女を前に、私は内心安堵した。
『神官を見た途端、不機嫌になったらどうしようかと思ったわ』と思いつつ、部屋の奥へ足を運ぶ。
「どうぞ、お掛けになってください」
相手に着席を勧めてから、私はアイリスと一緒に三人掛けのソファへ腰を下ろした。
すると、ゲレル神官も椅子に座る。
「セシリア様、アイリス様。この度は本当にご愁傷様でした。アナスタシア様のご冥福をお祈りいたします」
おもむろに両手を組み、ゲレル神官はオレンジの瞳に悲嘆を滲ませた。
本気で継母の死を悔やんでいるように見える彼の前で、私とアイリスは顔を見合わせる。
これも演技なのか?と困惑しながら。
「えっと、恐れ入ります」
「お心遣い、ありがとうございます」
一先ず無難な返事に留める私達に対し、ゲレル神官はそっと眉尻を下げた。
かと思えば、少しばかり身を乗り出す。
「それで、あの……アナスタシア様の死について、話しておきたいことがあるのですが」
おずおずといった様子で片手を上げ、ゲレル神官はこちらの反応を窺った。
『もし、今聞きたくないなら出直します』と述べる彼を前に、私とアイリスは表情を引き締める。
やはり目的はこちらに探りを入れることか、と確信して。
『礼儀正しい態度は、こちらを油断させる罠』と考えつつ、私達は
「何でしょう?」
「遠慮なく、仰ってください」
と、話の先を促した。
何を言われても動じぬよう心を落ち着ける私とアイリスの前で、ゲレル神官は表情を硬くする。
と同時に、真っ直ぐこちらを見つめた。
「アナスタシア様のお命を奪ったのは────神殿の暗部の人間です」
「「!?」」
私とアイリスはハッと大きく息を呑み、固まった。
だって、まさか神殿の人間が犯行を自供するなんて思わなかったから。
『探りを入れる』にしては、あまりにも大胆……というか、直球すぎる。
これで、もし私達が真実を知らなかったら余計な問題を増やすだけよ?
それなのに、何故……。
相手の真意が掴めず、私は視線をさまよわせた。
どこを見たって、その答えは見つからないだろうに。
「驚くのも、無理ありません。ただ、これは事実です。信じてください」
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