『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

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第二章

第35話『影』

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 結界解除と同時に、徳正さんの足元から真っ黒な影が飛び出した。
まるでシミのように広がっていくソレは、地面を黒く染め上げる。

『準備完了だ』

「おっけ~!んじゃ────影よ、全てを喰らい尽くせ!」

『承知した』

 詠唱ですらないただの命令に、影さんは了承の意を示す。
と同時に、私達の方へ押し寄せていた魔物モンスターの軍勢が動きを止めた。
いや────足を沈められた、と言った方がいいか……。
今まさに影に捕食されており、少しずつ取り込まれていった。
その様子は、底なし沼と少し似ている。

 苦戦していたのがアホらしく感じるほど、一瞬で片をつけちゃった。
やっぱり、徳正さんの影魔法は素晴らしいな。

『げふっ……朝食にしては、多過ぎだな』

「具体的に何匹居たの~?」

『さあな。でも、軽く五百匹は喰ったぞ。どれもあまり美味しくなかったがな』

「五百匹かぁ~。予想以上に居たね~」

 『どうりで全く身動きを取れない訳だ』と納得する徳正さんに、私はコクコクと頷く。

 蹴散らしても蹴散らしても一向に数が減らないな、とは思ってたけど……まさか五百匹も居たとは。
早い段階で影魔法を使ってもらって、正解だった。
だって、あのまま地道に戦ってたら確実に日が暮れてたもの。

「影さん、魔物モンスター討伐ありがとうございました」

『あっ、いえいえ!全然大丈夫です!また何かあれば、遠慮なく仰ってください!』

 範囲攻撃を終えた影さんは広範囲に伸ばした体を元に戻し、徳正さんの足元に収まる。
影なので表情は分からないが、声色で喜んでいるのは分かった。

「あっ!そういえば、ラルカさんとシムナさんはきちんと影さんの攻撃を躱せたでしょうか?」

「躱せたんじゃない~?二つの気配が上空にあるし~」

「でも、それにしては落下してくるの遅すぎません?ラルカさんとシムナさんって、浮遊魔法覚えてましたっけ?」

「さあ~?」

 『さあ~?』って……徳正さんは何でそんなに呑気なの?
普通、何かあると考えて心配するんじゃ……って、ん?

 何の気なしに空を眺めていると、黒い点が二つ出現した。
『なんだろう?あれ……』と思いつつ、私は目を凝らす。
だんだんと大きくなっていくソレらを見つめ、小さく首を傾げた。

 あれは……クマ?いや、クマの着ぐるみだろうか?あと、この小さい方は子供かな?
って、それ絶対ラルカさんとシムナさんだよね!?

「と、徳正さんっ!空から、ラルカさんとシムナさんが……!!」

「ん?あぁ、降ってきたんだ~」

 釣られるように視線を上げた徳正さんは、落下中の二人を見ても全く驚かない。
むしろ、当然と言わんばかりの反応だ。

 ちょっ……呑気に眺めている場合じゃないって!クッションを置くなりして、落下のダメージを抑えないと!

 『あんな高さから落ちたら、最悪死んじゃう!』と焦る私に対して、徳正さんはヘラリと笑う。

「ラーちゃん、心配しなくても大丈夫だって~。落下ダメージ程度じゃ、死なないし~」

「で、ですが……」

「そんなに心配なら、通話で聞いてみれば~?通話まだ繋がってるんでしょ~?」

 あっ!そうだ、通話!
喋らないラルカさんはさておき、シムナさんまで途中でマイクを切っていたから、すっかり忘れていた!
って、ちょっと待って……!?
それじゃあ、これまでのやり取り……というか、焦っている様子は二人に筒抜けだったってこと!?
それは普通に恥ずかしいんだけど……!

 一人相撲という言葉が脳裏を過ぎり、私は頬を紅潮させる。
『穴があったら入りたい……』と心の中で呟き、コホンッと一回咳払いした。
これ以上、醜態を晒さないためにも一旦冷静になろうと務める。

「え、えーと……お二人とも、ご無事ですか?着地の際、何かお手伝いは必要でしょうか?」

「あははははっ!!君、サイコー!やっと通話中だって、気がついたんだ?あははっ!!」

『笑うな。失礼だぞ』

「そういうラルカだって、笑っているじゃーん!肩、震えているよー?」

『……これは風の影響だ』

「ふーん?ま、そういう事にしといてあげる」

 通話マイクをオンにしたシムナさんは、落下中だというのに全く怯えた様子がない。
緊張感皆無である。
『ラルカさんもチャットを打てる程度には、余裕があるみたいだし』と思案しながら、私は声を張り上げた。

「と、とりあえず!こちらの質問に答えてください!着地の際、何か手伝うことはありませんか?」

「んー?手伝いー?そんなの必要ないよ。邪魔なだけだしー」

『落下ダメージくらい、防御力で防ぎ切れる』

「その高さだったら、普通防ぎ切れませんけどね……まあ、分かりました。手出しはしません。それと気になっていたことがあるんですが……どれくらい高く飛びました?」

 この質問に特に深い意味はない。ただ気になっただけ。
だって、二人がジャンプしてから数分は経過しているから。
そんな長時間、空中に留まっていられるなんて普通は有り得ない。そう、“普通”なら……。

「限界高度まで、飛んだよー。君の言う通り思い切りジャンプしたら、そこまで行っちゃってさー」

「いや、『行っちゃってさー』って……」

「おかげで、空にある障壁に頭をぶつけたよー!勢いよく、飛び過ぎちゃったのかなー?」

『僕も障壁に顔面を強打した』

「……」

 ラルカさんとシムナさんの会話についていけず、私は一瞬意識を飛ばしかける。
が、何とか現実に引き戻した。

 限界高度って、何!?そんな高いところまで飛べたの!?ただのジャンプで!?
しかも、二人の口振りだとまだ高く飛べたみたいに聞こえるんだけど!?
やっぱり、『虐殺の紅月』のパーティーメンバーはどこかおかしいよ!

 『ゲームバランスもクソもない!』とおののく中、ラルカさんとシムナさんはようやく着地する。
その際、ドンッという落下音が鳴り響き、地面にヒビを入れた。

「たっだいまー!いやぁ、見事に片付いたねー」

『あの範囲魔法は見事だった』

 砂埃の中から現れた二人は、マイペースに笑っている。
見たところ、本当に落下ダメージはなさそうだった。
『防御力、高すぎでしょ……』と呆れつつ、私は二人を出迎える。

「お二人とも無事で何よりです。おかえりなさい」
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