私に成り代わって嫁ごうとした妹ですが、即行で婚約者にバレました

あーもんど

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第二章

教皇聖下の捕獲《ヴィンセント side》②

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「その代表格が、今ここに居るルパート・ロイ・イセリアル第三皇子殿下とゲレル神官だ」

 きちんと民衆に覚えてもらえるよう正式名称で紹介すると、人々は大きく息を呑む。
多分、『神官』という単語に反応したんだと思う。

「皇室と一部の神殿関係者が手を組んで行ったのなら、先程の話は恐らく真実じゃないかしら?」

「神殿関係者がわざわざ、こんな嘘つく必要ないものね……自分の首を絞めるようなものだから」

「つまり、ゲレル神官は子供達を助けるために皇室の手を借りたのか」

「神殿の体裁より、命を優先するなんて……さすがだな。これこそ、神の信徒のあるべき姿だ」

 これでもかというほどゲレル神官を持ち上げ、民衆は態度を軟化させる。
『悪いのは神殿全体じゃなくて、一部の人間だけ』と分かって、ホッとしているのだろう。
彼らにとって、神殿は心の拠り所なので。
それを悪だと断定して、自分の人生から切り離すのはかなりの苦行だ。

「ゲレル神官、彼らに何か一言でもいいので言葉を掛けてあげてください」

 小声で茶髪の男性に話し掛け、僕は『ほら』と促す。
ここでそれっぽいことを言っておけば、次期教皇は確実になるだろうから。
『そうなったら、協力者であるルパート殿下の株も上がる』と思案する中、彼は小さく深呼吸した。
かと思えば、真っ直ぐ前を見据える。

「身内の恥を晒すようで申し訳ないが、今の神殿の上層部は腐り切っている。でも、私はそれを変えたい。いや、取り戻したい。正義と平和を重んじる神殿の姿を。今回の騒動はその序章になれば、と思っている」

 飾らない言葉で思いを伝え、ゲレル神官は少しばかり身を乗り出した。

「まだまだ不安も混乱も大きいだろうが、どうか見守っていてほしい」

 『よろしく頼む』と言って、ゲレル神官は深々と頭を下げる。
愚直とも言うべき誠実な態度に、民衆はすっかり心を持って行かれた。
瞬く間に大きくなる歓声を前に、僕は『予想以上の効果だね』と内心苦笑する。
これではルパート殿下の出番がない、と肩を竦めて。
『まあ、最後に一言くらいもらおうか』と考えつつ、僕は隣に立つ紫髪の美青年を見上げた。

「ルパート殿下も、何かコメントを」

「ああ」

 事前に演説の打ち合わせをしていたからか、ルパート殿下はすんなり応じる。
と同時に、口を開いた。

「私、ルパート・ロイ・イセリアルは神殿の再生に協力を惜しまないことを誓おう。ゲレル神官、何か困ったことがあれば連絡してくれ」
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