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屍山血河〜王都防衛戦〜

決戦

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 操縦桿を握りしめ、身体に思いっきし力を入れる。

 その場に止まった瞬間、一瞬にしてこちらに向けられる4本の光の糸。


 ……いよいよもって確定的だ、どうやらヤツは、4本までしか一度には照射できないらしい。

 ……では、あの時あった『5本目』の光線は何なのだ……?

 ———いや、今はそんなこと考えてる場合じゃない。
 最大照射まで残り数瞬。慌てず、落ち着きながらスラスターを瞬間的に吹かす。


「———きてみろよ……!」

 4本もの光の線が、僕を確実に葬ろうと追尾してくる。
 ———すべて、すべて、機動力でかわしてみせるっ!

「やってみろ、僕を殺せるものなら———僕に当てられるものなら、当ててみろよぉぉぉぉぉおっ!!!!」

 Ξ標的を旋回しながらも、なおも着実に、ヤツの巨大な神力障壁に銃弾を命中させていく。
 もはや回避も、回避しながらの照準合わせもお手のものだ、今の僕は絶対に、誰にも負けやしない……っ!

「まだ、まだだ、まだ僕はこんなところじゃ死ねないんだよ……!!!!」

 他の場所でも、第0機動小隊のメンバーが放つ銃声の音が響き続ける。

 しかしながら本来そいつらに向けられるはずの4本の光線は今、その全てが確実にこちらに向いている。

 だからどうした、そんなものは僕には当たらない。もう失うわけにはいかないんだ。

 あの時、あの瞬間、あのたったの刹那。ショーゴのマーカーが消えた瞬間、そして光線の初期照射がこちらに向けられた数瞬。

 死を覚悟した僕の心にあった焦燥は、もはやこの時には存在していなかった。

「終われない……終われないんだ、まだ、まだ、絶対に……!!」

 弾が切れた途端、さも当然の如くマガジンを投げ捨て交換し、またまた使い倒す。

 残るマガジンは5つ。たったコレだけのもので、ヤツの神力障壁を突破する———無理かもしれない、足りないかもしれない、だけど諦めるわけにはいかないんだ。

「ここで終わったら…………アイツに、ショーゴに、そしてリコに…………合わせる顔がないんだ、ここで終わったら、絶対に怒られるんだ……だから、まだ…………まだ、絶対に———?!」



 まずい。
 しまった。
 方向転換を、ヤツの光線の軌道予測が完全に外れた。



 当たる。あと1秒後、確実に———。
















『コーラス7、君は勇敢だと思う。でも、勇敢と無謀は違う。………………僕の経験だ』

 機体が揺れた直後。自機のマーカーのすぐ横にあったマーカーは、コーラス1———セン隊長のものだった。

「っあ———」
『……この盾を。……君にはコレが必要だ』

 だとか言われて強引に渡された巨大な盾。

『この盾は神力及び魔力による攻撃を緩和する効果がある。……マトモにアレを食らっても、3秒くらいはもつだろう。

 …………その代わり等価交換……としよう、君の弾が入っているマガジンを3つ分けてほしい。……もう僕は、ヤツに対して使い果たしてしまったから』

 ……分けてくれ、とは言いつつも、半ば強引にサイドツー腰部から3つのマガジンを引きずり出される。


『———行くぞ、コーラス7。…………この僕に、着いてこいっ!!!!』
「え、は———了解っ!!!!」
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