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屍山血河〜王都防衛戦〜

嚮導共闘

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『おぉぉぉぉぉ…………っ!!!!』
「っああああっ!!!!」

 2機。
 まるで氷を滑り落ちるかのように、降下しながらもΞ標的を旋回しながら、確実に銃弾を命中させていく。

 飛び交う光線が一度、右肩を掠れたが、欠損、破損は認められないためそんなものは問題にはならない。

 高速で風を切り、銃弾の音と光が右往左往し舞い上がる。撃った後の閃光と煙はサイドツーのスピードに追いつけず置いていかれ、残ったのは2機の勇ましき姿のみ。

 残り少ない推進剤を必死に吹かし、もはやここで終わっても構わない覚悟で必死に避け続ける。



 補給などない、普通ならば推進剤が無くなれば死は免れないのに、そんな事など気にならないほど気が昂揚している。

 勝てる、と直感が頷く。
 勝ってみせる、と理性が云う。
 絶対に勝つのだ、と脳が指令を出す。

 今の僕は———僕たちは、無敵だ……!!


『———来たっ!』

 ……ああ、言われなくとも分かるさ。
 Ξ標的を覆っていた球状の神力障壁は、その外殻にヒビが入ることによって可視化される。
 しかしてそれは、希望の光も同義であった。




『「あそこを叩くっ!!!!」』



『着いてこい、ミラーマインドっ!!』
「言われなくとも行きますよ、セン隊長っ!!」

 もはや正確射撃など関係ない、そのヒビを目指し一直線。
 ヒビに直接銃口を突っ込んでやるぞ、なんて気概で、必死にライフルを撃ちまくる。

『長刀を出せ、合わせてブチ込むっ!』
「了———、」

 ライフルを背面部にしまい、勢いよく長刀を背面部ブレードマウントから引き抜き、すぐさま突の構えをとる。

「———解っ!!」

 2機横並び。
 猛スピードで突撃する機体は、もはや誰にも止められない。








 突き刺した2つの長刀よりヒビは広がり、完全に神力障壁は砕け散る。
 互いに割れ、粒子として散っていった神力は、まるで雪のように目に映った。



 勝利への道、勝機はたった今、完全に開かれた———!


『二手に別れるぞ、ヤツの4つある光線発射位置を叩く、おおよその目星はついているか?!』
「はい! 球体の穴がある場所———あそこに、この長刀を叩き込む!」


 別れるぞ、とは言いながらも既に別れていた。

 もはや残量なんて気にはならない推進剤で舞い上がり、ヤツの———球体の中心部の『穴』に狙いを定める。



 そこからは神力光線の初期照射が行われており、もう既にこちらが狙われていることは容易に分かった。

 ———ただ、だからここで諦める、なんて選択肢は、元より絶対に思いつきはしない。



「やってやる……やってやる、やってみせる……!!!! 僕の……この、僕の手で———!」

 スラスターを交互に左右に向けながら、一度スラスターの向きを変えるたびに噴射する。

 左右に機体が激しく揺れ動くが、そんなもので止まれはしない、気にしていたら絶対にヤツは倒せない……!

「うわあぁぁぁぁぁぁあっ!!!!」

 長刀をその金属でできた身体に突き立て、その発射口を完全に貫く。

「こちらコーラス7よりコーラス1! 発射口1基、破壊完了!」
『残すところは後2つ、君は右側から回り込んで、東部発射口の破壊に向かってくれっ!』

「了解!」
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