婚約破棄?そもそも、貴方誰ですか?

あーもんど

文字の大きさ
29 / 75
第三章

婚約破棄

しおりを挟む
 翌日、私───ブラウンの婚約者だと名乗る人物が王宮を訪ねてきた。
 使用人に追い返せと命じた筈なのに私の目の前には今、そばかす女が居る。ついでにその母親も。

「お久し振りです、ブラウン王子。貴方の婚約者のジェイミー・ドローレンスです。本日は婚約破棄の手続きをしていただきたく、参上させて頂きました」

 こんなブスが私の婚約者だと?あり得ない。高貴な私にはもっと美しい女が似合うに決まっておる!
 最低でもディアナくらい可愛くなくてはな!
 ディアナを脳裏に思い浮かべるとそこからサラマンダーが連想され、どうしようもなく右腕が疼く。
 いや....正確には右腕の付け根が、だが。
 右腕は再生不可能だと国内随一の治癒魔導師たちに言われた。
 幸い、私は左利きだったためそこまで不自由な生活は送っていないが、それでも右腕がなくなったのは辛い。
 失くなった右腕を見る度に脳裏に甦るのはあのときの記憶。
 殺意が見え隠れする冷えきった瞳と圧倒的存在感と威圧感....。
 思い出すだけでも恐ろしい....。
 サラマンダー.....あいつだけは敵に回してはならない。
 多分....いや、確実に次は殺される....。
 死の恐怖に震える左手をギュッと強く握った。

「ブラウン王子も私との婚約は本意ではないと思います。ですので...」

「うるさいっ!黙れ!雌豚!」

「ぐっ!?」

 わざわざ私の近くまで来て婚約破棄について熱く語る豚の飛び出している腹に拳を叩き込んだ。
 強化魔法をかけていなかったので体が吹っ飛ぶことはなかったが、豚はその場で激しく咳き込んだ。

「げほげほっ....」

「ジェイミー!大丈夫!?怪我は!?」

 慌ててこの豚の母親が駆け寄って来るが、私は気にせず豚の髪を鷲掴みにし無理矢理上を向かせた。
 そばかすだらけの薄汚い豚だな。
 このデカい鼻なんて豚そっくりだ。
 やはり、こんな豚が私の婚約者なんてあり得ない。

「おい、豚。殺されたくなければ今すぐここから出ていけ。あと、もう2度とこの私の婚約者などと嘘をつくな」

「けほけほっ....ですが、私があなた様の婚約者なのは事実で...っ....!?」

 まだ言うか。
 しつこい豚だな。
 私は髪を掴んでいた手を今度は豚の首元に持っていった。
 ここで風魔法の1つでも出せば、こいつの首から上は一生胴体とおさらばだな。
 豚ごときにこの私が直接手を下すのだ、有り難く思え。

「生命の息吹を司りし風神よ 今一度 我の声に耳を傾け...」

「そこまでだ、ブラウン」

 バンッとノックもなしに私の部屋へ乗り込んできたのは不敵に笑うフィルお兄様だった。
 何故、フィルお兄様がここに!?
しおりを挟む
感想 221

あなたにおすすめの小説

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...