本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど

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断罪《ヘンリー side》

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「更に、信徒への暴言・暴力……殺害・・。全く……救うべき者に対する行いとは、思えぬ」

 はっ?ちょ、ちょっと待て……暴言・暴言はさておき、殺害はどうやって知った?
毎回、緻密な計画を立てて完璧に処理していた筈……ターゲットになるのは大体神殿のやり方や方針に異を唱えて楯突く者達だから、動機の線で我々が疑われないように。

「他にも、非合法な人体実験や他国への情報漏洩など……とにかく、数え切れないほどの余罪がある」

 どこか呆れたような……軽蔑するような眼差しをこちらに向け、ブレイン皇帝陛下は眉間あたりを揉む。
その瞬間、サミュエル教皇聖下が困ったような表情を浮かべた。

「そんな……きっと、何かの間違いです。我々神殿はそのようなこと、していません」

 『ありもしない疑いを掛けられて、ショックだ』と態度で示し、サミュエル教皇聖下はシラを切る。

「失礼ですが、証拠はおありなんですか?」

 きちんと立証出来るのか問い、サミュエル教皇聖下はあちらの出方を窺った。
『せいぜい、状況証拠くらいだろう』と高を括る彼……いや、私達を前に、ブレイン皇帝陛下は────

「ああ、無論だ」

 ────と、頷く。
そこに迷いや焦りといった感情は一切なく、事実を淡々と述べている印象だった。

「は、ハッタリだ……そんなのある筈ない……」

 サミュエル教皇聖下は思わずといった様子で呟き、大きく瞳を揺らす。
その動揺が私や他の大司教達にも広がる中、ブレイン皇帝陛下が片手を上げた。

「疑うのであれば、実際に証拠を見せてやろう」

 その言葉を合図に、宰相や文官はずっと持っていた箱を開ける。
中身が見えやすいよう少し角度を調整し、こちらを向いた。

「「「!?」」」

 それぞれの箱にギッシリ詰められた証拠を前に、私達は大きく目を見開く。

「なっ……!?どうして、ここに麻薬関連の顧客リストが……!?我々上層部の人間しか知らない隠し金庫に保管してあった筈じゃ……!?」

「何故、人体実験の研究データが残っているんだ!?施設ごと燃やして、灰にしたのに……!」

「貴族や商人からの証言書だって……!?あの馬鹿共、裏切ったな……!?」

「殺害に使用した毒が、残っている……!?それに、発注書まで……!」

 堪らず自白と取れる発言をしてしまうものの、私達は気にならなかった。
いや、気にする余裕がないとでも言うべきか。

 顧客リストや証言書はさておき、研究データと毒はその現場に行かなければ手に入らない……!
それも、我々の手から離れて処分される僅かな隙をついて!
そんなの完全に神殿の動きを把握してないと、出来ない芸当だ!
考えられる可能性は、ただ一つ……!我々上層部の中に、内通者が居ること!

 普通の神官では知り得ないこともあったため、私は裏切りを強く確信した。
サミュエル教皇聖下や他の大司教達も疑心暗鬼になり、表情を硬くする。
怒りや不安といった感情を抱く私達の前で、ブレイン皇帝陛下は玉座の肘掛け部分を強く握り締めた。

「これで、自分達の罪はよく分かっただろう」

 『言い逃れの余地もない筈』と主張して、ブレイン皇帝陛下は居住まいを正す。

「では、判決を言い渡す」

 息が詰まるほど厳かな雰囲気を放ち、ブレイン皇帝陛下はこちらに片手を翳した。

「サミュエル教皇聖下……いや、サミュエルとその一行は全員死刑。また、神殿にはイーリス帝国における三年間の活動禁止を命じる」

「「「!?」」」

 ビクッと大きく肩を揺らし、私達は死刑という言葉に狼狽える。
いや、犯した罪の内容や数を思えば妥当な判決ではあるのだ。
ただ、神殿の上層部の人間にこれほどあっさり……しかも、一番重い罰を課すなんて思ってなかっただけで。

 ほ、本当に死ぬ……のか?

 これまで他人の命を奪うことはあっても、自分の命が危険に晒されたことなどなかったため、私は恐怖に震える。
と同時に、『嫌だ、死にたくない!』と強く思った。

「ぶ、ブレイン皇帝陛下……!どうか、ご慈悲を……!」

「先程は失礼なことを言ってしまい、申し訳ございませんでした……!」

「罪なら、全て認めますので……!命だけは……!」

「何卒……何卒、我々に再起の機会を!」

 私が口火を切るなり、サミュエル教皇聖下と他の大司教達も命乞いをした。
が、ブレイン皇帝陛下に

「もう遅い」

 と、一蹴される。
取り付く島もない態度に呆然とする中、ブレイン皇帝陛下は膝の上で手を組んだ。

「証拠を出す前に自白していれば、減刑も考えていた。そなた達は神殿の頭脳トップだからな。突然居なくなれば、神官も信徒も混乱するだろう。だが、反省の色が見えない以上慈悲を掛ける訳にはいかない」

 『再犯の可能性が高いゆえ』と語り、ブレイン皇帝陛下は完全に私達のことを見限った。
それでも、希望を捨て切れない私達は尚も言葉を紡ぐ。

「確かに最後まで罪を隠そうとした私達は傍から見れば、反省していないように見えるかもしれません……!ですが、それは罪の意識を持っているが故のことで……!」

「過去の行いを認めたら、自責の念に押し潰されてしまいそうだから……!一種の防衛本能とでも、言いますか……!」

「とにかく、反省はちゃんとしています……!後悔だって……!」

「────くどい」

 低い声で一喝し、ブレイン皇帝陛下は騎士達の方に視線を向けた。

「連れて行け」

「「「はっ」」」

 背筋を伸ばして短く返事し、騎士達は私達一人一人の両脇に立った。
かと思えば、それぞれの腕や肩を掴んで歩き出す。

「いや、待っ……!ブレイン皇帝陛下!」

「お願いです、もう一度だけチャンスを……!」

「せめて、あんなことをした理由だけでも聞いていただけませんか……!」

「私達もやりたくて、やった訳ではないのです……!」

 騎士達に引き摺られながらも、私達はブレイン皇帝陛下に縋った。
が、何の反応も返ってこない。一瞥すら、くれなかった。
『そんな……』と絶望する中、私達は全員廊下に出る。
そして、玉座の間に繋がる扉が閉じられた。
本当にもう終わりなんだと……助かる道は絶たれたんだと分かる状況を前に、私は項垂れる。

 嗚呼……どうして、こんなことになったのだろう?一体、どこで間違えた?
不死鳥の件以外は全て順調だった筈なのに。
もしや、不死鳥が裏から手を回して我々のうち誰かを抱き込み、この断罪劇を……いや、まさかな。
いくらノワール大公家の後ろ盾があるとはいえ、この短期間でそこまで出来る訳がない────人智を超えた力でもない限り。

 『それこそ、神の御加護とかな』と冗談半分に呟き、私はハッと乾いた笑みを漏らした。
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