断罪されし真の聖女は滅びを嘆く

あーもんど

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第二章

思い込み《トリスタン side》

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 ────同時刻、フィオーレ王国の王城にて。
天界から降臨した天使の言葉により、罪が露見した私は父上の命令で、地下牢に閉じ込められていた。
臭く汚い地下牢の中で、私は天使の言葉を反芻する。

 メイヴィスが神の花嫁だと……?あれは迷信じゃなかったのか?
大体、復讐って何だ?私がメイヴィスに何をしたって言うんだ?
メイヴィスを攫わなかったことに関しては、悪いと思っている。
でも、それ以外に恨まれることなんて……何一つない。

「私はメイヴィスの愛する夫だ。恨まれる筈がない……復讐なんて、以ての外だ」

 私は自分に言い聞かせるようにそう呟き、ギュッと蹲る。
『メイヴィスに愛されている』という根拠のない自信だけが、私の心を支えてくれた。

 大丈夫だ……メイヴィスに捨てられることは、絶対にない!きっと、私の迎えを待っている筈だ……!
幸い、黒魔術の件は父上にバレなかったし、隙を見てまたメイヴィスに会いに行こう!

「ふははははっ!!待っていろ!!メイヴィス!!お前の夫たる私が、必ず迎えに行ってやるからな!!」

 『明日、世界が滅びる』と言われたことも忘れ、私は幸せな未来を思い描いた。
ニヤニヤと笑う私に、看守の男が呆れた目を向ける。
────と、ここで人の怒鳴り声が聞こえてきた。

『ふ……だ!』

『お……しろ!』

『……さ……で!!』

『は……お……せ!!』

 距離の関係で、何を言っているのかは分からないが、言い争っているのは確かだった。

 全く、こんな時に騒ぎを起こすなんて、一体どこのどいつだ?
首をはねられる覚悟があってのことだろうな?

「暴動……いや、クーデターか」

 看守の零した独り言に、私はコテンと首を傾げる。

 クーデターだと……?何故、そんなことを起こす必要がある?
まさか、我々フローレンス王家の政治に不満でもあるのか?権力者に媚びることしか出来ない、下民の分際で……?
確かに異常現象のせいで、国は大変なことになっているが、わざわざ騒ぎ立てることでもあるまい。

「気に入らないことがあれば、直ぐに暴力で解決しようとする……下民達の悪い癖だな。なんて野蛮な奴らなんだ」

 自分の行いが原因で、こうなったとは微塵も思わない私は、『やれやれ』と肩を竦める。
完全に斜め上の態度を取る私に、看守の男は『馬鹿か?こいつ……』と言いたげな目を向けた。

 まあ、クーデターなんて直ぐに収まるだろう。
うちの近衛騎士団はみんな優秀だからな。そこらの雑魚に負ける筈がない。
それよりも、どうやって父上を説得するか考えなくては……!いつまでも、ここに閉じ込められている訳にはいかない!愛するメイヴィスが待っているのだから!

 愛しい妻の姿を思い浮かべ、必死に思考を回す私は────神の逆鱗に触れていることに、全く気がつかなかった。
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