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第三章
無能貴族の末路
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『っ……!』と声にならない声を上げて悶える騎士や使用人達を見つめ、私は氷の矢を複数生成する。
それも、彼らの頭上に。回避不可能なよう、ほぼ隙間も作らず。
「じっとしていろ。少しでも動けば、これが貴様らの脳天を貫く」
「「「は、はい……」」」
すぐそこにある脅威と圧倒的実力差に恐れを成したのか、騎士や使用人達は抵抗をやめた。
一気に大人しくなる彼らの前で、私はまだ無傷のケイラー侯爵夫人や息子達に視線を移す。
「貴様らはどうしてやろうか」
スルリと自身の顎を撫で、私は『上から落とすか、踏みつけるか』と悩んだ。
────と、ここでケイラー侯爵夫人が息子達を連れて駆け出した。
どうやら、今になって逃亡を選択したらしい。
『あまりにも、判断が遅すぎるがな』と思いつつ、私はパチンッと指を鳴らして結界を作る。
────彼らの行く手を阻むようにして。
「「「!?」」」
突然見えない壁にぶつかったケイラー侯爵夫人と息子達は、顔を見合わせて狼狽えた。
かと思えば、横へ少し移動して結界のないところ……抜け道を探す。
が、当然そんなものある筈もなく意気消沈した。
「なんだ、もう終わりか?」
『足掻かなくていいのか?』と問い、私はクイクイッと人差し指を動かす。
すると、先程展開した結界が縮小を始めた。
それに伴い、ケイラー侯爵夫人や息子達はこちらへ近づいてくる。
いや、押し出されてくると言った方が適切か。
「い、イザベラ皇帝陛下……!何卒ご慈悲を!」
「我々は全面的に降伏しますので……!」
「反論・抵抗、一切致しません!」
両手を上げてブンブンと首を横に振り、ケイラー侯爵夫人と息子達は白旗を上げた。
若干涙目になりながらガクガクと震える彼らを前に、私は手を握り締める。
「なら、大人しく私に叩きのめされろ」
結界の縮小を停止し、私は目の前に居るケイラー侯爵夫人を殴りつけた。
と同時に、赤い液体が飛び散る。
恐らく、鼻血だろう。
「な、何で……」
「降伏するって、言ったのに……」
息子達は顔を押さえて蹲るケイラー侯爵夫人と私を交互に見やり、瞳を揺らした。
今にも腰を抜かしてしまいそうな彼らの前で、私は拳を握り直す。
「降伏は受け入れる。だが、丁重に扱う気はない」
暴力行為はこのまま続けることを宣言し、私はゆるりと口角を上げた。
「まあ、殺しはしないから安心しろ」
『命だけは保証してやる』と言い、私は再び拳を振り上げる。
その瞬間、息子達は脱兎の如く逃げ出した。
「こ、こんなの……話が違う!」
「普通、無抵抗の相手に乱暴はしないだろう!?」
『だから、降伏したのに!』と絶叫し、息子達は結界内を逃げ惑う。
半分ヤケになっている彼らの前で、私は腰に手を当てた。
「おい、反論や抵抗は一切しないんじゃなかったのか?」
降伏の際に言っていたセリフを話題に出し、私は息子達の方を向く。
「まさか、この私に嘘をついたのか?」
「「!」」
不穏な空気を感じ取ったのか、息子達は不意に足を止めた。
が、こちらへ戻ってくることはない。
それどころか、真後ろにある結界を軽く叩く始末。
多分、どうにかして壊せないか試しているのだろう。
『そんな攻撃じゃ、傷一つ付かないがな』と思いつつ、私は人差し指と中指を立てた。
「『返答なし』ということは、図星か。なら、それ相応の罰を与えねばならんな」
二本の指先をあちらに向け、私は先端から炎の玉を放つ。
それも、眼球くらい小さなものを。
「っ……!」
太ももに炎の玉を受けた息子の一人は、堪らず尻もちをついた。
若干焦げた患部を押さえながら蹲り、悶絶する。
「えっ?な、何が起こったんだ?」
速すぎて炎の玉が見えなかったのか、もう一人の息子は呆然としていた。
なので、彼にもしっかり炎の玉を打ち込む。
『仲間外れは可哀想だからな』と肩を竦め、私は手を下ろした。
「今はこれくらいで許してやろう」
『嘘をついた分は、チャラにしてやる』と述べ、私は苦しむ息子達を一瞥する。
あの状態ではもう何も出来ないだろう、と判断して。
『まあ、仮に何かされても問題なく対処出来るが』と思案する中、私はふと青髪の少年の方を見た。
「────ニコラス、これが無能貴族の末路だ」
青い瞳を真っ直ぐ見つめ、私はこの現実を突きつける。
僅かに表情を強ばらせるニコラスの前で、私は腕を組んだ。
「正直、貴様もこうなるんじゃないかと危惧している」
地面に転がるケイラー侯爵家の者達を見やり、私はスッと目を細める。
「だから、私は貴様に貴族社会から退くことを勧める。責任も義務もない立場となって、気楽に生きた方が貴様にとってもいいだろう」
『わざわざ、苦労の多い道へ進む必要はない』と説く私に対し、ニコラスは
「そ、れは────嫌です」
と、反発した。
少しばかり表情を引き締めるニコラスの前で、私は僅かに目を見開く。
これだけ悲惨な末路を見ても、まだ貴族となることを諦めていないのか?
