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第二章
最後の尻拭い《アイリス side》②
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「まあ、息子の旅立ちに付き合ってやるのも悪くないか。どの道、儂も先が長くないしな」
小さく肩を竦めてそう言い、祖父はフッと笑みを漏らした。
「最後の息子の尻拭いと行こう」
アメジストの瞳に確かな意志と覚悟を宿し、祖父は“均衡を司りし杖”を構える。
どこか、凛とした表情を浮かべながら。
「アイリス。悪いが、あとのことは頼んだぞ。セシリア達にも、よろしく伝えておいてくれ」
「えっ?それって、どういう……?」
まるでもう自分は姉達と会えないかのように振る舞う祖父に、私は戸惑いを覚えた。
すると、彼はただ一言
「すまない」
とだけ、口にする。
ますます訳が分からくて混乱する私を前に、祖父は困ったように笑った。
そして、手の甲で優しく私の頬を撫でる。
「お祖父様……」
なんだか物凄く嫌な予感がして、私は縋るように名前を呼んだ。
が、祖父はそれに応えることなく目を閉じる。
手に持った家宝を強く握り締めて。
「“均衡を司りし杖”────エンドレ、我が名はフランシス・ジェフ・エーデル。そなたの仕えしアダムの血を引く者。もし、この声を聞いているのなら世界の理を覆し、物事を塗り替え、事象を曖昧にする力を分け与えたまえ。そなたにのみ許された権能を、権限を、権利を委ねたまえ。我が願うは」
詠唱の終盤でおもむろに目を開け、祖父は顔を上げた。
「イセリアル帝国の皇城を……その建物を、一時間前の状態に戻すことなり」
「!?」
ここに来てようやく祖父の狙いが……謝罪の意味が分かり、私は大きく瞳を揺らした。
お祖父様は自分の命を代償にして、私を助けるつもりなんだ。
だって、こんな滅茶苦茶になった皇城を元に戻すなんて……一体、どれだけの魔力が必要になるか。
さすがの私でも無茶だと分かる行動に、衝撃と不安……それから、僅かな怒りを覚える。
命が懸かった選択を勝手にするなんてあんまりだ、と。
感情が昂るあまり泣きそうになる私を前に、祖父はそっと眉尻を下げた。
かと思えば、血を吐いて倒れる。
十数分前の父みたいに。
「お祖父様……!」
小さく肩を竦めてそう言い、祖父はフッと笑みを漏らした。
「最後の息子の尻拭いと行こう」
アメジストの瞳に確かな意志と覚悟を宿し、祖父は“均衡を司りし杖”を構える。
どこか、凛とした表情を浮かべながら。
「アイリス。悪いが、あとのことは頼んだぞ。セシリア達にも、よろしく伝えておいてくれ」
「えっ?それって、どういう……?」
まるでもう自分は姉達と会えないかのように振る舞う祖父に、私は戸惑いを覚えた。
すると、彼はただ一言
「すまない」
とだけ、口にする。
ますます訳が分からくて混乱する私を前に、祖父は困ったように笑った。
そして、手の甲で優しく私の頬を撫でる。
「お祖父様……」
なんだか物凄く嫌な予感がして、私は縋るように名前を呼んだ。
が、祖父はそれに応えることなく目を閉じる。
手に持った家宝を強く握り締めて。
「“均衡を司りし杖”────エンドレ、我が名はフランシス・ジェフ・エーデル。そなたの仕えしアダムの血を引く者。もし、この声を聞いているのなら世界の理を覆し、物事を塗り替え、事象を曖昧にする力を分け与えたまえ。そなたにのみ許された権能を、権限を、権利を委ねたまえ。我が願うは」
詠唱の終盤でおもむろに目を開け、祖父は顔を上げた。
「イセリアル帝国の皇城を……その建物を、一時間前の状態に戻すことなり」
「!?」
ここに来てようやく祖父の狙いが……謝罪の意味が分かり、私は大きく瞳を揺らした。
お祖父様は自分の命を代償にして、私を助けるつもりなんだ。
だって、こんな滅茶苦茶になった皇城を元に戻すなんて……一体、どれだけの魔力が必要になるか。
さすがの私でも無茶だと分かる行動に、衝撃と不安……それから、僅かな怒りを覚える。
命が懸かった選択を勝手にするなんてあんまりだ、と。
感情が昂るあまり泣きそうになる私を前に、祖父はそっと眉尻を下げた。
かと思えば、血を吐いて倒れる。
十数分前の父みたいに。
「お祖父様……!」
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