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第三章
その九
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コージの口から『病に打ち勝った』と聞き、猫又は安心したようだった。
良かったにゃ....本当に良かった。
これでコージが死んでいたら、猫又は一生後悔していただろう。
何故会いに行かなかったのか、と。
記憶がなくとも、コージは大事な友人だろう、と。
想像を絶する後悔とやるせなさが猫又を襲っていた筈だ。
「ははっ!ミケって意外と心配性なんだな?」
記憶の欠片すらもない友人の安堵した様子にコージは可笑しそうに笑い声をあげる。
自分からすれば赤の他人同然の者が己の心配してくれていたのだ。可笑しく感じるのも無理はないだろう。
でも....なんだろうな。不思議と違和感はないんだ。しっくり来るって言うか....。
こいつと友人なんだって知ったとき、特に抵抗なく心がスッと受け入れた。
正解だとコージに告げるように彼の心は猫又をあっさり受け入れたのだ。
「命を落とす危険性があると言われれば心配するのは当たり前にゃ!」
「ははっ!それもそうだな」
“死”を確約された種族である人間は脆い。
それを昔からよく知る猫又が『命を落とす危険性がある』と聞かされて、心配しない訳がなかった。
泣き笑顔から、ムスッとした表情に早変わりした猫又にコージはケラケラ笑いながら『ごめんごめん』と繰り返す。
記憶がないとは思えないほどの順応ぶりに猫又は今更ながら目を見開いた。
コージが自然体過ぎて忘れそうににゃってたけど、コージは記憶がにゃいんだった。
猫又は奇跡と呼ぶに相応しい今の幸せをじっと噛み締める。
もう二度と会えないと思っていた人との再会に猫又の涙腺が緩んだ。
ダメにゃ....年を取ったせいか、涙腺がすっかり緩くなっちゃったにゃ。
『年は取りたくないものにゃ』と苦笑しながら、猫又は潤んだ瞳でコージを見上げる。
以前と変わらぬ無邪気な笑顔に猫又は頬を緩めた。
「あっ、そうだ!花ありがとな!あれ、もうほとんど枯れちゃって残りこれしかないんだけど....」
コージは背負っていたリュックから、無造作に花を取り出した。
彼の手には今、くしゃくしゃの花が握られている。
普通は『もう少し花に気を使えないのか』と叱りつけるところだが、コージにとことん甘い猫又は気にしない。これが烏天狗などの知人または赤の他人であれば猫又も激怒していただろうが、大切な友人が相手なら全く気にならなかった。
むしろ、『取っておいてくれたのか』と感激したくらいである。
冷静さを失っていたとは言え、投げ付けた花を取っておいてくれているとは思わなかった猫又はゆるゆると頬を緩めた。
これだけ頬を緩めても不細工に見えないのは偏に愛くるしい猫の容姿をしているからだろう。
これがもしも、人間があったなら相当酷い面になっていたに違いない。
「今更だけど、花ありがとな!それと....傷つけてごめん。何でか分からないんだけど、記憶が抜け落ちてて...俺とまた一から友達をやってくれると嬉しい!!」
そう言ってコージは手にした花を猫又に向かって差し出した。
オレンジ色のアルストロメリアの花は花びらをくしゃくしゃにしながらも、凛と咲き誇っている。
花としての儚さではなく、凛とした芯の強さが感じられた。
『また一からやり直したい』と述べる記憶のない友人に猫又は僅かに微笑む。
ここ一週間、その言葉だけを求めてきた。
─────やり直したい。
その一言だけで猫又にとっては十分。
猫又は差し出された花をコージの手ごと両手で包み込む。
ぽふっと愛らしい肉球が優しくコージの手と花に触れた。
「こちらこそにゃ!また一からやり直そうにゃ!」
キトンブルーの淡い瞳が涙を浮かべながら、穏やかに微笑んだ。
良かったにゃ....本当に良かった。
これでコージが死んでいたら、猫又は一生後悔していただろう。
何故会いに行かなかったのか、と。
記憶がなくとも、コージは大事な友人だろう、と。
想像を絶する後悔とやるせなさが猫又を襲っていた筈だ。
「ははっ!ミケって意外と心配性なんだな?」
記憶の欠片すらもない友人の安堵した様子にコージは可笑しそうに笑い声をあげる。
自分からすれば赤の他人同然の者が己の心配してくれていたのだ。可笑しく感じるのも無理はないだろう。
でも....なんだろうな。不思議と違和感はないんだ。しっくり来るって言うか....。
こいつと友人なんだって知ったとき、特に抵抗なく心がスッと受け入れた。
正解だとコージに告げるように彼の心は猫又をあっさり受け入れたのだ。
「命を落とす危険性があると言われれば心配するのは当たり前にゃ!」
「ははっ!それもそうだな」
“死”を確約された種族である人間は脆い。
それを昔からよく知る猫又が『命を落とす危険性がある』と聞かされて、心配しない訳がなかった。
泣き笑顔から、ムスッとした表情に早変わりした猫又にコージはケラケラ笑いながら『ごめんごめん』と繰り返す。
記憶がないとは思えないほどの順応ぶりに猫又は今更ながら目を見開いた。
コージが自然体過ぎて忘れそうににゃってたけど、コージは記憶がにゃいんだった。
猫又は奇跡と呼ぶに相応しい今の幸せをじっと噛み締める。
もう二度と会えないと思っていた人との再会に猫又の涙腺が緩んだ。
ダメにゃ....年を取ったせいか、涙腺がすっかり緩くなっちゃったにゃ。
『年は取りたくないものにゃ』と苦笑しながら、猫又は潤んだ瞳でコージを見上げる。
以前と変わらぬ無邪気な笑顔に猫又は頬を緩めた。
「あっ、そうだ!花ありがとな!あれ、もうほとんど枯れちゃって残りこれしかないんだけど....」
コージは背負っていたリュックから、無造作に花を取り出した。
彼の手には今、くしゃくしゃの花が握られている。
普通は『もう少し花に気を使えないのか』と叱りつけるところだが、コージにとことん甘い猫又は気にしない。これが烏天狗などの知人または赤の他人であれば猫又も激怒していただろうが、大切な友人が相手なら全く気にならなかった。
むしろ、『取っておいてくれたのか』と感激したくらいである。
冷静さを失っていたとは言え、投げ付けた花を取っておいてくれているとは思わなかった猫又はゆるゆると頬を緩めた。
これだけ頬を緩めても不細工に見えないのは偏に愛くるしい猫の容姿をしているからだろう。
これがもしも、人間があったなら相当酷い面になっていたに違いない。
「今更だけど、花ありがとな!それと....傷つけてごめん。何でか分からないんだけど、記憶が抜け落ちてて...俺とまた一から友達をやってくれると嬉しい!!」
そう言ってコージは手にした花を猫又に向かって差し出した。
オレンジ色のアルストロメリアの花は花びらをくしゃくしゃにしながらも、凛と咲き誇っている。
花としての儚さではなく、凛とした芯の強さが感じられた。
『また一からやり直したい』と述べる記憶のない友人に猫又は僅かに微笑む。
ここ一週間、その言葉だけを求めてきた。
─────やり直したい。
その一言だけで猫又にとっては十分。
猫又は差し出された花をコージの手ごと両手で包み込む。
ぽふっと愛らしい肉球が優しくコージの手と花に触れた。
「こちらこそにゃ!また一からやり直そうにゃ!」
キトンブルーの淡い瞳が涙を浮かべながら、穏やかに微笑んだ。
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