あやかし花屋の花売り少女

あーもんど

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第二章

その十九

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 ったく、何だったんだ?あの夫婦は...。
 女の方は怪力だし、男の方は弱虫だし...色んな意味で凄い夫婦だな、おい。
 嵐のような夫婦だと内心毒づきながら、中断していた作業に戻る。
 店に置かれている花の六割を見終わった烏天狗は自身にもう一踏ん張りだと言い聞かせ、作業を続行した。
 はぁ....こんな地道な作業、餓鬼はよくやるなぁ。飽きたりしねぇーのか?
 この量の花を毎日毎日見て回って....世話をして...。
 誰かに褒められることもなく、一人淡々と作業を行う少女の姿を想像し、烏天狗は僅かに眉を潜めた。
 やっぱ....こんな餓鬼に店主なんてまだ早いだろ。
 さっきの夫婦みてぇに良い客だけとも限らねぇーし、やっぱり大人は必要だ。
 自分の必要価値を見出だしたいだけかもしれねぇーが、やっぱりこの餓鬼を一人には出来ねぇ....。
 烏天狗は葉っぱの裏を確認しながら、花の調子を分析する。
 仕事に熱心に取り組む烏天狗の背中を少女は一瞥すると、霧吹き作業に戻ろうとはせず、何故か菊に歩み寄った。
 菊の世話はもう既に終わっているため、近付く必要は全くない。
 にも関わらず、少女は迷うことなく菊に歩み寄った。

「ねぇ....貴方はお墓参りに行かないの?それとも、もう行った?」

「あ”ぁ?いきなり、なんだよクソ餓鬼...」

「ただ気になっただけよ。気を悪くしたなら、ごめんなさい」

 ペコリと頭を下げる少女に烏天狗は『チッ』と大きく舌打ちする。
 墓参りなんか....行ってねぇーよ。
 夏樹の遺体を丁寧に埋葬した当初は杉の木の下から一歩も離れなかったが、時が経ち冷静になればなるほど罪悪感と後悔が烏天狗の胸に押し寄せた。
 それから、何時だったか烏天狗は杉の木に一切近付かなくなったのだ。
 何かから逃げるように....姿を現さなくなった。
 命日はもちろん、お盆の日も夏樹の墓へ足を向けようとしない。
 少女に墓参りの件を尋ねられた烏天狗は気が気じゃなかった。
 チッ....!珍しく自分から口を開いたと思ったら、これかよ....!
 てめぇは地雷踏む達人か、なんかか!?

「頭上げろ。別に怒ってねぇーよ....で、墓参りのことだったか?俺は墓参りなんざ行かねぇーよ。あんな苦しいだけの場所....行きたくねぇ...」

「......そう」

 少女は深く言及することはなく、ただ頷くだけ。
 素っ気なくも気遣いを感じる対応に烏天狗はキュッと口元を引き締めた。
 .....これだから、察しの良い餓鬼は嫌なんだよ。
 しん....と静まり返った店内で烏天狗はひたすら作業に没頭する。
 この沈黙すらも少女からの気遣いのように思えて、烏天狗は気に食わなかった。
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