『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

文字の大きさ
298 / 315
第七章

第297話『一斉攻撃』

しおりを挟む
『よし。では、ラミエルの言う通り手数で攻めよう』

 と書かれたホワイトボードを掲げ、ラルカさんはクマのぬいぐるみを一斉に動かす。
それを合図に、私達も攻撃を再開した。

「《サンダーブレス》」

「《ライトスピード・ショット》」

「影、もう一度魔王を喰らいに行け」

『承知した』

 ヴィエラさんの手のひらから放たれた雷と光の速さで空中を駆け抜けるシムナさんの弾丸、そして魔王を飲み込みに掛かる影さん。
また、私やリーダー、アラクネさんはそれぞれ物を投げつけた。
飛んでいく毒針・聖剣・蜘蛛糸を見つめ、『これでどうだ!』と意気込む。

 魔王と言えど、この数を捌くのは難しい筈!
負傷……とまでは行かずとも、玉座から引き摺り下ろすくらいは出来るだろう!

 『いつまでも余裕綽々とは行かないよ!』と息巻き、ニ撃目を準備する。
────と、ここで魔王は懐から黒い短剣を取り出した。

「数など、私の前では無意味」

 そう言うが早いか、魔王は剣先をこちらに向けた。
その瞬間、私達の放った攻撃は全てこちらへ向く。
まるで、あの短剣が示す方向を真似るかのように。

「えっ!?嘘……!」

 そっくりそのまま返ってきた攻撃を前に、私は立ち竦む。
幸い、影さんやクマのぬいぐるみなどプレイヤーの支配下にあるものは直ぐに止まってくれたが……一度手を離れた毒針や蜘蛛糸は、どうしようも出来ない。
『よ、避ける!?叩き落とす!?』と困惑する私を他所に、リーダーは鎖を引っ張った。
かと思えば、毒針や蜘蛛糸へ聖剣をぶつけ、僅かに方向を変える。
おかげで怪我を負うことはなかった。

 あ、危なかった……。

「ありがとうございます、リーダー」

「か、かかかかかかか、感謝します!」

「ああ……と言っても、アラクネは負傷しなかっただろうけどな」

 蜘蛛糸の特性上、持ち主を害することはないためリーダーは『余計なお世話だったか』と零す。
が、アラクネさんに『せ、精神的に救われました!』と言われ、考えを改めた。
『なら、いいか』と納得する彼を他所に、私は仲間達の安否を確認する。

 良かった……シムナさんとヴィエラさんも無事みたい。
って、そんなの当たり前か。
だって、ヴィエラさんは結界魔法を使えるし、シムナさんだって徳正さんに負けずとも劣らないスピードを持っているから。
回避くらい、余裕だっただろう。

 『とりあえず、無事で何より』と思いつつ、私は真っ直ぐ前を見据える。

「恐らく、あの短剣……いえ、アイテムには回数制限があるものと思われます。さすがに無制限だったら、チートすぎるので。ただ、先程のような事態を回避するため、しばらく攻撃は徳正さんの影魔法とラルカさんの人形、それからリーダーの聖剣エクスカリバーに絞ります」

「『「了解」』」

 直ぐさま首を縦に振る彼らは、それぞれの役目を全うするため動き出した。
先程と同じ要領で影さんとクマのぬいぐるみを突撃させ、少し遅れて聖剣エクスカリバーを投げる。
すると、今度はちゃんと魔王に届いた。
と言っても、全部回避されてしまったが。

 でも、『あの短剣の効果は連発不可能』と分かっただけでも有り難い。

「ちぇー!僕も戦いたかったなー!なんか、やられっぱなしみたいで気に食わなーい!」

「私達の攻撃が通ったのは、最初の一回だけだものね」

「それなー!これじゃあ、ラミエルに褒めてもらえないよー!」

 『徳正に見せ場を全部取られちゃう!』と言い、シムナさんは銃を足元に置く。
そして、アイテムボックスから金と銀の斧を取り出すと、

「てことで、さ────僕の斧にも、ボスみたいに鎖をつけてよー!」

 と言って、アラクネさんに手渡した。
『それなら、僕も戦えるでしょ!』と目を輝かせるシムナさんに、アラクネさんは一瞬固まる。
が、直ぐに状況を呑み込み、預かった斧を見下ろした。

