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ベネット男爵《キース side》
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◇◆◇◆
────アジトを後にしてから、数日。
僕は大公家に赴いたり、ベネット男爵家にコンタクトを取ったりと忙しく動いていた。
その甲斐あってか、今日面会の場を設けることに成功。
「本日はお時間をいただき、ありがとうございます」
とあるレストランの個室にて、僕は青髪翠眼の男性を見据えた。
すると、向かい側の席に座る彼は愛想良く笑う。
「いえいえ、こちらこそ。ノワール大公家の方とお話する機会をいただけて、光栄です」
胸元に手を添えて軽くお辞儀し、ベネット男爵は友好的な姿勢を見せた。
まさか、相手が不死鳥のメンバーだとは夢にも思っていないだろうね。
まあ、今回はノワール大公家の使者としてきちんとした服装かつ態度をしているから当たり前だけど。
『とても、冒険者には見えないでしょ』と思いつつ、僕は居住まいを正す。
「嬉しいお言葉をありがとうございます。大公家の皆様にも、しっかりお伝えしておきますね」
社交辞令としてそう答え、僕はニッコリと微笑んだ。
「さて早速ですが、本題に入らせていただきます」
そう前置きして、僕は少しばかり身を乗り出す。
「────誘拐事件に関する情報、全て教えてください」
「!?」
ビクッと大きく肩を揺らし、ベネット男爵は瞳を揺らした。
かと思えば、取って付けたような笑みを浮かべる。
「誘拐事件?一体、何のことでしょう?私には、何のことだかさっぱり……」
「『分からない』とは、言わませんよ。貴方は誘拐現場の空き家の元持ち主であり、ジェシカと敵対する同業者の後ろ盾なんですから」
『無関係な筈がない』と主張すると、ベネット男爵は僅かに頬を引き攣らせた。
が、どうにか取り繕おうとする。
「そう言われましてもね、全く心当たりがないのですよ」
案の定とでも言うべきか、ベネット男爵はシラを切った。
多分、証拠がなければいつまでもとぼけるつもりだろう。
「第一、何故ノワール大公家があの誘拐事件を気にされているのです?被害者はただの平民でしょう?」
単純な疑問を述べるベネット男爵に対し、私────ではなく、ディラン様が口を開く。
「ただの平民では、ない。我がノワール大公家の次男セオドア・メラン・ノワールが、友と認めた者だ」
今しがた個室に入ってきたばかりのディラン様は、ベネット男爵のことを真っ直ぐ見つめた。
その横で、ララ様も同じように凝視している。
「ノワール大公家の次男セオドア・メラン・ノワールの友人……?」
ベネット男爵はポカンとした様子で呟き、目を瞬かせた。
そのまま数秒ほど硬直するものの、いきなり表情を強ばらせる。
「ん……?はっ……?ま……待て待て待て待て!セオドアって、まさか……!」
「ええ、不死鳥のメンバーである“黒の殲滅者”のことです。ちなみに僕も不死鳥の一員で、“緑の風”と呼ばれています」
ここぞとばかりに正体を明かし、僕はあちらに混乱を与えた。
そうすることで、精神的に優位に立つため。
『冷静に情報を握っている自分の方が上だと思われたら、厄介なんで』と考える中、ベネット男爵は真っ青になる。
「う、嘘だろ……!?じゃあ、私は大貴族の関係者を……!?あいつら、そんなこと一言も言ってなかったじゃないか……!」
『あいつら』ね。
やっぱり、ベネット男爵が黒幕ではなかったか。
少しばかり表情を引き締め、僕は席を立った。
すると、ディラン様とララ様が入れ替わるようにして腰を下ろす。
「ベネット男爵、貴殿は最近貴族になったゆえ知らぬかもしれんが、大貴族には執行権というものが与えられていてね。罪人をその場で裁くことが、出来るんだ。無論、貴族も例外ではない」
「まあ、色んな柵があるから貴族に執行権を行使することは滅多にないのだけれど────幸い、貴方は爵位を得たばかりで社交界デビューもしてないそうじゃない?なら、何の障害もなく使えるわ」
