婚約破棄?そもそも、貴方誰ですか?

あーもんど

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第五章

横槍 2

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「私は精霊に関する書物を読み漁り、1つの仮説を見出だしました。悪魔を殺すときに使うのが精霊達の作った聖剣ならば、その逆も然り...なのではないと。私の予想は見事的中し、魔剣は精霊達の硬化した皮膚さえも切り刻むことが出来ました」

 なるほど....。
 四大精霊ノームの皮膚さえも切り刻んだ魔剣....厄介だ。
 ん?でも待てよ....フィル王子の口振りだと精霊の硬化した皮膚さえも切り刻めることを事前に知っていたような....?
 今、その魔剣を実験したような口振りではなかった。
 それにフィル王子の性格上、ぶっつけ本番で魔剣を使うとは思えない。万全を期してから、行動に移す筈....。
 冷や汗が頬を伝って、床に落ちた。
 嫌な予感がする....とっても嫌な予感が。

「ですが、魔剣は精霊の硬化した皮膚を切り刻めるだけでした。精霊の治癒能力を持ってすれば魔剣が作った傷など無意味に等しい....だから、四大精霊サラマンダーがブラウンに使った治癒魔法や自己治癒を妨害する呪術系魔法を使用させて頂きました。まあ、それでも殺すことは不可能でしたが...。プレストン、あれをここへ」

 プレストン王子は手にしていた小さな箱を開けると中から蝶の羽根を背中から生やした小さな小さな───精霊を取り出した。
 っ....!?ジェフ!?
 全身血だらけのジェフがそこには居た。
 肩が忙しなく動いていることから、息はしているみたいだがとても苦しそうだ。
 ジェフが何でこんなことに....!?

「これは....随分と穏やかではないですね」

「ふふっ。それはお互い様ですよ、ウンディーネ。貴方だって罪のないスターリ国民を何人も殺したではありませんか」

「ふふふっ。害虫である人間と神に近しい存在である我々精霊の命の価値を同じにされては困ります」

「ふはははっ!相変わらず、精霊は傲慢ですね。自分達の命をどれだけ高く見ていることやら...」

 ここで初めてウンディーネが笑顔を崩した。
 今までずっとニコニコと笑顔を絶やさなかったあのウンディーネが、だ。
 不愉快そうに眉を潜め、忌々しげにフィル王子を見下ろしている。
 私は....どうすれば良いんだろう?
 ノームの側で膝をつく私はただひたすらノームの横腹と血だらけのジェフを交互に見つめるだけだった。
 ジェフを助けたい....!
 でも、変に相手を刺激して逆上でもされたら厄介だ。
 ジェフを捕らえているのがそこら辺に居る兵士なら良かったが、まさかのプレストン王子。
 プレストン王子はフィル王子とまではいかないが、魔法の腕はかなり立つ。
 そう簡単にジェフを取り戻せるとは思えない。
 私はなんて無力な存在なのかしら.....。
 落ち込んでいる暇はないと分かっていても、上手く心を制御できない。
 フッと自嘲にも似た笑いが漏れた。
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