『根性があるのか、何なのか』と悩み、私は顎に手を当てた。
と同時に、ニコラスが少し身を乗り出す。
「確かにイザベラ皇帝陛下の仰る通り、今の私では彼らの二の舞になるかもしれません。でも、次期当主となることを諦めたくないんです────家の伝統と、己の誇りを守るために」
青い瞳に確かな意思を宿し、ニコラスは自身の胸元を握り締めた。
「せめて、最後まで足掻かせてください」
『諦めるのは、それからでも遅くない』と主張するニコラスに、私はフッと笑みを漏らす。
いい表情をするようになったじゃないか。
それにちゃんと自分の信念を持っていて、好感が持てる。
どうやら、諦めるよう促すのは時期尚早だったみたいだな。
出発前よりずっと『変わりたい』という思いが強くなっているニコラスを前に、私は横髪を手で払った。
「分かった。貴様の活躍と成長に期待しよう」
『どのような結末を迎えるのか、楽しみだ』と言い、私はクルリと身を翻す。
ケイラー侯爵の逃げていった方向を眺めながら。
さて、セドリックの方はどうなっているか。
それも、彼らの頭上に。回避不可能なよう、ほぼ隙間も作らず。
「じっとしていろ。少しでも動けば、これが貴様らの脳天を貫く」
「「「は、はい……」」」
すぐそこにある脅威と圧倒的実力差に恐れを成したのか、騎士や使用人達は抵抗をやめた。
一気に大人しくなる彼らの前で、私はまだ無傷のケイラー侯爵夫人や息子達に視線を移す。
「貴様らはどうしてやろうか」
スルリと自身の顎を撫で、私は『上から落とすか、踏みつけるか』と悩んだ。
────と、ここでケイラー侯爵夫人が息子達を連れて駆け出した。
どうやら、今になって逃亡を選択したらしい。
『あまりにも、判断が遅すぎるがな』と思いつつ、私はパチンッと指を鳴らして結界を作る。
────彼らの行く手を阻むようにして。
「「「!?」」」
突然見えない壁にぶつかったケイラー侯爵夫人と息子達は、顔を見合わせて狼狽えた。
かと思えば、横へ少し移動して結界のないところ……抜け道を探す。
が、当然そんなものある筈もなく意気消沈した。
「なんだ、もう終わりか?」
『足掻かなくていいのか?』と問い、私はクイクイッと人差し指を動かす。
すると、先程展開した結界が縮小を始めた。
それに伴い、ケイラー侯爵夫人や息子達はこちらへ近づいてくる。
いや、押し出されてくると言った方が適切か。
「い、イザベラ皇帝陛下……!何卒ご慈悲を!」
「我々は全面的に降伏しますので……!」
「反論・抵抗、一切致しません!」
両手を上げてブンブンと首を横に振り、ケイラー侯爵夫人と息子達は白旗を上げた。
若干涙目になりながらガクガクと震える彼らを前に、私は手を握り締める。
「なら、大人しく私に叩きのめされろ」
結界の縮小を停止し、私は目の前に居るケイラー侯爵夫人を殴りつけた。
と同時に、赤い液体が飛び散る。
恐らく、鼻血だろう。
「な、何で……」
「降伏するって、言ったのに……」
息子達は顔を押さえて蹲るケイラー侯爵夫人と私を交互に見やり、瞳を揺らした。
今にも腰を抜かしてしまいそうな彼らの前で、私は拳を握り直す。
「降伏は受け入れる。だが、丁重に扱う気はない」
暴力行為はこのまま続けることを宣言し、私はゆるりと口角を上げた。
「まあ、殺しはしないから安心しろ」
『命だけは保証してやる』と言い、私は再び拳を振り上げる。
その瞬間、息子達は脱兎の如く逃げ出した。
「こ、こんなの……話が違う!」
「普通、無抵抗の相手に乱暴はしないだろう!?」
