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第二章
その三
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しばらく二人の間で沈黙が流れたあと、何かを決心したらしい烏天狗がおもむろに口を開いた。
「よしっ!じゃあ、俺がお前の保護者代わりになってやる!」
突拍子もない話を得意気に話す烏天狗は堂々と胸を張る。
『どうだ、嬉しいだろ!』と言わんばかりの偉そうな態度だ。
餓鬼には保護者が必要だからな!俺が居れば餓鬼の言う“不便”も少しは減るだろ。
世話焼きな烏天狗に少女をこのまま放置する、という選択肢はない。
少女は得意気に胸を張る烏天狗を横目で捕らえながら、緩く首を左右に振った。
「必要ない。気持ちだけで十分よ」
少女は別に保護者など求めていなかった。
この不便な生活も慣れてしまえば、どうってことない。
一人を好む傾向にある少女は烏天狗という保護者を得てまで生活の不便さを取り除く必要はないと判断している。
不便な生活が必ずしも悪いとは限らない。
烏天狗の気持ちは嬉しいが、彼の気遣いは少女にとって不要だった。
『必要はない』とばっさり切り捨てられた烏天狗は軽くフリーズする。
え、は....?断られた?
あやかしである彼もまた不便な生活を送っているが、少女の保護者として活躍する自信は大いにあった。
買い出しの荷物持ち、料理、洗濯、掃除、店番などなど他にも出来ることはたくさんある。
若干....いや、かなりオカンスキルが高い烏天狗は家事全般得意であった。
そのため、少女の保護者として自分の持てる全てを捧げようと考えていたのだが....見事振られてしまった。
失恋にも似た感情が烏天狗の中でわき上がる。
人間の餓鬼ごときが....俺の申し出を断るとは良い根性してるじゃねぇーか....。
「よしっ!じゃあ、勝負だ!!明日一日、俺を側に置け!それで必要か不要か、もう一回判断しやがれ!」
『いや、それ勝負じゃない....』と、この場に他の人が居ればそう突っ込んでいただろう。
だが、残念ながらこの場には口数の少ない少女しかツッコミ役が居ない。
少女は『勝負しろ!』と息巻く烏天狗を相変わらずの無表情で見上げる。
冷静な少女は烏天狗の言う勝負内容が“勝負”とは程遠いものだと気づいているが、ツッコミは入れない。
不要な指摘だと少女は判断したのだ。
よく分からない勝負を申し込んできた烏天狗を少女は今一度頭のてっぺんから足の指先まで品定めするようにじっくり見つめると、コクンと一度だけ頷いた。
ここで断ったら、あとが面倒だと判断したのだ。
しつこく付き纏われでもしたら、迷惑だもの...。
烏天狗の世話焼きという名の母性本能が加速してストーカーに成り下がる危険性を危惧した少女は二つ返事で了承した。
「おっし!じゃあ、また明日来るからな!逃げんなよ!」
ビシッと少女を指差し、釘を刺した烏天狗はくるりと身を翻した。
直後、墨汁のように黒い翼がバサッと広がる。
ふわりと宙に浮いた烏天狗は少女の方を一度も振り返ることなく、空高く舞い上がった。
『カーカー』と鳴く烏の群れを蹴散らすように空に弧を描くと、西の山目掛けて猛スピードで飛び去っていく。
その姿を見届けた少女は何事も無かったかのように花へ水やりを始めた。
「よしっ!じゃあ、俺がお前の保護者代わりになってやる!」
突拍子もない話を得意気に話す烏天狗は堂々と胸を張る。
『どうだ、嬉しいだろ!』と言わんばかりの偉そうな態度だ。
餓鬼には保護者が必要だからな!俺が居れば餓鬼の言う“不便”も少しは減るだろ。
世話焼きな烏天狗に少女をこのまま放置する、という選択肢はない。
少女は得意気に胸を張る烏天狗を横目で捕らえながら、緩く首を左右に振った。
「必要ない。気持ちだけで十分よ」
少女は別に保護者など求めていなかった。
この不便な生活も慣れてしまえば、どうってことない。
一人を好む傾向にある少女は烏天狗という保護者を得てまで生活の不便さを取り除く必要はないと判断している。
不便な生活が必ずしも悪いとは限らない。
烏天狗の気持ちは嬉しいが、彼の気遣いは少女にとって不要だった。
『必要はない』とばっさり切り捨てられた烏天狗は軽くフリーズする。
え、は....?断られた?
あやかしである彼もまた不便な生活を送っているが、少女の保護者として活躍する自信は大いにあった。
買い出しの荷物持ち、料理、洗濯、掃除、店番などなど他にも出来ることはたくさんある。
若干....いや、かなりオカンスキルが高い烏天狗は家事全般得意であった。
そのため、少女の保護者として自分の持てる全てを捧げようと考えていたのだが....見事振られてしまった。
失恋にも似た感情が烏天狗の中でわき上がる。
人間の餓鬼ごときが....俺の申し出を断るとは良い根性してるじゃねぇーか....。
「よしっ!じゃあ、勝負だ!!明日一日、俺を側に置け!それで必要か不要か、もう一回判断しやがれ!」
『いや、それ勝負じゃない....』と、この場に他の人が居ればそう突っ込んでいただろう。
だが、残念ながらこの場には口数の少ない少女しかツッコミ役が居ない。
少女は『勝負しろ!』と息巻く烏天狗を相変わらずの無表情で見上げる。
冷静な少女は烏天狗の言う勝負内容が“勝負”とは程遠いものだと気づいているが、ツッコミは入れない。
不要な指摘だと少女は判断したのだ。
よく分からない勝負を申し込んできた烏天狗を少女は今一度頭のてっぺんから足の指先まで品定めするようにじっくり見つめると、コクンと一度だけ頷いた。
ここで断ったら、あとが面倒だと判断したのだ。
しつこく付き纏われでもしたら、迷惑だもの...。
烏天狗の世話焼きという名の母性本能が加速してストーカーに成り下がる危険性を危惧した少女は二つ返事で了承した。
「おっし!じゃあ、また明日来るからな!逃げんなよ!」
ビシッと少女を指差し、釘を刺した烏天狗はくるりと身を翻した。
直後、墨汁のように黒い翼がバサッと広がる。
ふわりと宙に浮いた烏天狗は少女の方を一度も振り返ることなく、空高く舞い上がった。
『カーカー』と鳴く烏の群れを蹴散らすように空に弧を描くと、西の山目掛けて猛スピードで飛び去っていく。
その姿を見届けた少女は何事も無かったかのように花へ水やりを始めた。
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