本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど

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手紙

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◇◆◇◆

 ────アジトに帰ってきてから、一週間ほど経った頃。
こちらの街にも、ロシュの街のこと……主に神獣降臨の噂が流れてきて、様々な憶測を呼んでいた。
そうなると、注目の的になるのは当然不死鳥な訳で……

「はぁ……また根掘り葉掘り聞かれたんだけど。これで、何回目だよ」

「しかも、今日は神殿関係者まで来てたッスからね~。躱すのも、一苦労ッス」

「神獣ヴァイスに直接関わった私達に話を聞きたいのは分かるが、いい加減鬱陶しいな」

 三人とも、疲弊しているようだった。
『しばらく、アジトに籠ろうか』なんて話しつつ、ダイニングテーブルの席につく。
もうすぐ昼食の時間ということもあってかここでのんびりする彼らを前に、私はタブレットから顔を上げた。

「あっ、そうだ。セオドアさん宛てに、手紙が届いていましたよ」

 つい先程配達のお兄さんから受け取った手紙を取り出し、私はセオドアさんに渡す。
すると、彼は宛名を見て眉間に皺を寄せた。

「実家からか」

「このタイミングっつーことは、また神獣関連か?」

「まあ、立場的に情報は手に入れておきたいんでしょうね」

 アランさんとキースさんはセオドアさんの両親を知っているらしく、そんなコメントをした。
その傍で、セオドアさんは手紙を読む。

「……どうやら、それだけではないようだ」

 神妙な面持ちで手紙を見つめ、セオドアさんは自身の顎を撫でた。

「詳細は分からないが、直接会って話したいことがあるらしい。アランとキースも連れて一度帰省するよう、書かれている」

「えっ?俺達も?」

「只事じゃなさそうッスね」

 どことなく表情を硬くして、アランさんとキースさんは張り詰めたような空気を放つ。
────と、ここでセオドアさんが手紙から顔を上げた。

「とりあえず、要望通り帰省するとしよう」

「だなぁ。どの道、そろそろ顔を見せに行くべきだとは思っていたし」

「それに、神獣の話題が落ち着くまで故郷で羽を伸ばすのもいいかもしれないッス」

 『色んな意味でちょうどいい機会だ』と賛成し、アランさんとキースさんは一つ息を吐いた。

 じゃあ、また三人ともアジトを空けるのか。
ちょっと寂しくなるけど、魔物討伐前回ほど長くはならないだろうし、私にとってもいい休暇になりそう。

 ここ最近アランさん達からの小言に悩まされていたため、私は帰省を好意的に受け止める。
家族仲間というのは居ないと寂しいが、居たら居たでやかましいものだ。

「おい、そこ」

 セオドアさんは不意にこちらを向き、長い足を組む。

「『自分は関係ない』みたいな顔をしているが、お前も連れて行くからな」

「えっ?」

「お前を一人にしたら、また何かやらかすだろ」

「……」

 疑問形ですらない言い回しに、私は『信用なさすぎるなぁ』とぼんやり考える。
でも、これまでの失敗を振り返ると『大丈夫ですよ』とは言えなかった。

「はい、お供させていただきます」

 ────と、潔く白旗を振った数日後。
私はセオドアさんに連れられるまま、彼の実家へやってきた。
もちろん、アランさんとキースさんも一緒に。

「大きい屋敷ですね」

 どこかの高級ホテルみたいな建物を眺め、私は瞠目する。

「セオドアさんって、もしかしてかなりの裕福な家庭なんですか?」

 興味本位で聞いてみると、セオドアさんは肩を竦めた。

「まあ、金は腐るほどあるな────大公家だし」

「あっ、セオドアさん貴族だったんですね」

 ポンッと手を叩き、私は妙な納得感を覚える。

「道理で、所作が綺麗だと思いました。普段の傲慢な態度も教育環境によって染み付いたものだと思えば、腑に落ちます」

「お前、喧嘩を売っているのか」

 眉間に皺を寄せつつ、セオドアさんは警備の者に指示して門を開けさせた。
そのまま普通に敷地内へ足を踏み入れ、彼は玄関に向かっていく。

「あと、貴族なのは私だけじゃない。そいつらも一応、高貴な血を引いている」

 後ろに控えるアランさんとキースさんを指さし、セオドアさんはそう述べた。
すると、アランさんとキースさんが苦笑を漏らす。

「貴族と言っても、俺達は末端の末端だけどな。爵位はそれほど高くないし、領地も持っていないから」

「代々大公家に仕える家系なんで、ここではそれなりに影響力があるッスけど。中央では、まさに空気ッス」

 『今は家を出ているから、平民と変わらないし』と語る二人に、私は小さく相槌を打つ。

「ちなみに皆さんのフルネームは?」

「セオドア・メラン・ノワール」

「アラン・ロッソ・ルージュ」

「キース・ベルデ・グフルーン」

 あっさりとフルネームを明かし、三人は慣れた様子で屋敷内に入った。
と同時に、黒髪紫眼の美丈夫と金髪碧眼の美女を目にする。

「久しぶりだな、三人とも」

「お帰りなさい」

 威厳たっぷりの美丈夫と優しげな美女は、セオドアさん達を見て微笑んだ。
かと思えば、私の方を向く。

「そちらのお嬢さんは手紙に書かれていたミレイ殿かな?よく来たね。私はセオドアの父であり、大公のディラン・ダニエル・ノワールだ。そして、その妻のララ・レイラーニ・ノワール」

「よろしくね、ミレイちゃん」

 当たり前のように歓迎してくれる二人に、私は少しばかり表情を和らげる。

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 ペコリと頭を下げ、私は『セオドアさん達には、いつもお世話になっています』と口にした。
もちろん、社交辞令などではなく事実として。
『今回も含め、色々やってもらっているからね』と考える私を前に、ララさんはうんと目を細める。

「あらあら、礼儀正しいのね~。いいお嫁さんになりそうだわ~。それで────」

 少しばかり身を乗り出し、ララさんは青い瞳に好奇心を滲ませた。

「────ミレイちゃんは三人のうちの誰と交際しているの?」

 ちょっと声のトーンを落として問い掛けてくるララさんに、私は目が点になる。

「えっ?」

「ん?」

「あの、私どなたともお付き合いしていませんけど」

 完全なる早とちりであることを告げると、ララさんは大きく目を剥く。

「えぇ!?そうなの!?急に女の子も連れてくると言うから、私てっきり……!」

 まあ、確かにこの状況だけ見ると恋人に間違われてもおかしくないよね。
実際は何かやらかさないか心配で、連れてこられただけだけど。

 色気も何もない理由を思い浮かべる私の前で、ララさんは『ごめんなさいね~』と苦笑する。
────と、ここでセオドアさんが一歩前に出た。

「それより、話とはなんだ」
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