『だから、降伏したのに!』と絶叫し、息子達は結界内を逃げ惑う。
半分ヤケになっている彼らの前で、私は腰に手を当てた。
「おい、反論や抵抗は一切しないんじゃなかったのか?」
降伏の際に言っていたセリフを話題に出し、私は息子達の方を向く。
「まさか、この私に嘘をついたのか?」
「「!」」
不穏な空気を感じ取ったのか、息子達は不意に足を止めた。
が、こちらへ戻ってくることはない。
それどころか、真後ろにある結界を軽く叩く始末。
多分、どうにかして壊せないか試しているのだろう。
『そんな攻撃じゃ、傷一つ付かないがな』と思いつつ、私は人差し指と中指を立てた。
「『返答なし』ということは、図星か。なら、それ相応の罰を与えねばならんな」
二本の指先をあちらに向け、私は先端から炎の玉を放つ。
それも、眼球くらい小さなものを。
「っ……!」
太ももに炎の玉を受けた息子の一人は、堪らず尻もちをついた。
若干焦げた患部を押さえながら蹲り、悶絶する。
「えっ?な、何が起こったんだ?」
速すぎて炎の玉が見えなかったのか、もう一人の息子は呆然としていた。
なので、彼にもしっかり炎の玉を打ち込む。
『仲間外れは可哀想だからな』と肩を竦め、私は手を下ろした。
「今はこれくらいで許してやろう」
『嘘をついた分は、チャラにしてやる』と述べ、私は苦しむ息子達を一瞥する。
あの状態ではもう何も出来ないだろう、と判断して。
『まあ、仮に何かされても問題なく対処出来るが』と思案する中、私はふと青髪の少年の方を見た。
「────ニコラス、これが無能貴族の末路だ」
青い瞳を真っ直ぐ見つめ、私はこの現実を突きつける。
僅かに表情を強ばらせるニコラスの前で、私は腕を組んだ。
「正直、貴様もこうなるんじゃないかと危惧している」
地面に転がるケイラー侯爵家の者達を見やり、私はスッと目を細める。
「だから、私は貴様に貴族社会から退くことを勧める。責任も義務もない立場となって、気楽に生きた方が貴様にとってもいいだろう」
『わざわざ、苦労の多い道へ進む必要はない』と説く私に対し、ニコラスは
「そ、れは────嫌です」
と、反発した。
少しばかり表情を引き締めるニコラスの前で、私は僅かに目を見開く。
これだけ悲惨な末路を見ても、まだ貴族となることを諦めていないのか?
『根性があるのか、何なのか』と悩み、私は顎に手を当てた。
と同時に、ニコラスが少し身を乗り出す。
「確かにイザベラ皇帝陛下の仰る通り、今の私では彼らの二の舞になるかもしれません。でも、次期当主となることを諦めたくないんです────家の伝統と、己の誇りを守るために」
青い瞳に確かな意思を宿し、ニコラスは自身の胸元を握り締めた。
「せめて、最後まで足掻かせてください」
『諦めるのは、それからでも遅くない』と主張するニコラスに、私はフッと笑みを漏らす。
いい表情をするようになったじゃないか。
それにちゃんと自分の信念を持っていて、好感が持てる。
どうやら、諦めるよう促すのは時期尚早だったみたいだな。
出発前よりずっと『変わりたい』という思いが強くなっているニコラスを前に、私は横髪を手で払った。
「分かった。貴様の活躍と成長に期待しよう」
『どのような結末を迎えるのか、楽しみだ』と言い、私はクルリと身を翻す。
ケイラー侯爵の逃げていった方向を眺めながら。
さて、セドリックの方はどうなっているか。
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