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第二章
最後の尻拭い《アイリス side》③
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「お祖父様……!」
悲鳴に近い声色で叫び、私は慌てて駆け寄ろうとした。
その瞬間────“均衡を司りし杖”が眩い光を放ち、皇城の再建……いや、逆行を始める。
「な、なにこれ……」
まるでパズルのピースが嵌るかのように元の位置へ戻っていく瓦礫を前に、私はたじろいだ。
その凄まじい力に、圧倒されてしまって。
ただ呆然と立ち尽くすことしか出来ない私を他所に、父はギシッと奥歯を噛み締める。
「っ……!あともうちょっと……だった、のに……!」
悔しそうにそう吐き捨て、父は眉間に皺を寄せた。
────と、ここで皇城の修復が完了する。
すっかり元通りになった地下牢の通路を前に、彼はより一層機嫌を悪くした。
「これでは……私の、命を……削っ、た意味が……」
自身の胸元を握り締め、父は道連れが失敗したことを嘆く。
『無駄死に』という事実を受け入れられずに居る彼の前で、祖父が床に肘をついて上体を起こした。
もう動く力なんて、ほとんど残っていない筈なのに。
「儂一つの……命で我慢……しろ……」
半ば這うようにして父の傍へ行き、祖父は横に寝転ぶ。
「と言っても……おま、え……は昔から……欲張りだっ、たから……納得し、ない……かも、しれないが……」
アメジストの瞳に僅かな憂いを滲ませ、祖父はおもむろに手を伸ばした。
すると、父は反射的に身を固くする。
『殴られる』とでも思ったのかもしれない。
でも────祖父がしたのは暴力行為なんかじゃなくて、
「!」
親子のスキンシップだった。
ハッとしたように息を呑む父は、撫でられた頭に自身の手を当てる。
と同時に、戸惑いを露わにした。
「な、ぜ……こんな……怒っ、て……いない、のか……?」
「いや、怒っては……いる……ぞ」
祖父はすかさず反論し、一つ息を吐く。
言動の端々に、複雑な気持ちを滲ませながら。
「こんな無茶……子供にさせ、たい……親、など居る訳……ない、だろう……」
「なっ……!?」
父は思わずといった様子で大きな声を上げると、途端に咳き込む。
多分、肺か喉を痛めてしまったんだと思う。
苦しそうに息をする彼の前で、祖父はそっと目を伏せた。
「あと、多くの人々を……巻き込ん、で……しまっ、たことに……関して、も……怒って……いる……」
何人か死んでいてもおかしくない事態のため、祖父は少しばかり眉を顰める。
地上の様子が気になるのか天井を見上げ、ちょっと物々しい雰囲気を放った。
「だが……それ、以上に……腹が立つ、のは……儂自身だ」
悲鳴に近い声色で叫び、私は慌てて駆け寄ろうとした。
その瞬間────“均衡を司りし杖”が眩い光を放ち、皇城の再建……いや、逆行を始める。
「な、なにこれ……」
まるでパズルのピースが嵌るかのように元の位置へ戻っていく瓦礫を前に、私はたじろいだ。
その凄まじい力に、圧倒されてしまって。
ただ呆然と立ち尽くすことしか出来ない私を他所に、父はギシッと奥歯を噛み締める。
「っ……!あともうちょっと……だった、のに……!」
悔しそうにそう吐き捨て、父は眉間に皺を寄せた。
────と、ここで皇城の修復が完了する。
すっかり元通りになった地下牢の通路を前に、彼はより一層機嫌を悪くした。
「これでは……私の、命を……削っ、た意味が……」
自身の胸元を握り締め、父は道連れが失敗したことを嘆く。
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もう動く力なんて、ほとんど残っていない筈なのに。
「儂一つの……命で我慢……しろ……」
半ば這うようにして父の傍へ行き、祖父は横に寝転ぶ。
「と言っても……おま、え……は昔から……欲張りだっ、たから……納得し、ない……かも、しれないが……」
アメジストの瞳に僅かな憂いを滲ませ、祖父はおもむろに手を伸ばした。
すると、父は反射的に身を固くする。
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「!」
親子のスキンシップだった。
ハッとしたように息を呑む父は、撫でられた頭に自身の手を当てる。
と同時に、戸惑いを露わにした。
「な、ぜ……こんな……怒っ、て……いない、のか……?」
「いや、怒っては……いる……ぞ」
祖父はすかさず反論し、一つ息を吐く。
言動の端々に、複雑な気持ちを滲ませながら。
「こんな無茶……子供にさせ、たい……親、など居る訳……ない、だろう……」
「なっ……!?」
父は思わずといった様子で大きな声を上げると、途端に咳き込む。
多分、肺か喉を痛めてしまったんだと思う。
苦しそうに息をする彼の前で、祖父はそっと目を伏せた。
「あと、多くの人々を……巻き込ん、で……しまっ、たことに……関して、も……怒って……いる……」
何人か死んでいてもおかしくない事態のため、祖父は少しばかり眉を顰める。
地上の様子が気になるのか天井を見上げ、ちょっと物々しい雰囲気を放った。
「だが……それ、以上に……腹が立つ、のは……儂自身だ」
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