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第三章
第56話『ゴーレム討伐イベント開始』
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────それから小一時間ほど意見交換と作戦会議を行った私達は、ディスプレイに表示された三時五十九分の数字に釘付けだった。
ゴーレム討伐イベント開始まで、あと一分……。
私は表示された時刻を半ば睨みつけるように凝視しながら、ギュッと拳を握り締める。
思ったより緊張していたようで、手は少し震えていた。
情けない話だけど、正直不安だ。
今回のイベントは告知から開催までの時間が短い上、情報量も多くない。
ルールは教えて貰ったけど、ゴーレムの具体的な強さや特徴、出現場所なんかは教えて貰えなかった。
ゴーレムのことで分かっている事と言えば、大きいってことだけ。
『箱庭』の送り付けてきた文章に『巨大ゴーレム』とハッキリ書かれていたから、間違いないだろう。
でも、それだけじゃ作戦は立てられない。
参謀的立ち位置に居ながら、策を練れないなんて……情けないなぁ。
私は己の不甲斐なさに溜め息を零し、ギュッと胸元を握り締めた。
ナイトタイム終了を今か今かと待ちわびる中、時刻が更新される。
「────四時ジャスト!ゴーレム討伐イベント開始です!」
そう言うが早いか、夜空は満天の青空に変わった。
容赦なく照りつけてくる太陽を前に、私は右へ左へ視線を向ける。
ゴーレムはどこに!?三千体も居るんだから、一体くらい近くに居てもおかしくないと思うんだけど!?
などと考えていると────不意に辺りが暗くなる。
まるで、何かに日の光を遮られたかのように。
『今日の天気は曇り?』なんて思いながら視線を上げれば、予想外のものが目に入った。
「あ、あれが────ゴーレム!?」
「うひょ~!予想以上に大きいね~」
『見たことないタイプのゴーレムだな』
「わー!倒し甲斐ありそー!」
驚愕の表情を浮かべる私に対して、三人は余裕そうだ。
一軒家並の大きさを持つゴーレムが、上空から降ってきたというのに。
体は石で出来ているのか、見るからに硬そうだ。
ただ、見た目は通常のゴーレムと大して変わらない。本当にただ大きいというだけ。
でも、油断は出来ない。
特殊スキルや能力を持ち合わせているかもしれないから。
可能性の域を出ない話だが、『有り得ない』とは言い切れなかった。
「皆さん、見た目に惑わされないでください!通常のゴーレムとは別物と考えて、ことに当たりましょう!」
「りょーかーい」
『心得た』
「ラミエルがそう言うなら、そうするー!」
素直に忠告を聞き入れる彼らは空から降ってくるゴーレムを見つめ、武器を構える。
早く戦いたいのか、三人ともソワソワとしていて落ち着きがなかった。
本当に緊張感のないパーティーだな……まあ、そっちの方が気楽でいいけど。
『いい意味で肩から力が抜ける』と考えつつ、私は大きく息を吸い込む。
「────来ます!!」
そう叫んだ瞬間─────凄まじい落下音と爆風が、この場を駆け抜けた。
ざわざわと揺れる木々を前に、私は飛ばれないよう踏ん張る。
凄い衝撃……!その爆風だけで、人を殺せそうだ!
「これは久々に楽しい戦いになりそうだね~」
『さっさと殺して、次に行こう』
「ねぇ、誰が一番多くゴーレムを殺せるか勝負しようよー!ラミエルは審判と誰が何体ゴーレムを倒したか、カウントねー!よろしくー!」
「えっ?あ、はい……」
反射的に首を縦に振ってしまった私は、全く動じていない三人をまじまじと見つめる。
『この状況でよく競争なんて出来るな』と半ば感心していると、彼らは武器を持つ手に力を込めた。
かと思えば、待ち切れないとでも言うように舌舐めずりする。
「ねぇ~、ラーちゃん……もう行っていい?」
『飼い主様のGOサインが欲しいワン』
「ワンワン!」
いや、あの……三人の飼い主になったつもりはないんだけども……?
というか、『ワン』って……一応、狂犬だという自覚はあったの?
