あやかし花屋の花売り少女

あーもんど

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第二章

その四

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 くして、少女と烏天狗の意味不明な勝負は始まったのだった。

 翌日の早朝。
 宣言通り、少女の元を訪れた烏天狗は上下ジャージ姿であった。
 真っ黒な布に白のラインが入ったシンプルなジャージを身に纏う烏天狗の手にはエプロンが握られている。
 白い兎の刺繍が入ったオレンジ色のエプロンはポップなデザインで大変可愛らしい。
 そんな可愛らしいエプロンを手にしているのが美形の部類に入る烏天狗なのだと考えると少し笑ってしまうが....。
 日の出と共に姿を現した烏天狗はズカズカと躊躇いもなく、少女の家に侵入する。
 それを人間がやれば不法侵入と見なされ、住居侵入罪で即逮捕案件だ。
 無法者であるあやかしだから出来る荒業である。
 少女の家はショップの奥とその二階が生活スペースとなっているため、烏天狗に自宅がバレてしまったのだ。
 まだ朝の四時半のため、少女の自宅はもちろん商店街もシーンと静まり返っている。
 烏天狗は少女の自室とおぼしき部屋へ近付くと、そっと扉を開けた。
 物音を立てぬよう細心の注意を払いながら、部屋へ侵入すればベッドの方から寝返りを打つ音が聞こえる。
 どうやら、少女はまだ眠っているらしい。
 それもそうだろう。何度も言うように今はまだ朝の四時半、早朝である。
 起きている人の方が少ない筈だ。
 何もねぇーな、この部屋...。
 ベッド、勉強机、椅子、本棚....必要最低限のものしか置かれていないこの部屋は殺風景だった。
 しかも、それらの家具はどれも白で統一されているため、この部屋の質素さに拍車をかける。
 この部屋に来る途中、他にも何部屋か覗いたがどれも家具や物が少なかったな....。
 覗きの趣味でもあるのか、と突っ込みたくなるくらい烏天狗はあちこちの部屋を見て回っていたが、彼の言う通りどの部屋も殺風景で少女の自室とあまり大差なかった。
 他の部屋はともかく、自室くらいは多少お洒落に改良されていると思ったんだが....予想が大きく外れちまったな。
 スヤスヤとシングルベッドの上で眠る少女の寝顔はあどけない。
 少女サイズの体の大きさだとシングルベッドも大きく見えるから不思議だ。
 純白の空間で純白の毛布に包まれて眠る少女はまるで純白のお姫様のようである。
 顔はそれなりに整ってるんだから、子供らしく笑えば良いのによ...。
 子供にしては珍しいハッキリとした顔立ちをしている少女は『可愛い』よりも『美人』という言葉の方が似合う。
 その顔で愛嬌を振る舞えば、子供大人関係なく大抵の人からは好かれるだろう。
 それがどうして、こうなっちまうんだか....。
 常に無表情のせいなのか、それとも口数が少ないせいなのか、少女には『無愛想』という言葉がよく似合う。
 まあ、まだ会話が出来るだけマシか。
 無愛想ではあるものの、話し掛ければきちんと返事をするし、受け答えもしっかりしている。
 まあ、受け答えがハッキリしてるのが問題だったりするんだけどな....。
 いや、その話は一旦置いておこう。
 烏天狗は毛布に手を伸ばすと、首元までしっかり隠れるよう毛布をかけ直してやった。
 よし!とりあえず、この餓鬼が起きてくる前に朝飯でも作るか!
 思い立ったら即行動が流儀である烏天狗は手早くエプロンを装着し、先程見つけておいた台所へと転がり込んだ。
 朝飯は一日のエネルギー源だから、栄養のあるものじゃねぇーとな!
 オカンキャラ全開の烏天狗は戸棚や冷蔵庫を確認しながら、意気揚々と料理を始めた。
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