言外に『この場で処刑する』と脅し、ディラン様とララ様はそれぞれの瞳に強い意志を宿した。
その刹那────また二名ほど入室する。
「お待たせしました。騎士団長フレデリック・ギデオン・ルージュ、並びに」
「筆頭執事テレンス・アフダル・グフルーン、お呼びに預かり参上いたしました」
ベネット男爵を威嚇するためかわざわざ肩書きを名乗り、フレデリック様と父は恭しく頭を垂れた。
と同時に、ディラン様は片手を上げる。
「ご苦労」
いつもより硬い声色で応え、ディラン様は腕を組んだ。
「フレデリック、抜刀を許可する」
「はっ」
短く返事して、フレデリック様は剣を抜く。
しっかりベネット男爵の方を向く彼の前で、ディラン様はスルリと自身の顎を撫でた。
「テレンス、罪状を読み上げなさい」
「畏まりました」
胸元に手を添えて一礼し、父はベネット男爵の方へ一歩踏み出す。
「ハドリー・ヒューゴ・ベネット男爵、貴方は上の立場にあるノワール大公閣下に挨拶も何もなく敬意を払わなかった上、ご子息の名前を呼び捨てにしました。これは貴族の上下関係を揺るがす行為。階級社会への挑戦と見なし、ゆくゆくは皇室にさえ楯突く可能性があるとして────死罪」
「なっ……!?」
明らかに誇張した理由に言葉を失い、ベネット男爵は目を白黒させた。
『そんな理論がまかり通っていいのか!?』と。
「こ、こんなの横暴だ……!」
堪らず抗議の声を上げ、ベネット男爵は怒りと恐怖に満ちた表情を浮かべる。
まだ逆らう気力がある彼を前に、ディラン様は
「我々ノワール大公家は身内のためなら、手段を選ばない。悪魔にだって、なろう」
と、ただ淡々と告げた。
揺るぎない覚悟を見せるディラン様の前で、ララ様は氷のように冷たい無表情となる。
「理不尽だと怒ってくれて、構わないわ。あの世でね」
普段の愛らしい姿からは想像もつかない迫力を放ち、ララ様はフレデリック様の方を見た。
すると、彼は心得たようにベネット男爵のところへ近づいていく。
それが最後のダメ押しとなり、ベネット男爵は床に崩れ落ちた。
「す、全て正直に話します!ですから、どうか命だけは……!あなた方のお身内だとは、知らなかったんです!知っていたら、こんなことには協力しませんでした!」
────アジトを後にしてから、数日。
僕は大公家に赴いたり、ベネット男爵家にコンタクトを取ったりと忙しく動いていた。
その甲斐あってか、今日面会の場を設けることに成功。
「本日はお時間をいただき、ありがとうございます」
とあるレストランの個室にて、僕は青髪翠眼の男性を見据えた。
すると、向かい側の席に座る彼は愛想良く笑う。
「いえいえ、こちらこそ。ノワール大公家の方とお話する機会をいただけて、光栄です」
胸元に手を添えて軽くお辞儀し、ベネット男爵は友好的な姿勢を見せた。
まさか、相手が不死鳥のメンバーだとは夢にも思っていないだろうね。
まあ、今回はノワール大公家の使者としてきちんとした服装かつ態度をしているから当たり前だけど。
『とても、冒険者には見えないでしょ』と思いつつ、僕は居住まいを正す。
「嬉しいお言葉をありがとうございます。大公家の皆様にも、しっかりお伝えしておきますね」
社交辞令としてそう答え、僕はニッコリと微笑んだ。
「さて早速ですが、本題に入らせていただきます」
そう前置きして、僕は少しばかり身を乗り出す。
「────誘拐事件に関する情報、全て教えてください」
「!?」
ビクッと大きく肩を揺らし、ベネット男爵は瞳を揺らした。
かと思えば、取って付けたような笑みを浮かべる。
「誘拐事件?一体、何のことでしょう?私には、何のことだかさっぱり……」
「『分からない』とは、言わませんよ。貴方は誘拐現場の空き家の元持ち主であり、ジェシカと敵対する同業者の後ろ盾なんですから」
『無関係な筈がない』と主張すると、ベネット男爵は僅かに頬を引き攣らせた。
が、どうにか取り繕おうとする。
「そう言われましてもね、全く心当たりがないのですよ」
案の定とでも言うべきか、ベネット男爵はシラを切った。
