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第一章
『一つ目小僧のプロポーズ』その一
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春。
日本の代表的な花、桜が咲く季節と呼ばれる時期が今年もやって来た。
春は『新しい』と『新発見』がたくさんの季節だ。
ある者は進級し、ある者は就職し、ある者は引っ越しをする。
新しい土地、新しい環境、新しい人間関係。
そんな『新しい』がたくさんの季節であってもやはり変わらない人や物も居るわけで....。
ここ、『フラワーショップかのん』も良くも悪くも変化のない場所の一つであった。
真っ白な外装に外にまではみ出た花の数々。
店内はステンドグラスで作られたお洒落な照明がとても印象的だった。ステンドグラスのデザインにも花を用いるあたり、ここの店主は筋金入りの花好きだと見てとれる。
真っ白な長テーブルと棚以外家具は何も置いていない。それらの家具以外の場所は全て花が占領している。
そんなほぼ花しか置いていない店にある一人の客がやって来た。
「たーのもぅ!店主は居るかー!?大至急花を用意してもらいたいー!」
この少々喋り方の癖が強い男は“あやかし”であり、名を一つ目小僧と言う。
その名の通り、目は一つしかない。
顔の半分を大きな一つの目ん玉が占めており、鼻はなく、ぽってりとした唇がついている。
パーカーとスウェットという現代風のラフな格好で現れた一つ目の元へある一人の少女が駆け寄った。
艶やかな黒髪に茶色がかった綺麗な瞳を持つ少女はどこをどう見ても子供にしか見えない。それもかなり小さい子供だ。
何故子供がここに?と不思議に思う一つ目であったが、少女の纏うオーラが妙に大人びていたせいかツッコミを入れることはなかった。
「お嬢ちゃん、この店の店主....と言っても分からぬか...。お嬢ちゃんの両親を呼んできてくれるかい?」
一つ目は無言で側に駆け寄ってきた少女に膝を折って、そう告げる。
出来るだけ優しく笑顔で告げた一つ目に対し、少女はコテンと首を傾げた。
「両親?両親なら、今海外に居るわ。それにここの店主は私────花音よ」
「ええっ!?お嬢ちゃんが店主!?」
そう、ここ『フラワーショップ“かのん”』はこの幼き少女───花音が店主であった。
驚きの事実に一つ目は豆鉄砲を食らった鳩のような顔をする。
一つ目の間抜け面を見ても花音は決して無表情を崩さない。
普通、このくらいの年の子は感情の浮き沈みが激しく目まぐるしく表情が変化するのにも関わらず、花音はそれらの常識や普通をひっくり返すように無表情であった。
一つ目は現状に頭が追い付かない中、なんとか声を絞り出す。
「本当にお嬢ちゃ....花音ちゃんがここの店主なのかい?」
「ええ、そうよ。間違いないわ」
「そうか....」
「私のような子供が店主では不安なの?」
宝石の仲間であるスモーキークォーツを思わせる澄んだ瞳を花音は一つ目へ向けた。
真っ直ぐ一つ目を見据え、純粋な疑問を口にする花音。
子供は良くも悪くも正直な生き物だ。
だから、今回もただ思ったことを口にしただけなんだろう。
一つ目は迷った。
このような少女に恋人へ贈る花を選ばせて良いものなのか、と。
ましてや、今回贈る花束ただの花束ではない。
一斉一代のプロポーズに使用する花束だ。
そんな大事なものをこのような幼い少女に選ばせて良いものなのか....一つ目には分からなかった。
だからと言って、ここで『子供の店主では不安だ』と正直に答えるのもなんだか気が引ける。
一つ目は大きな瞳を右へ左へウロウロさせるしかなかった。
日本の代表的な花、桜が咲く季節と呼ばれる時期が今年もやって来た。
春は『新しい』と『新発見』がたくさんの季節だ。
ある者は進級し、ある者は就職し、ある者は引っ越しをする。
新しい土地、新しい環境、新しい人間関係。
そんな『新しい』がたくさんの季節であってもやはり変わらない人や物も居るわけで....。
ここ、『フラワーショップかのん』も良くも悪くも変化のない場所の一つであった。
真っ白な外装に外にまではみ出た花の数々。
店内はステンドグラスで作られたお洒落な照明がとても印象的だった。ステンドグラスのデザインにも花を用いるあたり、ここの店主は筋金入りの花好きだと見てとれる。
真っ白な長テーブルと棚以外家具は何も置いていない。それらの家具以外の場所は全て花が占領している。
そんなほぼ花しか置いていない店にある一人の客がやって来た。
「たーのもぅ!店主は居るかー!?大至急花を用意してもらいたいー!」
この少々喋り方の癖が強い男は“あやかし”であり、名を一つ目小僧と言う。
その名の通り、目は一つしかない。
顔の半分を大きな一つの目ん玉が占めており、鼻はなく、ぽってりとした唇がついている。
パーカーとスウェットという現代風のラフな格好で現れた一つ目の元へある一人の少女が駆け寄った。
艶やかな黒髪に茶色がかった綺麗な瞳を持つ少女はどこをどう見ても子供にしか見えない。それもかなり小さい子供だ。
何故子供がここに?と不思議に思う一つ目であったが、少女の纏うオーラが妙に大人びていたせいかツッコミを入れることはなかった。
「お嬢ちゃん、この店の店主....と言っても分からぬか...。お嬢ちゃんの両親を呼んできてくれるかい?」
一つ目は無言で側に駆け寄ってきた少女に膝を折って、そう告げる。
出来るだけ優しく笑顔で告げた一つ目に対し、少女はコテンと首を傾げた。
「両親?両親なら、今海外に居るわ。それにここの店主は私────花音よ」
「ええっ!?お嬢ちゃんが店主!?」
そう、ここ『フラワーショップ“かのん”』はこの幼き少女───花音が店主であった。
驚きの事実に一つ目は豆鉄砲を食らった鳩のような顔をする。
一つ目の間抜け面を見ても花音は決して無表情を崩さない。
普通、このくらいの年の子は感情の浮き沈みが激しく目まぐるしく表情が変化するのにも関わらず、花音はそれらの常識や普通をひっくり返すように無表情であった。
一つ目は現状に頭が追い付かない中、なんとか声を絞り出す。
「本当にお嬢ちゃ....花音ちゃんがここの店主なのかい?」
「ええ、そうよ。間違いないわ」
「そうか....」
「私のような子供が店主では不安なの?」
宝石の仲間であるスモーキークォーツを思わせる澄んだ瞳を花音は一つ目へ向けた。
真っ直ぐ一つ目を見据え、純粋な疑問を口にする花音。
子供は良くも悪くも正直な生き物だ。
だから、今回もただ思ったことを口にしただけなんだろう。
一つ目は迷った。
このような少女に恋人へ贈る花を選ばせて良いものなのか、と。
ましてや、今回贈る花束ただの花束ではない。
一斉一代のプロポーズに使用する花束だ。
そんな大事なものをこのような幼い少女に選ばせて良いものなのか....一つ目には分からなかった。
だからと言って、ここで『子供の店主では不安だ』と正直に答えるのもなんだか気が引ける。
一つ目は大きな瞳を右へ左へウロウロさせるしかなかった。
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