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第二章
葬式と提案《ルパート side》③
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「それで、用件はなんだ?」
カーテンまできっちり閉まった密室空間を前に、私は再度質問を投げ掛けた。
すると、ヴィンセントは少し難しい顔をして口元に手を当てる。
が、意を決したように顔を上げた。
「端的に言うと、ルパート殿下に一つ確認したいことがあります」
「確認したいこと?」
思わず聞き返すと、ヴィンセントは小さく首を縦に振る。
「ええ。回りくどい言い方は好まないと思いますので、単刀直入にお伺いします。ルパート殿下は────アイリス嬢のことをどう思っていますか?」
「?」
質問の意図が理解出来ず、私は首を傾げて沈黙した。
『そもそも、何故いきなりアイリス嬢の話に?』と疑問を抱く私の前で、ヴィンセントは手を組む。
「アイリス嬢に対する想い……その種類と熱量をお聞きしたいんです」
「種類と熱量と言われても、普通に友人……いや、弟子?とにかく、大切に思っている」
自分でも妙に思うほど曖昧な回答に、私は表情を硬くした。
『適切な言葉が見つからない……』と悩む私を前に、ヴィンセントは自身の顎を撫でる。
「では、質問を変えます。ルパート殿下は困っているアイリス嬢を見たとき、どう思いますか?」
「『助けたい』と思う」
「それは自分の命が懸かった状況でも、ですか?」
「ああ」
間髪容れずに首を縦に振り、私は真っ直ぐ前を見据えた。
この気持ちに偽りはない、と示すように。
「なるほど。では、最後にもう一つだけ質問を」
ヴィンセントはそう前置きしてから、こう問い掛ける。
「アイリス嬢が自分以外の異性と恋仲になったり結婚したりすることについて、どう思いますか?」
『どう』って……そんなの────
「────凄く嫌だ」
考えるよりも先に言葉が口をついて出て、私は放心した。
今になって、ようやくアイリス嬢に対する想いを自覚したため。
「あぁ、そうか……私は────アイリス嬢のことを一人の女性として、愛しているのか」
違和感なく胸にストンと落ちてくる“答え”に、私は納得を示す。
『道理で最近、彼女のことばかり考えている訳だ』と思案する中、ヴィンセントはスッと目を細めた。
「そのお言葉を待っていました」
どこか満足そうに微笑み、ヴィンセントは私の手をそっと持ち上げる。
「ルパート殿下、アイリス嬢のことを出来るだけ支えてあげてください────彼女は近いうち、一人になるので」
「……はっ?」
思わぬ発言に動揺し、私は怪訝な表情を浮かべた。
と同時に、握られた手を引っ張り、ヴィンセントを引き寄せる。
「それはどういうことだ」
『アイリス嬢に何かするつもりなのか』と疑い、私は僅かに眉を顰めた。
ちょっと気が立っている私に対し、ヴィンセントは
「気になるなら、一緒に来ませんか?ちょうど、その話をエーデル公爵家でする予定なんです」
と、提案する。
『スケジュールは空いている筈ですよね』と話すヴィンセントを前に、私は一つ息を吐いた。
こいつ……最初から、それが狙いだったな。
『全く、回りくどいことを……』と思いつつ、私はアイリス嬢の様子を思い浮かべる。
話の全貌はまだよく分からないが、彼女が一人になるような事態になるなら……苦しむような事態になるなら、放置は出来ない。
『何か力になりたい』と思い立ち、私は黄金の瞳を見つめ返した。
「……分かった。行こう」
カーテンまできっちり閉まった密室空間を前に、私は再度質問を投げ掛けた。
すると、ヴィンセントは少し難しい顔をして口元に手を当てる。
が、意を決したように顔を上げた。
「端的に言うと、ルパート殿下に一つ確認したいことがあります」
「確認したいこと?」
思わず聞き返すと、ヴィンセントは小さく首を縦に振る。
「ええ。回りくどい言い方は好まないと思いますので、単刀直入にお伺いします。ルパート殿下は────アイリス嬢のことをどう思っていますか?」
「?」
質問の意図が理解出来ず、私は首を傾げて沈黙した。
『そもそも、何故いきなりアイリス嬢の話に?』と疑問を抱く私の前で、ヴィンセントは手を組む。
「アイリス嬢に対する想い……その種類と熱量をお聞きしたいんです」
「種類と熱量と言われても、普通に友人……いや、弟子?とにかく、大切に思っている」
自分でも妙に思うほど曖昧な回答に、私は表情を硬くした。
『適切な言葉が見つからない……』と悩む私を前に、ヴィンセントは自身の顎を撫でる。
「では、質問を変えます。ルパート殿下は困っているアイリス嬢を見たとき、どう思いますか?」
「『助けたい』と思う」
「それは自分の命が懸かった状況でも、ですか?」
「ああ」
間髪容れずに首を縦に振り、私は真っ直ぐ前を見据えた。
この気持ちに偽りはない、と示すように。
「なるほど。では、最後にもう一つだけ質問を」
ヴィンセントはそう前置きしてから、こう問い掛ける。
「アイリス嬢が自分以外の異性と恋仲になったり結婚したりすることについて、どう思いますか?」
『どう』って……そんなの────
「────凄く嫌だ」
考えるよりも先に言葉が口をついて出て、私は放心した。
今になって、ようやくアイリス嬢に対する想いを自覚したため。
「あぁ、そうか……私は────アイリス嬢のことを一人の女性として、愛しているのか」
違和感なく胸にストンと落ちてくる“答え”に、私は納得を示す。
『道理で最近、彼女のことばかり考えている訳だ』と思案する中、ヴィンセントはスッと目を細めた。
「そのお言葉を待っていました」
どこか満足そうに微笑み、ヴィンセントは私の手をそっと持ち上げる。
「ルパート殿下、アイリス嬢のことを出来るだけ支えてあげてください────彼女は近いうち、一人になるので」
「……はっ?」
思わぬ発言に動揺し、私は怪訝な表情を浮かべた。
と同時に、握られた手を引っ張り、ヴィンセントを引き寄せる。
「それはどういうことだ」
『アイリス嬢に何かするつもりなのか』と疑い、私は僅かに眉を顰めた。
ちょっと気が立っている私に対し、ヴィンセントは
「気になるなら、一緒に来ませんか?ちょうど、その話をエーデル公爵家でする予定なんです」
と、提案する。
『スケジュールは空いている筈ですよね』と話すヴィンセントを前に、私は一つ息を吐いた。
こいつ……最初から、それが狙いだったな。
『全く、回りくどいことを……』と思いつつ、私はアイリス嬢の様子を思い浮かべる。
話の全貌はまだよく分からないが、彼女が一人になるような事態になるなら……苦しむような事態になるなら、放置は出来ない。
『何か力になりたい』と思い立ち、私は黄金の瞳を見つめ返した。
「……分かった。行こう」
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