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第三章
閑話
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夕暮れどきの町を黒の美丈夫と一人の少女が並んで歩く。
秋用の薄手のコートに身を包んだ少女と相変わらずのジャージにオリジナルエプロン姿の烏天狗。
二人とも、両手からスーパーの袋を下げていた。
どうやら、買い出しの帰りらしい。
「悪いな、荷物持たせて。本当はこんなに買う予定なかったんだが...特売日だから、ついな...」
「大丈夫よ。気にしないで」
オカンキャラ全開の烏天狗は特売日という言葉に弱い。
今日は少し遠くにあるスーパーまで足を伸ばしていた。
移動時間にそこそこ時間が掛かるため、今日の花屋はいつもより一足先に閉店している。
比較的軽い荷物を手からぶら下げている少女は『荷物持ち』という役割に不満を持っているようではなかった。
私のために購入したものでもあるのだから、荷物持ちくらい当然だわ。
そう、この荷物のほとんどが少女と烏天狗の食料なのである。
いつも、料理をしてもらっているし、荷物持ちくらい手伝わないと....。
少女なりに家事全般をこなす烏天狗には感謝していた。
だから文句も言わずに荷物を持ち、長い距離を共に歩いている。
そもそも、買い物についていくと言ったのは少女の方だった。
土手沿いの大きな橋に差し掛かり、少女はおもむろに視線を土手へ向けた。
─────見つけたのは本当に偶然だった。
スモーキークォーツの瞳には土手の上に寝転がる一人の男の子と一匹の三毛猫の姿が映る。
学校の制服に身を包んだ青年の上に尻尾が二つに別れた三毛猫が寝転がっていた。
猫の尻尾が二つに別れていること以外は何の変哲もない極普通の光景。
その光景を少女は食い入るようにじーっと見つめる。
あれがあの猫の見舞い相手かしら...?
尻尾が二つに別れていることによって、猫の方は先日店へやって来た猫又だと判断した少女。
確か最近男子高校生が後遺症もなく、無事市立病院から退院したって....誰だったかしら?
なんとか記憶を呼び起こそうとする少女はあることに気づき、ピタッと思考を止めた。
「お客様のプライベートに踏み入るのは野暮、よね...」
何度も言うように客のプライベートを詮索するのはNG行為である。
「あー?なんか言ったかー?」
声量を抑えた少女の呟きに敏感に反応した烏天狗が少女を振り返る。
そこに居るのはやはり無表情な女の子だった。
「何でもないわ」
こちらを心配そうに見つめる烏天狗の隣を少女はスッと通り過ぎていく。
赤く染まる空を見上げながら、少女は切に願った。
──────どうか、お幸せに。
秋用の薄手のコートに身を包んだ少女と相変わらずのジャージにオリジナルエプロン姿の烏天狗。
二人とも、両手からスーパーの袋を下げていた。
どうやら、買い出しの帰りらしい。
「悪いな、荷物持たせて。本当はこんなに買う予定なかったんだが...特売日だから、ついな...」
「大丈夫よ。気にしないで」
オカンキャラ全開の烏天狗は特売日という言葉に弱い。
今日は少し遠くにあるスーパーまで足を伸ばしていた。
移動時間にそこそこ時間が掛かるため、今日の花屋はいつもより一足先に閉店している。
比較的軽い荷物を手からぶら下げている少女は『荷物持ち』という役割に不満を持っているようではなかった。
私のために購入したものでもあるのだから、荷物持ちくらい当然だわ。
そう、この荷物のほとんどが少女と烏天狗の食料なのである。
いつも、料理をしてもらっているし、荷物持ちくらい手伝わないと....。
少女なりに家事全般をこなす烏天狗には感謝していた。
だから文句も言わずに荷物を持ち、長い距離を共に歩いている。
そもそも、買い物についていくと言ったのは少女の方だった。
土手沿いの大きな橋に差し掛かり、少女はおもむろに視線を土手へ向けた。
─────見つけたのは本当に偶然だった。
スモーキークォーツの瞳には土手の上に寝転がる一人の男の子と一匹の三毛猫の姿が映る。
学校の制服に身を包んだ青年の上に尻尾が二つに別れた三毛猫が寝転がっていた。
猫の尻尾が二つに別れていること以外は何の変哲もない極普通の光景。
その光景を少女は食い入るようにじーっと見つめる。
あれがあの猫の見舞い相手かしら...?
尻尾が二つに別れていることによって、猫の方は先日店へやって来た猫又だと判断した少女。
確か最近男子高校生が後遺症もなく、無事市立病院から退院したって....誰だったかしら?
なんとか記憶を呼び起こそうとする少女はあることに気づき、ピタッと思考を止めた。
「お客様のプライベートに踏み入るのは野暮、よね...」
何度も言うように客のプライベートを詮索するのはNG行為である。
「あー?なんか言ったかー?」
声量を抑えた少女の呟きに敏感に反応した烏天狗が少女を振り返る。
そこに居るのはやはり無表情な女の子だった。
「何でもないわ」
こちらを心配そうに見つめる烏天狗の隣を少女はスッと通り過ぎていく。
赤く染まる空を見上げながら、少女は切に願った。
──────どうか、お幸せに。
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