「え、えっと……鎖を付けるのは構いませんが、ジャラジャラしているのはあまり好きじゃないと以前仰っていませんでしたか?」

「気が変わったのー!で、何分くらいで出来る?」

「そう、ですね……十五分ほど、お時間を頂けると……」

「りょーかーい。んじゃ、それまで守ってあげるよー」

 『周辺の警戒は任せて!』と申し出るシムナさんに、アラクネさんはおずおずと頷く。
ニコニコと機嫌よく笑う彼を一瞥し、こちらに目を向けると、『いいですか?』と視線だけで尋ねてきた。

 戦闘中に武器の改良なんて、呑気にも程があるけど……まあ、いいか。
どうせ、私達は当分何も出来ないし。

 今も一生懸命戦っているリーダー達を視界の端に捉え、私は小さく首を縦に振った。
『どうぞ』と促す私に対し、アラクネさんはペコリと頭を下げる。
時間が勿体ないと感じているのか早速作業を開始し、その場に座り込んだ。

「一応、結界を張っておくわね」

 完全に自分の世界へ入ってしまったアラクネさんを心配し、ヴィエラさんは半透明の球体で彼女を包み込む。
ついでに私達も。

「ありがとうございます」

「どういたしまして」

 ふわりと柔らかい笑みを浮かべるヴィエラさんは、ふとリーダー達の方へ視線を向ける。
つられて私も顔を上げると、苦戦中の三人が目に入った。

 三人とも元々接近戦タイプだし、こういう戦い方には慣れてないんだろうな。

 『そろそろ、距離の制約を解除するべきか』と思い悩んでいると、魔王の手の甲に聖剣が突き刺さる。

「徳正!」

 鎖を引っ張って魔王を引き寄せるリーダーに、徳正さんはニヤリと笑う。

「オーケー!任せて!────影、壁となれ!」

『承知した』

 こちらへ向かってくる魔王を待ち構えるかのように、影さんは大きく広がり天井まで体を伸ばした。
無論、聖剣エクスカリバーの鎖は取り込まないよう、そこだけ穴を空けて。

 ここからだと、影さんに視界を遮られて見えない……けど!きっと、かなり魔王を追い詰めている筈!

 ズズズズズッと少しずつ前へ出る影さんと全力で鎖を引っ張るリーダーに目を向け、私は期待に胸を膨らませた。
『このまま、行けば勝てる!』と。

「っ……!小癪な……!」

 玉座から引き摺り下ろされてさすがに焦ってきたのか、魔王は────『暴食』を発動する。
が、一回目や二回目のような威力はなく……影さんを若干怯ませた程度。
でも、その隙に自分の手首を斬り落とし、玉座へ戻った。

『すまない……』

「いえ、あれは仕方ありません。お気になさらず」

 『暴食』を発動されたら誰だって身構えるため、私は影さんを慰める。
他のメンバーも同感なのか、誰一人として影さんを責めなかった。
────と、ここでアラクネさんが声を上げる。

「で、でででででででで、出来ました!!!」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

追放されたら無能スキルで無双する

ゆる弥
ファンタジー
無能スキルを持っていた僕は、荷物持ちとしてあるパーティーについて行っていたんだ。 見つけた宝箱にみんなで駆け寄ったら、そこはモンスタールームで。 僕はモンスターの中に蹴り飛ばされて置き去りにされた。 咄嗟に使ったスキルでスキルレベルが上がって覚醒したんだ。 僕は憧れのトップ探索者《シーカー》になる!

たとえば勇者パーティを追放された少年が宿屋の未亡人達に恋するような物語

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。 ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。 だから、ただ見せつけられても困るだけだった。 何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。 1~2話は何時もの使いまわし。 リクエスト作品です。 今回は他作品もありますので亀更新になるかも知れません。 ※ つい調子にのって4作同時に書き始めてしまいました。   

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

処理中です...