断罪されし真の聖女は滅びを嘆く

あーもんど

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第二章

雷《教皇聖下 side》

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 異常現象が教会と王家を襲いようになってから、三日後。
私は大地を揺るがす落雷で、目が覚めた。
バッと飛び起きた私は寝起きでぼんやりしている頭をフル回転し、周囲を見回す。
すると、カーテン越しにピカッと光る雷が見えた。

 え、なっ……雷だと!?
この時期の天気はいつも安定していて、雷なんて鳴ったことがないのに……まさか、これも連日続く異常現象の影響か?

 嫌な予感を覚える私はゴクリと喉を鳴らし、恐る恐る窓に近づく。
そして────一思いにカーテンを開け放った。

「な、何だこれは……!?」

 外は大雨で、時々ピカッと光る黒い雲が空を覆っている。
でも、私が衝撃を受けたのはそこじゃなかった。

「な、何故─────街の方は無事なんだ!?」

 小さな丘に建つ教会支部は、街の様子を一望出来る位置にある。
そのため、街の方の天気を確認することが出来た。

 昨日起きた異常現象と同じように、天候が荒れているのは教会と王家の所有地だけ……。
少なくとも、私が確認出来る範囲ではそうなっている。
ここまで来ると、いい加減私もある可能性を疑わなければならなかった。

「神は……いや、神の嫁である元聖女メイヴィスは我々に激怒しているのか……」

 誰に言うでもなくそう呟くと、地響きのような低い唸り声が空から聞こえた。
そして、次の瞬間────元聖女メイヴィスの怒りを表すかのように、雷が庭に落ちる。
私は生まれて初めて神という存在に恐怖した。

 神は人に寄り添い、人を導く存在だと教えられて来たが、果たしてそれは本当なのだろうか?
もし、これが天罰なら、神は我々の思い描くような素晴らしい人格の持ち主ではないのかもしれない。
だって、神にも我々と同じ感情があるという事なのだから。

 私は背筋に走るゾクリとした感覚に怯えながら、危機感を覚える。
愚かな決断をした過去の自分を呪い、『何故、あの女の口車に乗ってしまったのか』と後悔した。

 私はただ、聖女教の権威をそのまま残しておきたかっただけなんだ……。
メイヴィスが二十歳になれば、聖女教は少しずつ……もしくは一気に力を失うから。
もしも、例の言い伝えが本当なら昇天してしまうし、嘘なら世界を騙した大詐欺師として処刑されるだろう。先日のように……。

 聖女教がここまで信仰された理由は、ひとえに聖女という存在を実際に見て、聞いて、感じることが出来るから。
なのに、昇天して居なくなったり、偽物だと分かったりすれば……民の心は離れていくだろう。
だから、ロゼッタを聖女の座に置いて、聖女教の存続を図ったのだ。

 聖女の意味すら書き換える危険な賭けではあったが……メイヴィスを偽聖女として断罪したのが良かったのか、民はすんなり受け入れた。
むしろ、メイヴィスの時より、信仰は強まった気がする。
だから─────連日続く異常現象さえ起きなければ、全て完璧だったのだ。
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