などと思いつつ、私はコホンッと一回咳払いする。
「えーと、とりあえず倒しちゃいましょうか。ちゃちゃっと片付けちゃってください」
私は右手の親指をグッと突き立て、彼らにGOサインを出した。
と同時に、ブワァッと風が巻き起こる。
反射的に目を瞑った私の前で、破壊音が鳴り響いた。
相変わらず、あの三人のスピードは凄まじいな……。
『勝負事に全力すぎる……』と苦笑を漏らしながら、私は下ろした瞼を上げる。
すると、そこにはもう巨大ゴーレムがなかった。あるのは、大量の光の粒子のみ。
えっ?瞬殺?不確定要素の多いゴーレムを相手に?
あまりのことにポカーンと口を開けていると、徳正さん達が戻ってきた。
「いやぁ、まさかあそこで漁夫のりされるとは思わなかったな~。絶対、俺っちが仕留めたと思ったんだけど~」
『無念……』
「やったー!僕の勝ちー!」
「いやいや、まだ勝負は終わってないよ~?誰が一番ゴーレムを多く倒せるかの勝負でしょ~?」
『徳正の言う通りだ。一体目を倒したからと言って、シムナが勝つ訳でははい。この遅れは必ず、取り返す』
「ふーん?出来るものなら、やってみればー?ま、最終的に勝つのは僕だけどー!」
「そう言っていられるのも、今のうちだよ~ん」
ギャーギャーと騒ぐ三人に、私はやれやれと肩を竦める。
と同時に、ゲーム内ディスプレイを呼び起こした。
電子メモを開き、『シムナさん=1』と書き込むと、私は顔を上げる。
さて……とりあえず、一体は討伐した。残りのゴーレムの居場所を知りたい。
私達は巨大ゴーレムに打ち勝つ力を持っているが、ターゲットの居る現場に居なければ意味がない。
私の役目はあの三人をターゲットの元へ送り込むこと。そのためには目撃情報が必要不可欠になる。
なので、まずは情報収集をしようと────掲示板を開いた。
隣に公式チャットの画面も呼び起こし、キュッと唇に力を入れる。
手っ取り早く情報収集するなら、やっぱりここしかないよね……。
「デマ情報を引き当てませんように!」
私は拝むような気持ちでゲーム内ディスプレイに向き直り、表示された文章や画像を食い入るように見つめた。
当面の目標としては、西大陸に存在する巨大ゴーレムの殲滅かな。
さすがに私達四人だけで、全大陸をカバーするのは難しいから。
ゴーレム討伐イベント開始まで、あと一分……。
私は表示された時刻を半ば睨みつけるように凝視しながら、ギュッと拳を握り締める。
思ったより緊張していたようで、手は少し震えていた。
情けない話だけど、正直不安だ。
今回のイベントは告知から開催までの時間が短い上、情報量も多くない。
ルールは教えて貰ったけど、ゴーレムの具体的な強さや特徴、出現場所なんかは教えて貰えなかった。
ゴーレムのことで分かっている事と言えば、大きいってことだけ。
『箱庭』の送り付けてきた文章に『巨大ゴーレム』とハッキリ書かれていたから、間違いないだろう。
でも、それだけじゃ作戦は立てられない。
参謀的立ち位置に居ながら、策を練れないなんて……情けないなぁ。
私は己の不甲斐なさに溜め息を零し、ギュッと胸元を握り締めた。
ナイトタイム終了を今か今かと待ちわびる中、時刻が更新される。
「────四時ジャスト!ゴーレム討伐イベント開始です!」
そう言うが早いか、夜空は満天の青空に変わった。
容赦なく照りつけてくる太陽を前に、私は右へ左へ視線を向ける。
ゴーレムはどこに!?三千体も居るんだから、一体くらい近くに居てもおかしくないと思うんだけど!?