多分、証拠がなければいつまでもとぼけるつもりだろう。
「第一、何故ノワール大公家があの誘拐事件を気にされているのです?被害者はただの平民でしょう?」
単純な疑問を述べるベネット男爵に対し、私────ではなく、ディラン様が口を開く。
「ただの平民では、ない。我がノワール大公家の次男セオドア・メラン・ノワールが、友と認めた者だ」
今しがた個室に入ってきたばかりのディラン様は、ベネット男爵のことを真っ直ぐ見つめた。
その横で、ララ様も同じように凝視している。
「ノワール大公家の次男セオドア・メラン・ノワールの友人……?」
ベネット男爵はポカンとした様子で呟き、目を瞬かせた。
そのまま数秒ほど硬直するものの、いきなり表情を強ばらせる。
「ん……?はっ……?ま……待て待て待て待て!セオドアって、まさか……!」
「ええ、不死鳥のメンバーである“黒の殲滅者”のことです。ちなみに僕も不死鳥の一員で、“緑の風”と呼ばれています」
ここぞとばかりに正体を明かし、僕はあちらに混乱を与えた。
そうすることで、精神的に優位に立つため。
『冷静に情報を握っている自分の方が上だと思われたら、厄介なんで』と考える中、ベネット男爵は真っ青になる。
「う、嘘だろ……!?じゃあ、私は大貴族の関係者を……!?あいつら、そんなこと一言も言ってなかったじゃないか……!」
『あいつら』ね。
やっぱり、ベネット男爵が黒幕ではなかったか。
少しばかり表情を引き締め、僕は席を立った。
すると、ディラン様とララ様が入れ替わるようにして腰を下ろす。
「ベネット男爵、貴殿は最近貴族になったゆえ知らぬかもしれんが、大貴族には執行権というものが与えられていてね。罪人をその場で裁くことが、出来るんだ。無論、貴族も例外ではない」
「まあ、色んな柵があるから貴族に執行権を行使することは滅多にないのだけれど────幸い、貴方は爵位を得たばかりで社交界デビューもしてないそうじゃない?なら、何の障害もなく使えるわ」
言外に『この場で処刑する』と脅し、ディラン様とララ様はそれぞれの瞳に強い意志を宿した。
その刹那────また二名ほど入室する。
「お待たせしました。騎士団長フレデリック・ギデオン・ルージュ、並びに」
「筆頭執事テレンス・アフダル・グフルーン、お呼びに預かり参上いたしました」
ベネット男爵を威嚇するためかわざわざ肩書きを名乗り、フレデリック様と父は恭しく頭を垂れた。
と同時に、ディラン様は片手を上げる。
「ご苦労」
いつもより硬い声色で応え、ディラン様は腕を組んだ。
「フレデリック、抜刀を許可する」
「はっ」
短く返事して、フレデリック様は剣を抜く。
しっかりベネット男爵の方を向く彼の前で、ディラン様はスルリと自身の顎を撫でた。
「テレンス、罪状を読み上げなさい」
「畏まりました」
胸元に手を添えて一礼し、父はベネット男爵の方へ一歩踏み出す。
「ハドリー・ヒューゴ・ベネット男爵、貴方は上の立場にあるノワール大公閣下に挨拶も何もなく敬意を払わなかった上、ご子息の名前を呼び捨てにしました。これは貴族の上下関係を揺るがす行為。階級社会への挑戦と見なし、ゆくゆくは皇室にさえ楯突く可能性があるとして────死罪」
「なっ……!?」
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まだ逆らう気力がある彼を前に、ディラン様は
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と、ただ淡々と告げた。
揺るぎない覚悟を見せるディラン様の前で、ララ様は氷のように冷たい無表情となる。
「理不尽だと怒ってくれて、構わないわ。あの世でね」
普段の愛らしい姿からは想像もつかない迫力を放ち、ララ様はフレデリック様の方を見た。
すると、彼は心得たようにベネット男爵のところへ近づいていく。
それが最後のダメ押しとなり、ベネット男爵は床に崩れ落ちた。
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