婚約破棄?そもそも、貴方誰ですか?

あーもんど

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第三章

治療中のブラウンは

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「はっ....?それは本当なのか?」

「はい。事実で御座います。ダミアン陛下はブラウン王子が巻き起こした騒動の責任を取る形で退位することが決定されました」

 私───ブラウンは自室で治癒魔導師の治療を受けながら、ただ呆然とその報告を聞いていた。
 父上が退位....?私のせいで....?
 私がディアナに危害を加えようとしたから...?
 たったそれだけのことで父上が退位だなんて...一体どういうことなんだ!?
 私は確かにディアナに危害を加えようとしたが、あっちだって反撃してきた。同罪であろう?なのに何故こっちばかりが責任を問われるのだ!?

「ダミアン陛下が退位することにより、ブラウン王子への処罰はなしとなりました。あとでダミアン陛下に感謝の気持ちを伝えた方がよろしいかと」

 私への処罰はなし?そんなのは当たり前だ!
 私は悪いことなどしていないのだから、それが当然なのだ。
 だから、父上が退位する必要なんてこれぽっちもない!

「今すぐ会議に参加した者達を呼び戻せ!私を加えて、もう一度話し合いをする!」

 父上、ご安心ください!
 私が必ずやあなた様をお救い致しますから!
 今回の騒動はディアナの方にも非がある。私の右腕を燃やし尽くしたのもそうだが、あいつはフィルお兄様を誘惑したのだ。十分罪になり得るだろう。
 だが、そんな私の甘い考えはすぐに打ち砕かれることになる。

「やめておきなよ、ブラウン」

 声のした方へ視線を向けると、そこには部屋の扉に凭れ掛かっている金髪碧眼の美少年が居た。
 プレストンお兄様....!?
 いつの間にそこに....!?
 普段はとても無口なお兄様が私に声をかけることなんてまずない。
 感情が読めない無機質な瞳でプレストンお兄様は私を見つめる。

「今更足掻いたって意味ないよ。お前じゃフィルには敵わない....。恨むならフィルを怒らせた過去の自分を恨むんだね」

 プレストンお兄様はそう言うなり、私に背を向けた。
 こちらへ背を向けるとき、一瞬だけ睨まれたような気がするが.....気のせいだろう。
 感情が欠落した王子、と呼ばれるほど感情に疎いプレストンお兄様が私を憎んでいるなんて....そんなことあり得ない.....筈だよな?
 プレストンお兄様が出ていった扉の方を見つめながら、胸の中にある不安や焦りを取り払うように頭(かぶり)を振った。
 ただの見間違いだ。そうだ、そうに違いない。
 フィルお兄様だけじゃなく、プレストンお兄様にも嫌われているなんてことになったら私は耐えられない....。
 半ば自己暗示のように『あれは見間違いだ』と心の中で何度も何度も繰り返した。
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