などと考えていると────不意に辺りが暗くなる。
まるで、何かに日の光を遮られたかのように。
『今日の天気は曇り?』なんて思いながら視線を上げれば、予想外のものが目に入った。
「あ、あれが────ゴーレム!?」
「うひょ~!予想以上に大きいね~」
『見たことないタイプのゴーレムだな』
「わー!倒し甲斐ありそー!」
驚愕の表情を浮かべる私に対して、三人は余裕そうだ。
一軒家並の大きさを持つゴーレムが、上空から降ってきたというのに。
体は石で出来ているのか、見るからに硬そうだ。
ただ、見た目は通常のゴーレムと大して変わらない。本当にただ大きいというだけ。
でも、油断は出来ない。
特殊スキルや能力を持ち合わせているかもしれないから。
可能性の域を出ない話だが、『有り得ない』とは言い切れなかった。
「皆さん、見た目に惑わされないでください!通常のゴーレムとは別物と考えて、ことに当たりましょう!」
「りょーかーい」
『心得た』
「ラミエルがそう言うなら、そうするー!」
素直に忠告を聞き入れる彼らは空から降ってくるゴーレムを見つめ、武器を構える。
早く戦いたいのか、三人ともソワソワとしていて落ち着きがなかった。
本当に緊張感のないパーティーだな……まあ、そっちの方が気楽でいいけど。
『いい意味で肩から力が抜ける』と考えつつ、私は大きく息を吸い込む。
「────来ます!!」
そう叫んだ瞬間─────凄まじい落下音と爆風が、この場を駆け抜けた。
ざわざわと揺れる木々を前に、私は飛ばれないよう踏ん張る。
凄い衝撃……!その爆風だけで、人を殺せそうだ!
「これは久々に楽しい戦いになりそうだね~」
『さっさと殺して、次に行こう』
「ねぇ、誰が一番多くゴーレムを殺せるか勝負しようよー!ラミエルは審判と誰が何体ゴーレムを倒したか、カウントねー!よろしくー!」
「えっ?あ、はい……」
反射的に首を縦に振ってしまった私は、全く動じていない三人をまじまじと見つめる。
『この状況でよく競争なんて出来るな』と半ば感心していると、彼らは武器を持つ手に力を込めた。
かと思えば、待ち切れないとでも言うように舌舐めずりする。
「ねぇ~、ラーちゃん……もう行っていい?」
『飼い主様のGOサインが欲しいワン』
「ワンワン!」
いや、あの……三人の飼い主になったつもりはないんだけども……?
というか、『ワン』って……一応、狂犬だという自覚はあったの?
などと思いつつ、私はコホンッと一回咳払いする。
「えーと、とりあえず倒しちゃいましょうか。ちゃちゃっと片付けちゃってください」
私は右手の親指をグッと突き立て、彼らにGOサインを出した。
と同時に、ブワァッと風が巻き起こる。
反射的に目を瞑った私の前で、破壊音が鳴り響いた。
相変わらず、あの三人のスピードは凄まじいな……。
『勝負事に全力すぎる……』と苦笑を漏らしながら、私は下ろした瞼を上げる。
すると、そこにはもう巨大ゴーレムがなかった。あるのは、大量の光の粒子のみ。
えっ?瞬殺?不確定要素の多いゴーレムを相手に?
あまりのことにポカーンと口を開けていると、徳正さん達が戻ってきた。
「いやぁ、まさかあそこで漁夫のりされるとは思わなかったな~。絶対、俺っちが仕留めたと思ったんだけど~」
『無念……』
「やったー!僕の勝ちー!」
「いやいや、まだ勝負は終わってないよ~?誰が一番ゴーレムを多く倒せるかの勝負でしょ~?」
『徳正の言う通りだ。一体目を倒したからと言って、シムナが勝つ訳でははい。この遅れは必ず、取り返す』
「ふーん?出来るものなら、やってみればー?ま、最終的に勝つのは僕だけどー!」
「そう言っていられるのも、今のうちだよ~ん」
ギャーギャーと騒ぐ三人に、私はやれやれと肩を竦める。
と同時に、ゲーム内ディスプレイを呼び起こした。
電子メモを開き、『シムナさん=1』と書き込むと、私は顔を上げる。
さて……とりあえず、一体は討伐した。残りのゴーレムの居場所を知りたい。
私達は巨大ゴーレムに打ち勝つ力を持っているが、ターゲットの居る現場に居なければ意味がない。
私の役目はあの三人をターゲットの元へ送り込むこと。そのためには目撃情報が必要不可欠になる。
なので、まずは情報収集をしようと────掲示板を開いた。
隣に公式チャットの画面も呼び起こし、キュッと唇に力を入れる。
手っ取り早く情報収集するなら、やっぱりここしかないよね……。
「デマ情報を引き当てませんように!」
私は拝むような気持ちでゲーム内ディスプレイに向き直り、表示された文章や画像を食い入るように見つめた。
当面の目標としては、西大陸に存在する巨大ゴーレムの殲滅かな。
さすがに私達四人だけで、全大陸をカバーするのは難しいから。
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